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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第一部 第四章 ハーフタイム、そして後半戦
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四倒(しとう)

(かわされた! いや、甲斐の入れ知恵ね)

 デッドエンドラインの前で腕を組んで立つ夜長は、目黒がすべてのフェイントと攻撃をかわしたことに一瞬驚きもしたが、すぐさまその原因が甲斐によるものだと理解した。


 ラリアットがあごをかすった為、口の中に血の味を感じている目黒は、口ではにやけていたが

(あっぶねぇ~! 会長から攻撃パターンを聞いていたけどよ~もう二度とやりたくないぜ)

 遊園地の絶叫マシーンよりもスリリングな”アトラクション”を体感した目黒の体内には、危険を知らせるアドレナリンが体中を駆け巡っていた。


 男子学生A、Bが目黒を見直すように目を見開いた。

「すっげぇ、全部かわしやがったぜあの脳筋。でも大凶魔はなんで攻撃しないんだ? せっかく取り囲んだのによ。どうせなら四人がかりでタックルとか上から押しつぶせばいいのに?」

「いくら強力な魔体やネイティブスキルを持っていても、いろいろな強化の術をかけたストライカーに肉弾戦を挑むのは危険を伴うぜ。たとえ相手が脳筋でもな」


 相手に気取られないように呼吸を整えながら、目黒は力を蓄える。生身相手に四対一は初めてのことだった。

 相手の気配を察知しようと、すべての感覚をレーダーのように尖らせる。


(さぁ、どうする。大凶魔さんよぉ……来た!)

 後ろから氷耶麻のローキックが目黒の右アキレス腱を襲い、それとほぼ同時に前から火室の炎をまとった貫手(ぬきて)が伸びてきた!

 覚醒した目黒は本能と言う名の頭脳が瞬時に状況を判断し、神経パルスを通じて肉体隅々まで命令を与える。その思考を言語化すると……。


氷耶麻(コイツ)の蹴りは弱い! なら脚を踏ん張っても耐えられる! 問題は目の前の貫手だ!)

”ガシッ!”

 右アキレス腱に振動を感じるが、あえて無視し、火室の貫手を払いのける……が、火室の唇は歪み、むしろ獲物を罠に追い込んだ顔をしていた。

(な、なにっ!)

 アキレス腱から感じる刺すような痛覚。さらに目黒の足首を包み込むモノ。

 それは氷。


(ネイティブスキル! そうか、氷耶麻(コイツ)は元々水の魔術の家系!)

 女である氷耶麻の蹴りでは【防御】を付与したストライカーの肉体に何らダメージを与えられないと目黒は思っていたが、とんだ誤算だった。

 それは目黒の足首のみならず、根を張るように競技場の地面まで達しようとしていた


 わずかに心が乱れた目黒の隙を見逃さず、炎をまとった火室の二本の指が目黒の眼球をえぐり取ろうと向かってくる。

 並のストライカーなら直撃してもおかしくないタイミングだがそこは覚醒した目黒。すぐさま顔を横にずらして避けるが、それすらもフェイントのように火室はすぐさま体を跳ばし目黒から離れる。


 それを合図に美月と倉が攻撃を掛けようと体を動かし、目黒は迎撃しようと両者に気を向けるが、それすらもフェイントであった。

(くっ! しまった!)

 火室、そして美月と倉に気を取られすぎて、氷は地面まで達し、目黒の右足首は完全に氷漬けにされてしまう。

 目黒は軽く右足に力を込めるがびくともせず、その顔がわずかに歪む。


 それを合図に四方から攻撃を掛ける大凶魔のメンバー達。

 美月の、風を刃をまとった手刀や貫手を打ち

 倉は、強靱な肉体から固い拳や掌底を放つ。

 火室は力押しではかなわないのか、炎を纏った指で執拗(しつよう)に目つぶしを浴びせ。

 氷耶麻は左足も凍り漬けにしようとローキックを放つ。

(く、くっそぉ!)

 右足を固定された目黒は相手の攻撃をなんとか防御し反撃しようとするが、氷漬けにされた右足のせいで踏み込めず、回し蹴りや後ろ蹴りも容易にかわされ唇を噛みしめていた。


『うおおおぉぉぉ!』

 四方からヒットアンドウェイを浴びせられ、なぶり殺しにされる目黒を見て、大凶魔派の観客達は血が沸騰するほどの興奮を噴き上がらせていた。


 そんな中で夜長は一人、龍堂学園のメンバーの顔色をうかがっていた。

(特に変化無し。想定内でも想定外でもない。どうやらあの脳筋ストライカーを買いかぶりすぎたみたいね。このまま時間を稼いでくれれば術が解けるし、”あの作戦”も使わずじまいかしら……えっ!?)

