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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第二部 第四章 マギカ・バディ部 始動!!
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真相 前編

 競技場のミーティング室にみんなが集まり、”回”の字に配置されたオフィス机に座る。

 稲津が冷蔵庫からペットボトルのお茶を出して紙コップに入れようとするが、


「おい真理! そのお茶、このスポーツドリンク、あ、コーラまで! 賞味期限が切れまくりじゃねぇか! てか冷蔵庫の中のモノは大丈夫なのか?」

「あら、じゃあ、武雄が責任持って全部飲んでね。元々あんたが買ってきたんだから」


『あの二人って……その……仲がいいんですね?』

 龍一が慎重に言葉を選びながら、鳥居に耳打ちする。


『いわゆる幼なじみ……切っても切れない腐れ縁というやつだな』

『割れ鍋にぶた……ともいうよ』

「鳥居さん! 金剛さん! 聞こえていますよ!」

 結局、浄水器の水を出しっぱなしにして、頃合いを見て紙コップに注いだ。


「まず最初に皆さんに謝罪致します。今まで、私の独断で行動してごめんなさい……」

 甲斐は立ち上がり、ゆっくりと頭を下げる。

 そして再び腰を下ろすと、その顔を自分の正面に座る龍一に向けた。


「龍一君に説明しながら事の顛末を話します。まず去年、私たちのチームがマギカ・バディの夏の地区予選に出場を決めたとき、我が校に脅迫のメールが届いたの」

「脅迫!」 

 先輩達の問題ゆえ、龍一は口を挟まないと決めたのだが、つい声が出てしまった。


「別に珍しくもないわ。ほかの競技だって、強豪校のスキャンダルがマスコミに流れることがあるのよ。それを龍造先生に相談したら、


『これは新参者に対する”礼儀を教えてやる”みたいなモノだ! ぐわぁっはっは!』


と、おっしゃってたわ。現に、台貴知高校との一戦では何も起きなかったの」

 甲斐が発した龍造の声色(こわいろ)に、皆の顔が思わず緩む。


「あれ? 今思えば、大凶魔學院との試合の時期って、ひい爺が倒れた時……?」

「そうよ龍一君、そして大凶魔學院との試合の前に、校長先生から私の携帯に連絡が来たの。魔回線では盗聴される恐れがあるから一般回線で。それでも念には念を入れて、いわば暗号で


『学校内に建てられた”龍の像”が倒れてしまった。縁起が悪いけどがんばってくれ』


とね。でもうちの学校にはね、龍の像なんて最初から建ってないのよ」


「龍の像……りゅうぞう……ひい爺!」

「ええ。前日、私たちにげきを飛ばしてくれたのに、いきなり偉大な魔法師の龍造先生が倒れるなんてよほどのこと。電話からでも校長先生の狼狽ぶりが眼に浮かぶようだったわ」


「確かに、ひい爺が倒れたのは大事(おおごと)かも知れませんが、せっかくの試合を、しかも途中で棄権するほどのことでは……。いや、身内としてはそこまで心配して下さったのはありがたいですが……」

 ミーティングルームはいつしか甲斐と龍一の会話のみが場を支配していた。


「言い訳かも知れないけど、まさに途中棄権するほどのこと……。いや、それは私の勝手な独断ね。でも龍一君にも知って欲しいわ。私たちがなぜ貴方を龍造先生の《後継者》としたかったのかを……」

「はい……」

 なにか重大なことだと龍一は判断し、思わず姿勢を正し、唾を飲み込んだ。


「龍一君は《神の眼》をはじめて見たとき、どう思った?」

「え? いや、あんなモノがこの世界にあるなんて……空に浮かんでいますし……でも魔術が存在するなら、あってもおかしくないかな……と」

 突然の甲斐からの問いかけに、天井を見ながら龍一は返答した。


「そう、まさしく《神の眼》と魔術は密接に関係しているわ。いや一心同体といってもいいわね。人は太古の昔、《神の眼》から魔術を教わったとする説もあるぐらいよ」

「そうなんですか。まだ全容は明らかになっていないと聞きましたが、マギカ・バディの審判以外の力があるんですか?」


『むしろ、マギカ・バディそのものがね、古代より魔導師、魔導使い、そして上級の魔法師達が《神の眼》を奪い合う為に考案された競技といわれているわ。当然、勝った方が《神の眼》の主人になれるわね』

「ええっ! ……そ、それで、勝った人たちはその《神の眼》をどうしたんですか?」


「魔術、魔法、そして魔導はその一族にすら秘匿(ひとく)にするから、記録としてはあまり残っていないわ。たとえその力がわかっても、魔法師以上じゃないと、《神の眼》から力は引き出せないといわれているの」


「ひょっとして戦争や、世界征服なんてことを……」

「どうかしら……。以前に龍造先生から聞いた話では


『どえりゃあ手軽に”どえりゃあ悪魔(モノ)”を呼び出せる触媒(しょくばい)としてうってつけだぎゃ!』


とおっしゃってたけど、まさか龍造先生ご自身、実際に悪魔を呼び出したのかもね?」


 再び発せられた龍造の声色に、甲斐や他の人間が苦笑する中、白鳥だけが一瞬、

”人間ではない”

笑みを発っする。


 その瞬間だけ龍一は、白鳥が座る一角だけ、何かいいようのない違和感を感じていた。


「ひょっとして会長は、ひい爺が倒れたから、《神の眼》を誰かに奪われると思って、ギブアップを?」

「そうよ。本当はみんなに訳を話して、試合放棄すればよかったと今でも思っているわ。でも、みんなの気勢を見ると出来なかった。そして、みんなの力をキャプテンの私があなどっていたわ。大凶魔の一年、前年度の全国中学覇者相手に、あそこまで肉薄するなんて……」


「……そういえば、この学校って皆さん以外に魔術とか術が使える人はいないんですか? 例えば先生とかに護ってもらえれば……」

「この学校の先生は、”魔”のことは理解していらっしゃるけど、ほとんどが一般人なのよ。”魔”の関係者は校長先生と教頭先生。あとは【治癒】をつかえる保健医さんぐらいね。時々、龍造先生の“お知り合い”の方が巡回してくれるけど……」


「この学校の生徒は、ほとんど魔因子を持っていると白鳥先輩から聞きましたが……ほかの先輩方とかは?」

 その言葉に一瞬、甲斐が沈黙する。


 鳥居が何かを察したように甲斐に話しかけた。

「会長、言いにくいなら私が代わりに……」

「ありがとう鳥居さん。でも大丈夫です」

 甲斐は姿勢を正し、改めて龍一に向き直った。


「龍一君、実は今から話すことが私がギブアップした最大、いえ、全ての理由……。”魔”の世界は、マギカ・バディの試合のような、スポーツの一面だけでないことを、ぜひとも知って欲しいの。これは、マギカ・バディを行う競技者全員が理解いると言っても過言ではないわ」


「は、はい!」

 真剣な甲斐の表情に、龍一も姿勢を正し、真剣なまなざしで甲斐の顔を見据える。

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