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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第二部 第四章 マギカ・バディ部 始動!!
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入部

「すいません、日直で遅れちゃって……って、うわぁ! どうしたんですかこれは?」


 放課後、競技場に入った龍一が見たものは、バラバラになったゴーレムの残骸、空になった二十体以上の魔力用ゴーレムが、フィールドのあちこちに散乱していた。


 そして、仁王立ちの鳥居と金剛の足下では、怒っている顔が描かれたゴーレムに、背中をポカポカ叩かれながら、白鳥と目黒が土下座をしていた。


「お疲れさま龍一君。……ゴーレムちゃん! もう少し強く叩いてね!」

「どうしたもこうしたもない! こいつら、うちらが帰ったあと、ご覧の通り夜中まで乱痴気騒ぎをしやがって! もし龍一君がマスターロックしていたら、魔粒子も水も電気も止められて、龍一君がここに来るまで丸一日閉じ込められていたんだぞ!」


「でも二人ともよく自首してきましたね。その点だけは見直しますが……」

 龍一の慈悲の心を打ち砕くように、金剛が顛末を話した。


「念のため、監視《魔カメラ》で録画しておいたんだよ。そうしたら二人が写っていたの。それで放送部の子に頼んでね、あたしが【言霊】で全校中に放送して、二人をここに呼び出したんだ。同姓同名の子がこの学校にいなくてよかったよ」


「ああ、先生と話しているときに聞こえてきた放送って、これだったんですか……」 

 二人を見る龍一の眼が軽蔑へと変わる。

 龍一は再び辺りを見渡しながら鳥居に尋ねた。


「……壊れたゴーレムはどうしましょう?」

「その点は心配ない。元々ダウン並のダメージを与えるとバラバラになる仕組みだ。《神の眼》に命令すればすぐ組立ててくれる。……で、問題はこいつらの処遇だが……」


「羽斗君、目黒君……部長である龍一君に何か言うことがあったんじゃないの?」

 金剛の問いかけを合図に、二体のゴーレムの足が二人の頭を踏みつける。


「りゅ、龍一、いや龍一様。この目黒、改めて龍一様の偉大さを肌と拳で感じました。つ、つきましては、我々をマギカ・バディ部へ入部させていただけませんでしょうか?」


「この白鳥、入部の暁には、龍一様への絶対なる忠誠と、この体と命、あなた様に捧げる所存でございます」


「龍一君……どうするの?」

「ん~。いいんじゃないんですか? どのみち三人じゃ試合も出来ないし。最低五人いれば練習試合とかもできるんですよね?」


 金剛の問いに、龍一は二人に反省の色があることを感じ、寛大なる処置を与えた。

「「おお~!龍一様のご温情に感謝の言葉もございません! ありがたき幸せ!」」


「そ・の・か・わ・り! まずは、ここを片付けること! あと、先輩達の命や、ましてや体なんていりません! って、抱きつかないで下さい!」


(さぁて……こいつらのしおらしさも、果たして何分持つのかな?)

 鳥居は苦笑しながら、龍一の足にしがみつき、ほおずりをしている二人を眺めていた。


「ごら~! 龍一! 早く俺に魔力ゴーレムをよこしやがれ!」

「困りますね龍一君。私は龍一君のサプライヤーの練習の為に、ゴーレムの魔力を空にしてあげているんですよ。さぁ! 早くこの白鳥に、もっと! 魔力ゴーレムを!」


「は、はひぃ……」

 喉と魔力を枯らしながら、龍一は魔力ゴーレムに魔力を注ぎ込むが

(でもみんな楽しそう。ひい爺も、みんなのこんな笑顔を見ながら観戦していたのかな?)


