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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第一部 第三章 VS 大凶魔學院 前半戦
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スイカ割り

 目黒が「切断!? い、今、会長、切断って言ったよな!?」

 鳥居が「そ、そんな……放たれた術を”ぶった切る”なんて……」

 ”タネ”がわかり、やっと平静を取り戻した白鳥が皆に説明する。


「いえ、魔術的には可能……と言うしかありませんね。現に目の前で起きていますから。『防壁』にもいろいろと種類がありまして、大凶魔チームの洞さんみたいに、魔岩石(まがんせき)を使った【魔岩盾(まがんたて)】のように魔と物理攻撃、両方防御するものもあれば、会長の【対魔防壁】のように魔術、及び術のみを防御する『魔術盾』が存在します」


「そ、そんなことぐらい、俺でもわかっている!」

「落ち着いて下さい目黒君。そして前者はストライカーの物理攻撃を防御する為、ある程度の厚みがいりますが、後者は純粋に魔や術を防御する為、ほとんど厚みがない。まるで、トランプのカードやカミソリみたいに……」


 稲津は若干パニックになりながらも、

「じゃ、じゃあ会長は、相手が術を放った瞬間に、【対魔防壁】を進行方向上に水平展開して、跳んでくる【黒炎爆】や【黒炎斬】を切り裂いたっていうの!? あんな曲射で放たれた術を!? ま、まだ漫画みたいに、一直線に突き進む銃弾や弓矢を、刀で切り落とす方がましよ!」

甲斐がおこなったことを的確にまとめ上げていた。


「何を世迷い言を! はぁぁぁぁ!」

 夜長は右手の平を上に掲げると、直径一メートル強の【黒炎爆】を形成する。

 それを見た甲斐は、ミッドラインギリギリまで体を下げる。

「ははっ! 場外へ吹き飛ばして差し上げますわよ。ミッドライン外ではなく、我が大凶魔のコートを突き抜けて、”デッドエンドライン外”へね!」


 甲斐へ向かって夜長は右腕を振り、【黒炎爆】を放つ。静かに、風切り音も立てず。

 まるで偉大なる闇の属性に対して、風の属性である空気が道を空けるかのように。

 そして、猛禽類(もうきんるい)のように、【黒炎爆】はいくつもの弧を描き、獲物である甲斐へと飛来する! ……はずであった!


 同時に甲斐の右腕が持ち上げられ、伸ばされた薬指が【黒炎爆】をとらえる。

「【対魔防壁】!」

 曲射された【黒爆炎】の軌道を読み、その斜線上に一片が一メートル強の正方形で形成された【対魔防壁】を展開する。

 向かってくる【黒爆炎】に対して垂直ではなく、水平に!


 やがて両者は、それぞれのあるじの中間地点で激突する! 


 例えるなら、飛来した直径一メートルの黒スイカと、刃渡り一メートルの巨大な中華包丁が相対するように。

 中華包丁と化した【対魔防壁】によって、きれいに切断される黒スイカのような【黒炎爆】。


 そして、役目の終わった【対魔防壁】は消滅し、切断された【黒炎爆】は二つに別れ、甲斐の左右を通り過ぎると、ミッドライン上の【絶対魔防壁】に激突し大爆発を起こした!

 左右から噴き上がる漆黒の爆風によって、甲斐の髪が、ドレスが、そして、二つの胸が扇情(せんじょう)的に乱れ揺れ動く。


 目の前で起きた出来事にやっと事が飲み込めた夜長は、甲斐の体を切り刻むように薄紫の唇から言葉を放つ。

「切断ですって!? 私の【黒炎爆】を! 【黒炎斬】を! まるでバターやチーズを切るみたいに!?」


 甲斐は相変わらず陽の魔女の声で、別の見方をすれば、夜長に対して何も含むところがない、天然な声で語りかける。

「以前、龍造先生に言われたの


『甲斐ちゃんや! たまにはよぉ~、向かってくる術に対して【対魔防壁】を真横、水平に展開してみたら、いったいどうなるのかや~。


”|Der Matrose《すいへい(水兵)》 |Liebe《り~べ~(愛している)》 Mein(ぼく(僕)の) Schiff(ふね(船))


ってな! ぐわっはっはっはっは!』


……ってね」


 甲斐の会話の中で突然行われた、『魔の龍王』、庵堂龍造(あんどうりゅうぞう)の声色と顔芸。そしてデタラメなドイツ語に、夜長をはじめ大凶魔學院メンバー、そして観客席がまたたく間に凍り付いた。