 夜長は気がついた。目黒を攻撃するメンバーの顔に焦りの色がにじみ出てきたことに。


「お、おい、あの脳筋ストライカー……」

「ああ、攻撃すべてを……かわしてやがる」

 男子学生A、Bのみならず、先ほどまで興奮のるつぼと化していた大凶魔派の観客席も、まるで水をまかれたように歓声がくすぶっていた。


 大凶魔のメンバーもフェイントを加え攻撃するが、それすら完全に見切られ、本命の攻撃はかわされたり防御されている。

 大凶魔メンバーの”力の流れ”を読んだ目黒の唇は、だんだんとやわらかくなる。


(へっへっ! チームワークがよすぎるのも考えモンだな。互いの攻撃で同士討ちにならないよう、計ったようなタイミングで攻撃してやがるぜ!)

 そして今度は唇ではなく奥歯をかみしめ、両手に力を込める。

(ゲームと一緒よ! 敵の攻撃パターンがわかっちまえばこっちのモンだ!)


「おりゃぁあ!」

 火室が伸ばした炎の指先を、目黒はひたいで受け止め

「ぐわぁ!」

「だぁりゃあ!」

 わずかに後ろへのけぞった火室の胸元へ、両手のひらを撃ち込む。

「ぐぉ!」

 一瞬、呼吸が止まった火室の体はわずかに後ろへ飛び、背中から落ちていった。


”!”

 火室の叫びにわずかにローキックを放つタイミングが遅れる氷耶麻。その刹那の時に目黒はすべての力を右足に込めた。

「うらあぁ!」

”バキィイイン!”

”!!!”

 目黒の右足首を包む氷が砕け、眼を見開く三人。


 自由になった目黒に向かって、すぐさま氷耶麻が腕を広げて跳ぶ。

(ごめん火室。そして、カミナリ女)

 抱きついて目黒の体そのものを凍らせようとしたが、

「ほい!」

「えっ!? きゃっ!!」

 二人に謝る時一瞬、眼をつむったせいで、目黒の蹴手繰(けたぐ)りに全く気づかず、氷耶麻の体は大の字になって競技場に倒れていった。


”!””!”

 そんな倒れる氷耶麻の体すら利用して、影から攻撃を放つ倉。

 同時に美月も攻撃を放つが四肢が自由になったストライカー、ましてや覚醒した目黒に対して、いくら強靱な魔体やネイティブスキルがあろうともはや敵ではなかった。


「お返しだぜ!」

 貫手を放つ美月の手首を手に取ると肘の裏を挟み込んで、一本背負いをお見舞いする。

”ズンッ!”

”!”

 背中から叩きつけられた美月は、声の代わりに舌を吐き出した。


「ぬおおぉぉ!」

 一瞬がら空きになった目黒の背中に向けて、倉がたくましい両腕を広げ突進する。

 死なばもろともとばかり、勢いのままタックルして地面に叩きつけるかのように。


「おせぇ!」

 意図に気がついた目黒は、倉のみずおちに向かって真後ろに脚を伸ばす。

”ズン!”

 しかし倉の顔も、罠にはまった目黒をあざ笑うかのように唇が歪む。

「あめぇよ」

 倉の両腕に力の流れを感じた目黒は、すぐさま脚を引き抜いた。

 次の瞬間、倉の両腕が先ほどまで目黒の右脚が存在していた空間を抱きしめていた。


”!”

”ピシッ!”

 今度は倉のあご先に向かって、真横から目黒の蹴りが横切る。

”……!”

 肺をしぼったような空気の流れが倉の口から漏れ、崩れるように膝が、体が地面に倒れていく。


「うおおおぉぉぉ!」

 しかし倉の倒れる様を見届けず、目黒はすぐさま咆吼を放ちながら、体を夜長へ向けて跳ばした。

「やりやがったぜ、あの脳筋ストライカー」

「ああ、四人全員倒しちまった!」

 観客席すべてが驚愕の表情を浮かべる。

 地区予選二回戦で大凶魔のキャプテンが、レイダーではなくアンティ側として、無名のストライカーに倒されて、むざむざポイントを献上してしまうのか!?


『目黒武雄! 大凶魔の大将の首ぃ! もらったあぁぁ!!』

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