 マジュツ部やおっかない部で、龍一に向けられた、助けを求める《眼》からは想像できない輝きを、龍一は感じていた。


『あなたたち! そこでなにをしているの!』


 馬鹿騒ぎを沈める稲津の声が競技場に響き渡る。観客席にはいつの間にか稲津と生徒会長の甲斐がフィールドを見下ろしていた。


「なにって、ごらんの通り、マギカ・バディ部の活動さ。申請書は提出したはずだが?」

 鳥居は不敵な笑みを浮かべながら、観客席に近づき、睨み付ける稲津を見上げた。


「まだ生徒会によって認可されておりません!」

 負けじと稲津も声を荒げる。稲津の荒々しさを受け流すように、鳥居は淡々と答える。


「例え認可されなくとも、我々は”お遊び”でマギカ・バディをやると伝えたが」

「だからといって、この競技場は学校の設備です。使用には申請書が必要です!」


「申請書か……で、その申請書とやらは、最終的にはどこに行くんだね?」

 鳥居は唇の端をつり上げ、稲津に向かって意地悪そうに問いをかける。

「どこって……《管理者》である生徒会会長の下へ行きます!」


「その次は……?」

「そ、その次は……って?」

「既に我々は、《主人(マスター)》である龍一君の許可を得ているんだが? でなければこうして競技場を使えるわけないだろう?」

 鳥居は二人に紹介するように、龍一に向かって右腕を広げた。


「なんですって!」

 それまで沈黙していた甲斐が驚きの声を上げる。


「証拠を見せてやろう。……龍一君、《神の眼》をここに呼び出してくれたまえ」

「あ、はい。”かっちんだま(ビー玉)”ちゃん! こ~い、こいこい!」

 なにもない空中に向かって、龍一が池の鯉を呼ぶように”パンパン”と手を叩くと……


『ご主人様、いかがなさりましたか?』

 女性の声でいきなり現れた《神の眼》が、龍一の側へふわふわと近づいてきた。


「「ご、ご主人さまぁ~?」」

 稲津と甲斐が眼を見開き、蕾のような唇をいっぱいまで咲かせ、ほぼ同時に叫んだ。


「ん~特に用は……。あ、ここ曇っているね。拭いてあげるよ」

『あ、あん! そ、そこは……ダメェ~……龍一様、ご無体なぁ~』


 龍一がタオルで《神の眼》の表面を拭くと、聞いたことのある女性の声で、《神の眼》が震えながらもだえ始めた。


「ええっ! これって、ひょっとして会長の声!?」

「え? うそ! あたしこんな声しているの!?」

 稲津の声に甲斐が驚く。


「どうだ! 《神の眼》の設定をいじれる権限は、主人しか持っていまい?」

 勝ち誇った鳥居に続いて、説得するように目黒と白鳥が後に続いた。


「真理、もう観念しろって。どのみち、主人である龍一にはかなわねぇんだからな」

「会長、無駄なあがきはお肌の大敵ですよ。それに、我々は遅かれ早かれ、こうなる運命でしたから……」

 無言の稲津と甲斐に、目黒と白鳥が降伏勧告をする。

 

 さらに龍一が続く。

「会長、白鳥先輩や鳥居先輩から聞きました。マギカ・バディ部を再建しようとして、僕を勧誘したんですね。ひい爺の後継者である僕を《神の眼》の主人にして……」


 甲斐は豊満な胸の前で腕を軽く組み、伏し目がちで龍一に答えた。

「……ええ、その通りよ龍一君、貴方を利用しようと考えていたなんていやらしい女ね。その《神の眼》の声みたいだわ。軽蔑してくれてもかまわない……」


「え? 何を言っているんですか? 会長や稲津先輩も、一緒にマギカ・バディをやりましょうよ」

「「え?」」

 あっけらかんとした龍一の答えが、かえって甲斐と稲津を動揺させた。


「昔、ひい爺が僕に話してくれました。大きくなったら”おもちゃ”をあげると。ひょっとしたら、この競技場がそれなのかな? って思います。そしてこうも言いました」


『そのおもちゃで”みんなで遊べ”と!』

『!』『!』『!』『!』『!』『!』


 龍一以外の、六人の顔色が変わる。まるで龍造から”同じことを言われた”かのように……。

 そして観念した甲斐と稲津はフィールドへ降りてきて、龍一の前へ立つ。


「わかったわ龍一君、私と稲津さん。マギカ・バディ部への入部を申請します」

「はい! よろしくお願いします!」

 甲斐の言葉に龍一は元気な笑顔で返事を返すが……。


「ちょっと待ってくれ! 龍一君は会長の入部を認めたが、私たちはそうはいかない」

「同感ですね。会長には我々に対する”けじめ”をつけさせてもらわないと……」


「鳥居先輩、白鳥先輩。一体何を? それにけじめって?」

 龍一の問いに金剛が静かに、ゆっくりと龍一に向かって呟いた。


「会長が大凶魔學院戦で、ギブアップをした理由……」

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