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龍造との出会い。~目黒&稲津~ 前編

 ――二年前の初夏。中学校から下校途中の目黒と稲津。


「……そう言えば武雄。その……高校はどこ行くの?」

「高校……って、そもそも、馬鹿な俺が入れる高校なんてあるわけないだろう」

「何言っているのよ。い、今からでも遅くないから勉強すれば……(一緒の高校に……)」


「ま~た勉強の話かよ……。俺様は魔術系中学すら全滅したんだぜ」

「アレは武雄が実技でめちゃくちゃやったから……ってあの人!」

「ん……? ちょ! あれってまさか!」


 黒塗りのリムジンが、ゲームセンターの前に止まる。

 二人を釘付けにしたのは、リムジンから降りてくる白炎とも言える頭髪と口髭、紋付き袴を召した老人だった。


『『”魔”の《龍王》、庵堂……龍造!』』


 二人はぴったり同じ言葉、同じの声を、その口から漏らした。


(庵堂龍造って”魔”の世界じゃ超大物だろ! それがなんでこんなゲーセンに……)

(武雄、静かに! 滅多なことをいうとあたし達、”消され”ちゃうわよ!)


 ”ドゴォォォン!”  


 突然、爆弾が爆発したような轟音がゲームセンター内に響き、あまりの音に店内のざわめきは止み、客はゲームそっちのけで轟音の方へと振り向いた。


 目黒と稲津、そして店内の客が見たモノは、パンチングマシーンの前でグローブをつけたまま、小首をかしげる龍造の姿と、白装束を纏った、付き人の少女だった。


「ふ~む。758㎏か……。”ハゲ”と”角刈り”がこれで遊んでおると聞いてやってみたんじゃが、壊さないように”つ”のも意外と難しいがや」

 重く響く声が店の隅々まで響く。


”そんなばかな!”と店内の客がゲーム機へ、龍造の後ろへとまるで吸い寄せられるように近づいていき、目黒達も野次馬の後ろへと立つ。

 龍造は袂から百円玉を一枚取り出し、ゲーム機に入れる。


「おう、お主達! 危ないから、もちっと後ろへ下がっておれ」

 龍造はグローブをつけた右腕を振り回すと、左足をまるで四股を踏むように上へと掲げる。その姿は格闘技を少しかじった目黒から見てもでたらめな格好だった。


 そして目黒と稲津は、ゲーム機を壊さない為か、グローブとゲーム機に蒼い魔力が付与されているのを感じる。


「よっとりゃぁ~……せい!」 

 ”ズドゴォォォン!”

 左足を下ろした瞬間に放たれたグローブは、先ほどよりも二割以上大きい轟音を店内に響かせた。


 画面に映し出された数字に野次馬達からどよめきが起こる。

「「「おおおお~!」」」

「ぐぅわっはっはっは! 998㎏だがね~! ……まぁこんなもんだぎゃ」

 龍造は嬉々として、ハイスコアのチャンピオンのところに”Ryuzou Ando"と入力する。


 そして後ろをふりむいて野次馬達に話しかける。

「どうじゃ! ワシの記録を抜く者は誰かいないのか。抜いたらワシが何でも言うことを聞いてやるがね! あ、ちなみに、お金以外にしてちょ」


 野次馬たちは口々に冗談っぽく”お前やってみろ”と囁き合う。

 店員は龍造の風体を見て、関わってはいけないと本能が悟ったのか、目の前の出来事に見て見ぬ振りを決めた。


「……では私が」

 思わぬ志願者は稲津だった。

「馬鹿! 真理やめろ! これ以上”ぶっ壊したら”俺たち破産だぞ!」

 慌てて目黒が止めるも


「大丈夫よ武雄。どれだけ”放てば”いいか、もう憶えたから」

「ほう、お嬢ちゃん。機械を壊すほど、ワシより”強い”のか?」

 立候補した稲津に、龍造が顎髭をなでながら、おもしろそうに口元を緩めた。


「……どうでしょうか? あと、”邪魔な”魔力は【解術】して下さい。あとグローブは私には必要ありませんから……」

 あきらめた目黒が、龍造の側にいるお付きの少女に声をかけた。


「えっと~、そこの白い着物を着たお姉さん……のロボット? あんまり真理に近づくと”しょ~と”しちまうぜ」

「ぬ!」


 ゲーム機に付与された魔力を感じた稲津。

 何より、お付きの少女が”人間ではない”と見切った目黒に、龍造の口元が若干険しくなる。

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