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召喚直後に同級生が戦い始めたので、《虫の知らせ》を信じて俺は城を出た  作者: きゅっぽん
第一章 俺は城を出て地味な冒険者になる
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第六話 死体は生きてるか? うるせぇ、殴れ!

 そいつはゆっくり起き上がり、こちらを向いた。

 顔の傷はどう考えても生きているはずのないものだ。それ以外にも体のあちこちに大きな傷がある。

 どう見てもゾンビですね。ありがとうございます。

 やっぱり、虫の知らせは当たってたじゃねぇか!

 藤堂といえば、いつの間にか小田切の後ろに回り込んでいた。

 「おい、藤堂。俺を盾にすんなよ」

 「キモイから無理。男子で何とかしてよ」

 小田切の抗議に、こういう時だけ女子を出す藤堂。

 その瞬間だった。

 ゾンビが突然、小田切に跳びかかった。

 さっきまでとは比べものにならない速さだ。

 「ひぃ~!」

 小田切が悲鳴を上げ、とっさに槍を横にしてゾンビの体を押し返す。

 だが、伸びたゾンビの手は小田切の肩に届きそうだ。

 小田切の後ろにいた藤堂が、慌ててしゃがみ込んでその手を避ける。

 「おい、三上。とにかくやるぞ」

 俺は三上に声をかけ、前へ出ようとする。

 「ちょっと待って。小田切、そのまま抑えといてよ」

 三上が片手をゾンビに向け、何かを念じるように目を細めた。

 「お前ら、早く助けろよ!」

 ゾンビに顔を撫でられ、小田切が青い顔で叫ぶ。

 気づけば、藤堂はずいぶん後ろに下がっている。


 しかし、しばらく経っても何も起きない。

 三上が小さく息を吐いた。

 「やっぱりダメか。高橋、普通に倒そう」

 「ざけんな、三上!」

 ゾンビのナデナデに耐えていた小田切は、完全にキレている。

 俺たちは慌てて戦闘に入った。

 背後から攻撃しようとしたが、小田切に当たりそうで無理だ。

 結局、ゾンビの足を払って転ばせ、三人で袋叩きにする。

 立ち上がれば、また足を払う。

 そんな作業を何度も繰り返した。

 やっと動かなくなったころには、普通の人間なら三回は死にそうなくらい殴った。

 「みんな~、お疲れさま~」

 逃げていた藤堂が戻ってきて、誤魔化すように精一杯かわいく笑って手を振る。

 だが三人とも汗だくで、返事をする余裕すらない。


 しばらくして、小田切が三上を蹴った。

 「おい三上。何でさっさと助けなかったんだよ」

 「いてっ。いや、僕のスキルを検証しようと思って」

 藤堂が首を傾げる。

 「三上のスキルってネット知識でしょ?」

 「ああ。こっちでもネット使えるのかと思ったら、通信方式とかプロトコルが分かるだけのやつ」

 小田切がうんうんと頷く。

 それを聞いた三上はあっさり言った。

 「うん、あれ嘘なんだ」

 「はぁ?」

 小田切が戸惑う。

 「何でウソなんかついたのよ」

 藤堂が片眉を上げた。

 「バレたらヤバそうだし、練兵場じゃ試せなかったからね」

 「で、本当は何なんだよ」

 三上の言い分には納得したが、俺はさらに聞いてみた。

 「死体操作」

 沈黙。


 「ほら、絶対ヤバいだろ?」

 三上は肩をすくめた。

 「まあ、そうだな。じゃあ、さっきのは」

 俺は同意した。

 「操れないか試したけど、ダメだったよ。どうも、生きてる死体は、死んでからじゃないと操れないらしい」

 そう言う三上に、小田切が眉間に皴を寄せる。

 「生きてる死体が死んでからって、何だよ。最初ッから死んでんだろうがよ」

 だが三上は涼しい顔で言う。

 「とにかく、動いているゾンビは、倒さないと操れないんだよ」

 その時だった。

 さっき倒したゾンビが、ガクガクと体を揺らしながら起き上がる。

 「きゃっ、また動いた!」

 藤堂が俺の背中に隠れる。

 「大丈夫。僕の能力」

 三上が手を上げる。

 ゾンビが腕を振り、足を振り始めた。

 まるでラジオ体操だ。

 俺と小田切は呆然と見つめる。

 藤堂は完全にドン引きしている。

 「ふふふ。これで戦力アップだ」

 三上が得意げに言う。

 「いや無理」

 藤堂が即答する。

 「何でさ!」

 激昂する三上に、俺は呆れて言う。

