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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第一部 第三章 VS 大凶魔學院 前半戦
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私刑執行!

 夜長の周りに、こぶし大の大きさの【黒炎爆】が、四つ浮かび上がった瞬間! わずかな時間差をおいて甲斐に向けて一気に突き進む!


”ドドドドォォォォーーーーンンンン!”


 すぐさま轟音と衝撃波が甲斐の体で破裂し、龍堂学園コート上を突き進んだ!


『前半タイムアップ。なお、レイドはこのまま続行されます』


 ――《神の眼》より前半終了が宣言されたが、ルールにより、大凶魔學院のレイドはこのまま続行される――。


「か、会長ぉ!」

「落ち着け脳筋! よく見ろ!」

 情けない声を漏らす目黒を鳥居が叱責する。

 黒炎から浮かび上がるのは、四つの【対魔防壁】を体の前に展開している甲斐の姿だった!

「よっしゃぁ!」

 こぶしを握りながら雄叫びを上げる目黒。


 すぐさま夜長は四つの【黒炎爆】を甲斐に向かって放つ!

 一瞬! 陽炎(かげろう)のように揺れる甲斐の体!


”ドドドドォォォォーーーーンンンン!”


 破裂する黒炎と衝撃波。しかし、それは先ほどの攻撃時よりも若干遅れて、しかもミッドライン上で破裂し、轟いていた。


 鳥居が「ま、まさか……」

 目黒が「か、会長。あの攻撃を、全部よけやがった」

 白鳥が冷静に「なるほど。三年間背中合わせに戦ってきた元戦友。術の展開から発射のタイミングまで、すべてお見通しというわけですか」

 稲津が「だ、だからといって、あの攻撃を、しかも四つ同時によけるなんて!」


 龍堂学園チームは、改めて自分のチームのキャプテンが、化け物である夜長と対等に戦える人間、いやそれ以上のものだと錯覚するほど、目の前の光景に目を丸くしていた。


 しかし、大凶魔學院のチームメイトは甲斐の動きに、そして【絶対魔防壁】へだてられているとはいえ、目と鼻の先で起こった大爆発にも眉一つ動かさず、二人の戦いを見据えていた。


 なおも止まることのない夜長の【黒炎爆】を、甲斐はミッドラインを背中に時には体で避け、時には【対魔防壁】を展開して消滅させていた。


「はは……白鳥が気を失い、私があれほど手こずった【黒炎爆】を、会長は難なくよけてやがる。だが……これなら勝てるぞ!」

 鳥居が力なく笑いながらも、頼もしいキャプテンの姿にこぶしを握り、心の中は熱く燃えていた。


「これでお互い、魔体に魔力をたぎらせる事が出来たでしょう? 戦いの前の準備運動はこれでおしまいね」

 攻撃を一時中断した夜長の言葉に、甲斐は無言の返事を返す


 そんなやりとりに男子学生A、Bのみならず、観客席もざわめき出す。

「あれで準備運動だって!」

「でも、中等部時代の大凶魔のキャプテンが全力を出せる相手と言ったら、副キャプテンをしていた今の龍堂学園のキャプテンしかいないだろうし」

「ここから一体どうなるんだよ」


 体からより漆黒の魔力を噴き上がらせる夜長。

 やがてそれが両の腕や脚、そして手足に収束した瞬間! 


『【黒炎斬(こくえんざん)】!』


 まるで自分の周りのくうを切り裂くように、体を回転させながら腕を振り足を揚げ、やいばとなった黒炎が甲斐の体へと向かう!


 目黒が「あれは副キャプテンの技!」

 白鳥が「いえ、むしろこちらがオリジナルでしょう」


 曲線を描きながら甲斐に向かって突き進む【黒炎斬】であったが、大凶魔學院副キャプテン美月の【風の刃】と違うところは、スクリューのように高速で回転しながら獲物を切り刻もうとしていたところであった。


 甲斐はとっさに体を横に移動し避けようとするが、高速回転する黒炎の刃が甲斐の白いドレス、そして白い肌に漆黒の(ざん)を刻み込む!

「くっ!」

 アンティが始まって、初めて漏らされる甲斐の声。同時に傷口から漆黒の障気が漂い始める。


 さらに迫る第二波!

