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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第一部 第四章 ハーフタイム、そして後半戦
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四段構え

 観客の誰もが、目の前でなにが起こったのか、すぐには理解できなかった。

 大凶魔、目黒と稲津以外の龍堂学園メンバーも、ただ固まるのみ。

 その中で目黒は片膝をついて腰を下ろしたまま洞を見つめ、逆に稲津は顔をそらしまぶたを閉じていた。

 甲斐、夜長がすぐさま飛び出し、洞の元へ駆け寄り、それによって両校の他のメンバーもそれでスイッチが入ったように目黒、そして洞の元へと集まっていった。


 夜長が洞を抱え上げると、目黒に問い詰めるかのように睨みつけた。

 甲斐が「目黒君……貴方……」

 鳥居が「おい脳筋! てめぇ何やったんだよ!?」

 白鳥が「鳥居さん、いくら目黒君でも敵の目の前で必殺技を教えるとは……」

 金剛が「だいじょうぶだよ羽斗(はと)君。だって、目黒君だもん」 


 沈黙の夜長を代弁するかのように、甲斐、鳥居が問いただし、白鳥がツッコミを入れ、金剛がメンバーを安心させるかのように優しく微笑んだ。

「安心しな。別に魔体を破壊したわけじゃねぇ。龍造の爺に教えてもらった【何とか】って技だ」

「ほらね。やっぱり目黒君だ」

 金剛の微笑みと目黒の答えに一同、わずかに脱力するも、稲津が補足する。

「龍造先生より教えてもらった【魔短絡(またんらく)】です。この呼び名は龍造先生のオリジナルですので、正しいかどうかわかりませんが」

「短絡ってショート、もしや魔力を!?」


 甲斐の推測を目黒が是とする。

「ああ、俺もよくわからねえが魔力の流れをせき止めて、逆流させたり電気みたいにショートさせる技みてぇだ。ああ、安心しな大凶魔さんよ。まだこの技は未完成どころか今日がぶっつけ本番でな。真理の【カミナリ】で”覚醒”させねえと俺の”眼”が覚めないし、少しでも動いている人間にはまだ使えねぇからよ」

 周りの喧噪(けんそう)に眼が覚めたのか、洞の眼が開く。


「よなが……さま」

 蚊の羽音(はおと)のような洞の声を耳にした夜長は、すぐさま両腕で洞の頭を抱きしめた。

 その横を”自分が運びます”とばかりに、倉が片膝を立てて腰を下ろすと、洞の体を持ち上げ、ベンチまで運んでいった。


 コートへ戻る大凶魔メンバーの背中を見ながら、今度は目黒が甲斐に問う。

「冷血非道のお嬢様だと思ってたけど、意外と情が厚いんだな」

「ええ、でなければ、他のメンバーは夜長さんをあおがないわ」

「そうだ会長、次のレイダーは俺に行かせてくれ。まだ体が”覚醒”したままだからな。さっきの技は無理でも、力があり余っているからな。もったいねぇんだ」

「わかったわ。お願いするわ」


 ミッドラインへ歩く龍堂学園メンバー達。

 甲斐の斜め後ろを白鳥が歩み、他には聞こえないように呟く。

「仲間想いのすばらしいキャプテンですね、夜長さんは」

「ええ、私も見習わなくては」


「果たして、ご本人にその意志がおありなのか……」


 思いもよらない白鳥の言葉に、甲斐はその瞳で白鳥を貫いた。

「……どういう意味かしら白鳥君? 私は自分が未熟なのは理解しているし、何とかしたいと思っているわ」


 しかし追い打ちをかけるように、白鳥は唇の端をゆがめる。

「それだけならよろしいのですが、敵を利する行為に走る恐れもありますので。稲津さんの必殺技名はまだしも、わざわざ”魔力をショート”と発言して、残念な頭の目黒君から必殺技のからくりを引き出すなどと……」


