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召喚直後に同級生が戦い始めたので、《虫の知らせ》を信じて俺は城を出た  作者: きゅっぽん
第一章 俺は城を出て地味な冒険者になる
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第三話 神ギフトとゴミスキル

 公爵に連れられていく黒瀬君達を見送り、俺達はエドガー王子に再び注意を向けた。たぶん、俺達の処遇を決めるのが彼だからだ。

 「では、君たちのギフトを確かめよう。セドリック、彼らを練兵場に連れていってギフトを調べろ」

 王子が隣の青年にそう言った。濃紺の服を着た金髪で細身の青年だ。

 クラスメイト達も言いたいことは沢山あるだろうが、黙って互いを見回している。

 真鍋さんが目の前で殺されたのを見て、萎縮しているのだろう。

 俺にもここで声を出す勇気はない。だが、ここに勇者はいた。

 「エドガー王子殿下。僕たちはギフトのことも、この国のこともほとんど知りません。

 いきなりのことで戸惑う者も多く、まずは事情をお聞かせ願えないでしょうか?」

 「そのあたりはこの男に聞け」

 エドガー王子はそう言うと、兵士の半数以上を連れて帰っていった。エイリーズと呼ばれた女もそれで身を翻す。最後にはセドリックと数人の兵士だけが残った。


 セドリックと呼ばれた青年は、鉄の棒でも入っているかのようにピシリと立っていた。

 「私はセドリック・アシュトン。エドガー王子殿下の近侍官だ。

 ここはヴァルディア王国」

 何だか感情のこもらない口調だ。

 「ギフトは天空の女神ソラリア様の恩寵とされる力で、スキルとは隔絶している」

 淡々とした説明が続く。どうやらこの人、必要最低限しか話さないタイプらしい。

 それにしてもソラリア様。あのトンネルにいた虹色の人かな。

 「スキルは技能や素質で、多くの者が何か一つは持ち、自問すれば判明する」

 そこで、クラスメイトたちがざわめく。

 「伝承では、異世界の勇者がギフトで人類の敵を倒すと言われているが、信じる者は少ない」

 セドリックは一度だけ俺たちを見渡した。

 「練兵場へ着いたらスキルを申告し、実践してみせろ」

 そして彼は、背を向ける。

 「ではついて来い。モタモタするな」

 そう言ったっきり、彼は部屋を出ていってしまった。


 セドリックが出ていっても、みんなの足は重い。ここで声を出したのも、やっぱり天城君だった。

 「みんな、突然こんなことになって、混乱しているだろう。

 だけど、ここ、日本みたいに人権とかある場所じゃないと思う。

 だから、状況がつかめるまでは彼らの言う通りにした方がいいと思う」

 「そんなの無理だよ……」小さく泣き声が漏れた。

 これに最初に同意したのは御堂君だ。

 「そうだな。

 俺たちはたった三十人くらいで、あっちは一国だ。

 幸い、俺たちにはスキルとかギフトって力があるらしい。

 そう粗末な扱いはされないだろう。まずはそれを確認しよう」

 続いて白石さんが、グッと両手を握ってみんなを励ますように言った。

 「みんな、辛い気持ちは分かるけど……力を合わせて頑張ろうよ」

 やっぱり天城君たちだ。これでみんなも渋々動き出した。

 俺も、もちろんついて行く。


 石造りの通路を通り、階段を上がる。

 連れられていく間に、俺は自分の能力が何か自問してみた。

 すぐには分からない。

 だがしばらくすると、心の奥に浮かんできた。

 ――虫の知らせ。

 それが俺の能力。

 何かがあると何となく分かることがあるらしい。

 ……いや、曖昧過ぎるだろ。


 外の広場まで出ると、俺達のスキルだかギフトだかの確認が始まった。

 天城君たちは率先して能力を開示し、セドリックに協力姿勢を見せた。

 天城君の能力は、先ほど見せた聖剣召喚。御堂君は攻撃魔法、白石さんは治癒魔法が使えるらしい。

 うんうん、バランスのいい勇者パーティだね。

 だが、そんな使える能力ばかりでなく、大半の生徒は微妙な能力だったり、その場で発揮できない能力だった。

 そして、素直に従わない生徒もいる。