 龍堂学園メンバーですら、容姿端麗、才色兼備、さらに生徒会会長である甲斐の一発芸に、体中から別の汗が滝のように流れ落ちる。

 ただ一人、金剛だけが龍造の物まねを、にこやかな顔で眺めていた。


「まぁいいわ。龍造先生からどんな技を授けられたのか知らないけど、しょせんあなたはディフェンダー。サッカーであるゴールキーパーみたいなモノ。そりゃ肉体攻撃は出来るかも知れないけど、あなたのつたない攻撃で、私の体にかすらせることができて?」


「あれ? 夜長さん? 私、中学時代は練習でも試合でも一度も

攻撃レイドを見せたことがない”

と思うけど……」

「!」

 天然な甲斐の発言に、夜長のみならず、中学時代のメンバーだった大凶魔の者達も息を呑んだ。


(やはり龍堂学園の連中は、甲斐でさえ力を隠しているのか?)

 大凶魔學院チーム副キャプテンの美月は、自分の推測が確信に変わったことを実感した。


「……いいわ。そこまで言うのなら、私を倒してご覧なさい!」

 夜長の周りには再び【黒炎爆】の漆黒の炎の玉が形成される。しかし、今までと違うのは四つではなく、五つ!


「!」

 一瞬! 甲斐の中に迷いが生じた。”まさか!”と。しかもその迷いは夜長に対する甘さから生じたモノだった。


 甲斐の迷いを感じた夜長は、妖しく唇を歪めながら甲斐に背中を見せると、五つの【黒爆炎】をデッドエンドライン前に立つ龍堂学園のメンバーに向けて放つ!

 しかも、それそれの【黒炎爆】が各メンバーを狙ったのではなく、ただ力任せに、スピード重視の射出だった。


「!」「!」「!」「!」「!」

 自分達に向かってくる五つの【黒炎爆】!

 龍堂学園メンバーそれぞれが、蛇ににらまれた蛙のように、【黒炎爆】の爆発に飲み込まれると覚悟を決めた瞬間!


『【対魔城壁】!』


 両翼八十メートルのデッドエンドラインすべてをおおい尽くすかのように、甲斐の【対魔城壁】の光の城壁が、龍堂学園メンバーの直前に形成されると!


”ドドドドドグググググァァァァァンンンンン!”


 五つの【黒炎爆】がわずかな時間差で、龍堂学園メンバーの目の前で大輪の花を咲かせた。


 安堵の息をつくメンバーに先駆けて

 目黒が「て、てめぇ! きったねぇぞ!」

 稲津が「武雄! いい加減ルールを覚えなさい! レイダーがアンティーを攻撃してはいけないってルールがどこにあるの!」

 白鳥が「目黒君。無力な私たちはここで何を叫んでも、負け犬の遠吠えにしかなりませんよ」


 鳥居は、目黒に関わると無駄な体力を消耗するのと、言いたいことは稲津が怒鳴ってくれたから沈黙を守り、金剛は相変わらず微笑みながら甲斐と夜長の戦いを見据えていた。


 術が間に合い、心の中で安堵する甲斐。しかし、時を与えないかのように夜長の体が迫る!

「至近距離で術を放たれたら、切断も何もないでしょう?」

 妖しい音色と共に、夜長は手の平で形成された【黒炎爆】を甲斐の腹へ向けて放つ!

 両腕を交差し、【対魔防壁】を展開する甲斐!


”ドゴォーン!”


 爆発を目くらましに、夜長はすぐさま【黒炎斬】を帯びた左足を、甲斐の首へ向ける!

 右腕を揚げ【対物防壁】、【対魔防壁】両方を展開する甲斐!


”ドグワガキィーン!”


 甲斐にダメージは受けなかったが、夜長の蹴りは二つの防壁を瞬時に破壊し、光の粒子へと変貌させた!


『うおおぉぉぉ!』

 再び始まった裏切り者に対する死刑執行に、大凶魔派の観客席からは狂気の歓声が沸き起こる。

 甲斐は逃げ回るも、夜長は距離を離されまいと肉薄し、絶え間ない【黒炎爆】、【黒炎斬】、そしてそれらを帯びたこぶしや手刀、肘撃ちや蹴りを甲斐の体へと浴びせる。


 やがて甲斐のドレスや下着、そして白い肌までもが、黒い炎の刃によって切り刻まれ、血を吹き出すのを許さぬかのように、傷口から漆黒の障気(しょうき)が噴き上がっていた。


「く、くっそう! 何も出来ないのかよ俺たちはぁ!」

 拳を握り唇をかみしめる目黒。

 ストライカーとして、目黒は目の前の格闘戦を援護できない悔しさを、叫びと体で表すことしかできなかった。

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