「白鳥君」

「はい、なんでしょう?」

 想いや感情のない、無の呼びかけに白鳥は歪んだ顔を正した。


「このチームにおける貴方の役割は?」

「『龍堂学園チーム、副キャプテン』として、キャプテンである”甲斐さん”のサポートでございます」

「なら、私はキャプテンとして、その責務に期待します」

「かしこまりました」

 白鳥は胸に手を当て一礼すると、さらに補足とばかりに地面に向けて答える。


「”もう一つの役割”は、キャプテンが退場した時、皆をまとめ、相手チームを倒すことです。例えキャプテンが、『負傷、反則以外』の退場でも……」

 甲斐は白鳥の頭頂(とうちょう)を貫くように睨みつけると、きびすを返す。

 あやしい笑みで甲斐の背中を見つめる白鳥に向かって、金剛が近づいた。

「ダメだよ羽斗君! また何か変なことしようと考えてたんでしょ?」

 頬を膨らませる金剛の叱責に、白鳥はにやけた顔で答えた。


『龍堂学園レイダーはアタックサークルへ。十……九……』


「よっしゃああぁぁぁ!」

 金剛の言霊と自身の覚醒。この二つが消えないうちに、目黒は勢いよく大凶魔のコートを掛けていった。

 対する大凶魔のシフトは、デッドエンドラインのすぐ前に夜長が立ち、それを頂点に夜長から見て斜め左前方に倉、右前方に美月。倉の斜め前に氷耶麻、美月の斜め前に火室が立ち、目黒から見るとΛ(ラムダ)の文字のようなシフトを作っていた。


『サークルイン! レイダーはカウントテン以内に攻撃を。十……』


 男子生徒A、Bが大凶魔のシフトを分析する。

「大凶魔の……変わったシフトだな?」

「おそらくあのストライカー、大凶魔のキャプテンを狙ってくるからな。あのくさび形の中に入った瞬間、四方からタコ殴りするつもりなんだろう」

「でも大凶魔の連中は術が使えないんだぜ。いくらなんでも」

「強力なマギカやストライカーは、術や能力に比例して強力なネイティブスキルを持っているぜ。さっきの大凶魔のディフェンダーも、あのストライカーの攻撃を全部(はじ)いてたじゃねぇか」

「なるほどね。強豪校のメンバーは、ネイティブスキルすら強力ってわけか」


 そんな男子学生A、Bの杞憂すら蛙のつらにショ○ベンとばかりに、目黒の視線は真正面の夜長をロックオンしていた!

「【加速】! 【跳躍】! 【防御】! へっへっ! ストライカーたるモノ、狙うは常に大将の首って……ね!!」 

”ドン!”

 術を掛け終わった目黒は、カウントテンを待たず、カタパルトから射出される戦闘機のように、夜長に向かって地を蹴った!


 このまま突っ切るのか? 大きく迂回してキャプテンである夜長を狙うのか?

 アタックサークルから飛び出した瞬間、大凶魔のメンバー四人は目黒の一挙手一投足を注視する。

「安心しな。ストライカーの誇りに掛けて真っ向勝負を挑んでやるぜ!」

 それを見切った氷耶麻と火室は、左右から目黒を挟撃しようと体を跳ばす。

「速っ! ネイティブスキル、いや、魔体も一流ってかぁ!」


 目黒の侵攻を遮るように、あわよくば転ばせようと、目黒の右前方に近づいた氷耶麻は、すねへ向けてローキックを放つ。

「あらよっと!」

 目黒はすぐさま氷耶麻の脚をハードルのように飛び越える……が、それはフェイクであった。下に気をとられている目黒に、左から火室のハイキックが顔面を襲う!

「危ねぇ!」

 空中に浮かんだままあわてて体をそらすと、眼前を火室の靴が通り過ぎる……がそれすらもフェイクであった。


「!!」

 着地した瞬間、わずかにバランスを崩した目黒の視界の外、右側から、たくましい腕が喉元をめがけて迫ってくる。それは倉のラリアットであった。

(こいやあぁぁ!)

 目黒は両腕で防御せず、喉元に倉の腕が食い込まないよう首を前に曲げ、魂で咆哮する。

(受けとめる気か!? なめるなぁあ!)

 より踏み込んだ倉は、自身の上腕二頭筋を、目黒のあごの下へぶち当てた。


 衝撃で目黒の体がわずかに後ろへ傾く。が、それを待っていたかのように、目黒は体から離れた倉の太い腕を左右の肘の内側で挟み込んだ。

(なにぃ!)

 目黒の背後に迫る美月の足払い。それをかわす為、倉の腕を支えにして目黒は体を浮かす。

(!)

 そのまま自分が倒れれば右腕にぶら下がった目黒をダウンさせることができたかもしれない。しかし、ストライカーの本能がそれを邪魔する。なんとか倒れまいと体を踏ん張った倉は目黒を生かしてしまった。


 目黒の腕の力が弱まった瞬間、倉は腕を引き抜き、目黒と距離をとる。

 結果的に目黒の動きを止め、四方から取り囲むことに成功した大凶魔チームであったが、フェイントから本命の攻撃、そのすべてをかわされたメンバーから流れる汗は冷たかった。

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