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召喚直後に同級生が戦い始めたので、《虫の知らせ》を信じて俺は城を出た  作者: きゅっぽん
第一章 俺は城を出て地味な冒険者になる
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第十話 襲われたメーベの街

 外に出ると、通りはざわめいていた。

 「どうしよっか?」藤堂が聞く。

 「マテオさんもクロスもいないからな」小田切は首を捻った。

 「逃げた方がいい?」三上は及び腰だ。

 戦うか、逃げるか。

 「状況を見にいこう」俺が言うと、三人も頷いた。

 急いで武器や鎧を身に付け、荷物を背負って家を出る。

 警鐘が鳴り響いていた。

 襲われてるのは南か。

 逃げてくる人々と、武器を手に南へ向かう者たちが通りを行き交う。

 俺たちも南へと駆けた。


 五メートルはあるだろう丸太を組んだ街の外壁。

 その前には、すでに三十人ほどの男たちが集まっていた。

 鎧を着ているのは十人ほど。他は武器だけを手に駆けつけたらしい。

 大半が壁の前の足場に上がり、怒号とともに壁の外へ武器を振るっていた。

 外からも、何かがぶつかる音が連続し、ギーギーという鳴き声が響く。

 上で指揮を執っているのは、何故かクロスだった。

 「タカハシたちか! リザードマンだ、百以上いる!」

 彼は指示を飛ばしながら、こちらに短く言葉を投げる。

 「ここ以外も襲われてるかもしれない! 他を見てきてくれ!