 「おい、次はお前だ。スキルの名前を言え」

 槍を持った兵士にそう言われたが、九条さんは口元を扇子で隠したまま、その言葉を無視する。

 「貴様、王子の命令に従わぬというなら痛い目を見るぞ」

 そう言って槍を振り上げる兵士に、飛び出す影があった。

 「麗華ちゃんをイジメるのは許さないよ!」

 それは我らがおさる少女、もとい桜庭さんだ。

 彼女は兵士の頭上まで跳び上がった。

 逆さの体勢のまま、コマのように回転する。

 学生服のスカートが、ひるがえった。

 そして、彼女は兵士の肩に乗るように両足を巻き付けると、叫ぶのだった。

 「ひっさ~つ! 首四の字!」

 「ぐえっ」

 兵士が首を抑えて倒れ込む。周囲の兵士たちが一斉に槍を構えた。

 セドリックは腕を組んだまま、それを黙って見ている。


 「貴様、抵抗するか!」

 三人の兵士が桜庭さんに槍を向けると、今度は九条さんがその間に入った。

 「お止めなさい」

 だが、兵士達は止まることなく槍を突き出した。

 「ぐっ、どういうことだ」

 「お、押し込めん」

 「なぜ、刺さらない」

 三本の槍の穂先は、九条さんから十センチほどのところで止まっている。

 「さすが麗華さま」

 「麗華さまに無礼でしょう!」

 彼女の取り巻きが騒ぐ。

 「おい、コイツ抵抗するぞ!」

 槍を押し込もうとしていた兵士が、周囲の兵士に声を掛ける。


 「ふむ。接近戦で気絶させるスキルと、防御スキル。いやギフトか。

 よし、次」

 それを見ていたセドリックは淡々と言う。

 「セドリック様、コイツら抵抗を」

 九条さんに槍をさせなかった兵士は抵抗するが。

 「さっさと次を調べろ」

 セドリックは一顧だにしない。

 「はっ」

 それを聞いてビクリとした兵士は、素直に従った。


 そして俺の番となる。

 「貴様のスキルは何だ」

 「えっと、虫の知らせ、です」

 俺は弱々しく言った。明らかにゴミスキルだ。辛い。

 どういうスキルか聞かれても、ふわっとした答えしか返せないし、ここですぐに見せられるものでもない。

 突然、左の二の腕に鋭い痛みが走った。

 「っ!?」

 何が起きたのか分からない。

 見ると、俺の腕に短剣が突き刺さっていた。

 その柄を握っているのは、すぐ後ろに立っていたセドリックだ。

 「な、何で」

 俺が腕を抑えてそう言うが、彼は既に興味を失ったように背を向ける。

 「探知系か。反応は不安定。」

 彼はそのまま行ってしまった。白石さんが慌てて駆け寄ってくる。

 「高橋君、大丈夫?」

 そう言うと、傷に手を当てる。何か仄かに光ると、温かいような感じがして痛みが引いていく。

 これが治癒魔法か。

 「もう、痛くない?」

 「あ、ああ。もう大丈夫だよ、白石さん」

 災難だったが、白石さんに腕を触ってもらえて少し嬉しい。

 「がんばろうね」

 そう言って、ポンと肩を叩くと戻っていった。か、可愛い。

 そんな感じで俺達の能力判定は終わった。



 王城を出た馬車は、ほどなくして公爵の屋敷へと到着した。

 今、公爵の執務に座る黒瀬は、たった一人。対して公爵の後ろと部屋の四隅には騎士が立っていた。

 「何で俺一人なんだよ」

 「彼らは君の手下のようなものだろう。ここはトップ同士で話そうじゃないか」

 「チッ、俺はお前の命令は聞かないぜ。俺達を元の場所に帰しやがれ」

 「王女が君達にしたことは遺憾だが、あいにくこの国に帰す方法を知る者はいないだろう。

 その場合、君らはこの国で生きていく必要があるが、どうするつもりかね。

 野盗になろうというなら、さすがに見過ごせないが」

 「何を言いてぇんだ」

 「儂が君を後見しよう。

 時々儂の頼みを聞いてくれれば、普段は自由にしてくれていい」

 「俺を飼うことはできないぜ」

 「頼みを聞くかどうかは任せるよ。君が困った時には、儂を頼ってもいい」

 それからしばし、公爵を睨む黒瀬。

 「……ふん、お前の部下になるわけじゃないからな」

 公爵は小さく笑った。

 「もちろんだとも」

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