 「下水から連れて出るのも、宿に入れるのも無理だろ」

 三上は固まった。

 どうやら考えていなかったらしい。

 結局、説得してゾンビは置いていくことになった。

 ただし三上は転んでもただでは起きない。

 ゾンビのポケットを裏返させ、小銀貨三枚を回収した。


 「ねぇ、ナデ夫君、置いてきて良かったの? 疫病的な意味で」

 ギルドへと向かう途中、藤堂が聞いてきた。

 「誰だよ、ナデ夫君って! トラウマ、思い出させんなよ!」

 ゾンビに撫でまわされた小田切が叫ぶ。

 「う~ん、やっぱりさ。

 不衛生なのはあれ一つじゃないし、下手に関わって犯人にされちゃ敵わないからさ」

 「そっか~」

 それで話は終わり、俺たちは冒険者ギルドに入って掲示板の前に来た。

 全員で眺めるが、初心者の俺たちでもできそうで、ジャイアントラット討伐より効率の良さそうな依頼はない。

 俺たちの中には、無理して強い魔物に挑もうというヤツはいないので、まだ下水が続くのかとガッカリしていると、後ろから声がかかった。


 「なあ、君たち。手が空いてるなら、薬草採取を手伝ってくれないか?」

 そう言ったのは、先日の貴公子冒険者クロスだった。

 「あっ、クロスさん。ちぃーっす」

 真っ先に藤堂が反応する。クソ、イケメンめ。

 別に嫉妬しているわけではないが、俺は当然のことを聞いてみた。

 「薬草採取って、そんな手伝いがいるとは思えないんですが、

 何かそこの掲示板の依頼と違うんですか?」

 「ああ、実は王都の近くじゃないんだ」

 クロスによると、王都から徒歩で一週間くらいのところにメーベという街があるらしい。

 そこは彼の故郷、サントナール王国からの移民が多いという。

 しかし近年、魔族の侵攻の影響で薬草が不足しがちな上、あっても移民まで回らない。

 故郷の友人に頼まれ、メーベ近くで移民たちの分の薬草を採取しようとしているが、必要な量を集めるには人手が足りない。そこで手伝いを探しているという。

 卸値はギルドと同じ。

 そのうえ贅沢はできないが、移動中も含めた食事と、現地の寝床は用意してくれるらしい。

 生活費がかからずに金が貯まるのはおいしい。下水に飽きていた俺たちは、二つ返事で頷いた。

 俺たちは初めて、王都の外へ出ることになった。



 ジャブジャブと沼を進む四つの影。その先頭の大柄な男は黒い剣を握っていた。

 「黒っち~、膝下まで泥でマジ萎えるんだけどー」

 四人の中で唯一の少女は足元を見て不快げに言う。

 「だったら帰れ」

 先頭の男はこともなげに言った。

 「黒瀬さん、俺ら泥はいいんスけど、竜とか本当に大丈夫なんスか?」

 肩幅の広い刈り上げ頭の男がそう言うと、金歯が光った。

 「あっ、黒瀬さん。アイツじゃないっスか?」

 細身で目の細い長身の男が、前方の木の影を指さす。

 観光バスほどの巨体。そこには、緑の鱗の竜が首を曲げて休んでいた。

 黒瀬たちが近づくと、首を持ち上げて銅鑼を打つような声を上げた。

 「人間たちよ。ここは我の領域である。命が惜しければ、今すぐ立ち去れ」

 驚いた少女が、耳の下でツインテールを揺らす。

 「黒っち、しゃべったよ!?」

 しかし、黒瀬はそれを無視して竜にめがけて駆け出した。

 「はっ、やれるもんなら、やってみやがれ!」

 細目の男は、ヤレヤレと言った顔で竜に左手を向ける。彼の影が伸びて竜へと絡みついた。

 「黒瀬さん、一人で突っ込まないで下さいッスよ。影鎖縛(シャドーバインド)

 金歯の男は、黒瀬を追って竜へと迫る。

 「俺も行くッス。だらっしゃ~!」


 一時間近く続いた戦いで、黒瀬の胸には大きな傷が開いていた。

 黒い剣を支えに、やっと立っているありさまだった。

 少女がその傷に、そっと手を添える。

 「黒っち、ムリしすぎっしょ~。あーしも肝冷えたわ。命譲渡(ソウル・デボート)

 少女の手が赤く光ると、その光が黒瀬に流れ込み傷を癒す。

 「ミカ、それは使うなと言ったハズだ」

 「エヘッ。じゃあ、黒っちも無理しちゃダメっしょ」

 足元には、巨竜が倒れ伏している。

 しかしその様子を、岩の陰からうかがう者がいた。

 それは人の姿に似ていた。だが、体は鱗に覆われ、地面に垂れるほど長い尾が生えていた。

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