 見つけたら知らせるだけでもいい!」

 俺たちは顔を見合わせた。

 「……分かった。やれるだけやる」

 俺が言うと、クロスは一言だけ返した。

 「頼む!」


 壁沿いを東へ向かった俺たち。足場の上では男たちが怒鳴り合い、外の様子を伝え合っていた。

 「あっちだ! 壁を越えようとしているぞ!」

 そんな声が飛ぶ。

 辿り着いた先には、足場がなかった。両側の足場から槍や剣が振るわれるが、届かない。下では二十人ほどが壁を見上げ、身構えていた。

 「どれくらいいるんです?」

 藤堂が問う。

 「二十はいる!」

 その直後、どよめきが走った。

 壁の上に、ぬっとトカゲの頭が現れる。片手で縁を掴み、こちらを見回しながらよじ登ってくる。もう一方の手には槍。

 ――来る。

 そいつは軽々と壁を越え、地面に降り立った。

 デカい。二メートルはある。

 間髪入れず、四、五人が突っ込む。だがリザードマンは槍を振り回し、近寄らせない。

 その隙に、他の男たちが梯子を二本、壁に掛けて駆け上がった。

 上から牽制が始まる。

 だが、その間にも二体目、三体目が降りてきた。

 それぞれが下にいた男たちに囲まれるが、簡単に倒されてはくれない。

 そして――

 四体目が、俺たちの前に降りた。

 壁に目をやると、梯子が増えている。これ以上は、すぐには越えられないはずだ。

 だが、目の前の奴は。

 「……やるしかねぇか」

 小田切が吐き出す。

 俺たちも、武器を構えた。


 先手必勝。俺は槍でリザードマンに突きかかった。

 だが、すぐさま突き返される。

 「うおっ?」

 穂先が喉元に迫り、慌てて飛び退いた。

 くそ、上背に加えて槍も長い。間合いが違う。

 「でりゃ!」

 小田切が続く。

 だが届かない。

 その前に、リザードマンの槍が腹を抉ろうと伸びる。

 「危ねぇ!」

 身を捻ってかわすが、横腹を掠めた。小田切は顔を歪めて距離を取る。

 意識が小田切に向いた隙を突いて、藤堂が横に回り込む。

 「……スティールだよ」

 藤堂の呟きとともに、槍がリザードマンの脇腹に当たる。

 「そんな!?」

 だが槍は鱗で止められ、その表面を滑る。

 そして反対側、三上が足元を狙って突く。

 カラン。 

 「痛っちぃ」

 三上の槍が尾で叩き落とされ、手から離れた。

 つ、強い。地力が違う。


 決め手を欠いたまま、俺たちは戦い続けていた。

 いつの間にか、小田切のレールが足元に敷かれている。

 だがリザードマンは、わざわざそれを踏みはしない。当たり前か。

 レールが消え、小田切の舌打ちが聞こえる。

 何か手はないか。思いつけ。

 ここに死体はないし、あっても街で三上の力を見せるのは、よくないだろう。

 あとは藤堂のスキルか。バスケのディフェンスのように相手の動きを阻害。

 そう言えば……。

 「なあ、藤堂。バスケでレーンディフェンスって何だっけ?」

 「突然何よ。

 敵をマークするんじゃなくて、コートのレーンを守ることだけど」

 レーン、通路か。

 俺は建物の間を見る。狭い通路で動きを制限できれば。

 「藤堂、建物の間に引き込もう。動きを制限するんだ。

 上手くいったら、小田切と三上は建物の窓から攻撃してくれ」

 「うえ、不法侵入かよ」

 「文句言うな! 苦労するのは私だよ」

 小田切の苦情を、藤堂が一蹴する。


 俺たちは、四人で囲んで建物の間に引き込む。

 外へ抜けようとするのを、藤堂が抜けさせない。

 路地で俺と藤堂が前後を塞ぐ。小田切と三上は建物の中へと回り込んだ。

 包囲して前後左右から攻撃だ。二人が来るまで凌ぐぞ。

 俺の突きは尾で逸らされ、鱗を滑る。藤堂への圧力が増す。

 その時、横の窓から槍が飛び出した。三上か。リザードマンが身を反らす。

 勝った――

 しかし、リザードマンは壁を蹴って駆け上がった。

 しまった。コイツ、外壁を駆け上がれるんだ。

 リザードマンは飛び降りざまに、藤堂に槍を振り下ろす。

 「きゃっ」

 盾で逸らすが、勢いに負け倒れる藤堂。

 俺と三上で突くが、再び頭上に駆け上がるリザードマン。

 小田切の奴、何してやがる。


 動きを制限されたのはこちらだ。上を取られ、窮地に追い込まれる俺たち。

 倒れた藤堂に向け、飛び降りようとするリザードマン。

 不意に敵の足元、二階の窓からレールが伸び、向かいの窓へ繋がる。

 リザードマンは、咄嗟にレールの上に乗ってしまう。

 次の瞬間、トロッコが飛び出した。

 直撃。

 「ひぇっ」

 落下に巻き込まれないように、俺たちは慌てて下がる。

 ドン、ガシャ。

 地面へ激突。

 さらに、まだ身を起こせていないリザードマンに、窓からデブが落ちてきた。

 ブシャ。

 体重の乗った槍が腹に突き刺さる。

 さらに小田切の尻も腹に突き刺さった。

 リザードマンの首がガクリと落ちる。

 「我が必殺の降竜…」

 「馬鹿、危ないじゃない!」

 小田切の見得の途中で、藤堂の怒声が飛んだ。


 壁際に戻ると、人の数が増えていた。怪我人が運ばれ、血の匂いが漂う。死者も出たようだ。

 金属音が響き、壁の内側の戦いもまだ続いている。

 足場の上では、壁を越えさせまいと攻撃が続き、怒号が絶えない。

 だが、その状況以上に男たちの顔は険しく、何人かはその場から駆け出していく。

 「何があったんです?」

 俺が声をかける。

 「……水路だ。何体か入り込まれたらしい」

 街中に入られたのか。



 そこはヴァルディア王国の中央部。高高度を飛ぶ人影があった。

 「キャリバンを殺せる人間がいるとはな」

 それは暗青色の衣をまとった長身の男で、長い刀を背負っていた。

 「どこにいるんだ? 人間の街の名なんか聞いても分からんし」

 すると彼の視界に大きな砦が見えた。

 「お、あそこで聞いてみよう」

 彼は真っ直ぐに砦の中、広場の真ん中に降りたった。そして懐の袋を振る。

 「出でよ、ボレアス、エウロス、ノトス」

 すると袋から青白い狼、黒灰色の猛禽、金色の蜥蜴が飛び出し、砦の中へと消えていく。

 やがて、砦の各所から悲鳴と怒号が聞こえだした。

 しばらくして、兵士たちが男を見つけて取り囲んだ。

 「魔族か。一人でこのバルクス要塞に乗り込んでくるとは愚かな。死ねーっ」

 だが、一瞬で二十人の兵士が切り裂かれた。二陣、三陣も同様だった。


 その知らせは、砦の司令官。グレゴール第二王子にも伝わる。

 「何? たった一人の魔族に、五十人以上やられた?」

 王子は少し考えてから言った。

 「……ヴァルドリック卿を呼べ」


 しばらくして、魔族の前に一人の騎士が現れる。

 「魔族よ、名を聞こうか」

 「俺は風魔将軍ゼファー。お前、この国で一番強い奴を知らないか?」

 「私が王国最強の一人、西部最強の騎士ヴァルドリックである」

 二人の戦いが始まる。剣と刀を打ち合う、真っ当な戦いだった。

 だが、十合目。

 「……馬鹿な。残像だと」

 騎士の首が飛んだ。周囲の兵士達から悲鳴が上がる。

 「こんなものか。おい、お前。もっと強い奴はどこにいる?」

 問われた兵士は、驚き戸惑う。

 「……お、王都?」

 「王都ってどっちだ?」

 兵士は圧に押されるように、王都を指さした。

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