「【対魔防壁】!」

 甲斐は体の前面をおおうぐらいの巨大な【対魔防壁】を展開するが、漆黒の刃は甲斐の【対魔防壁】をドリルのように貫きながら砕き、破壊していった。

「!」


”ドグオォォォーーン!”


 黒炎と光の粒子が甲斐の前で爆発する!

「さぁ右か? 左か? どちらから飛び出してくるのかしら?」

 目の前の黒炎に向かって、妖しく放たれた夜長の言葉


 その二つが混ざり合う雲の中から、甲斐は夜長から見て左から飛び出すが、すぐさま夜長から放たれた四つの【黒炎斬】の刃が猟犬のように甲斐を追従する。

 甲斐はすぐさま足を止め、反対側へ跳ぶ。


 その瞬間! 夜長はまるで猟犬に指示するように右腕を横に振った。

 鋭角にも似た弧を描き、甲斐を追従する【黒炎斬】の刃!

 白鳥が驚愕の叫びをあげる。

「放たれた四つの術を、腕の一振りだけで操るなんて!」


 しかし三つの【黒炎斬】は甲斐を追従しきれず、【絶対魔防壁】に衝突し自ら消滅するが、追従に成功した一つはそのまま甲斐に迫っていく。

「【対魔防壁】!」

”ドグォォーーン!”


 甲斐は【黒炎斬】の直前に【対魔防壁】を展開し、何とか逃れるが、【黒炎斬】という名の猟犬はなおも甲斐を仕留めようと飛びかかってきた。


「【対魔防壁】!」

”ドドググォォーーン!” 

”ドドググォォーーン!”


 足を止め、【対魔防壁】を展開する甲斐の周りでは、【黒炎斬】の爆発が絶え間なくわき起こっていた。

 大凶魔學院チーム、大凶魔派の観客、そして一般の観客からも、裏切り者への制裁が始まったと確信していた。


「くそっ! このままじゃじり貧だぜ!」

「会長! がんばってください!」

 もどかしくえる目黒。祈るように口ずさむ稲津。


「そ、そんな……何が、何が起こっているんだ!?」

 だが白鳥は、まるであり得ないものを見るかのように、その体は震えていた。

「どうした白鳥! おまえまで脳筋と一緒にションベンちびる気か!」

 体が震えている白鳥に対して、鳥居は頭ごなしに怒鳴りつける。そして、


「大丈夫だよみんな。会長はやってくれるよ。いや、”もう”やっているのかな?」

 ただ一人、金剛だけが、にこやかな顔で夜長と甲斐の戦いを見つめてた。


 絶え間なく放たれる夜長の【黒炎斬】に対して、甲斐が【対魔防壁】を展開すればするほど甲斐の魔力は消費され、やがて魔力が失われた甲斐の体を、魂を、夜長が切り刻み、燃やし尽くす。

 そんなシナリオを誰もが描いていた中、一人、また一人と、何か甲斐の周りに漂う違和感に気づいていた。


「!」「!」「!」「!」「!」


 甲斐のすぐ後ろで戦いを見据えていた大凶魔のメンバーも、同じように甲斐の、甲斐の周辺の空間の異変に気づいていた。


「!!」

 異変に気づいた夜長は舞いをめ、攻撃をめる。

 先ほどまで絶対優勢だったようの魔女の声とも思えない、切羽詰まった叫びが夜長の口から放たれる!

『あなた! 一体何をしたの!』

 夜長は思い出す。甲斐に向かって放たれたいく十もの【黒炎斬】が、


『【対魔防壁】を展開していない甲斐の眼前で爆発、消滅していった』


「いつもどおり【対魔防壁】を展開して、夜長さんの攻撃から身を守っているわ」

 甲斐はけろっとした声で夜長の問いに答えるが、やがてその顔は見る者を柔らかくするようの魔女の顔となる。


 しかし、夜長以下大凶魔のメンバーにとっては体をこわばらせる言葉が、淡い桃色の唇から花粉のように放たれた。


「ただ違うところは、術に対して垂直ではなく平行、向かってくる術を


『切断するように』


【対魔防壁】を展開しているだけよ」

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