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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第一部 第三章 VS 大凶魔學院 前半戦
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判定

「あらよっと!」

 火室の腰から手を離し、起き上がった目黒は、肩と後頭部をコートにつけ、体を丸めた火室に話しかける。

「あ~大丈夫か? ……て、敵に言う言葉じゃねぇや。てかどうなっているんだ? ダウンなのか、こいつの負傷退場なのか……ん?」

 《神の眼》から四方の客席へ向けて光が放たれると、目黒のジャーマンの様子が空中に投影される。

「おお! かっこいいじゃん俺!」

 空中投影の画面にはいろいろな方向から記録された目黒のジャーマンが映っており、やがて超スローの映像に切り替わる。


「どっちだ?」

「どっちが先に地面についたんだ?」

 男子学生A、B、そして観客すべてが、《神の眼》から投影された映像を固唾を飲んで見守る。

 そして《神の眼》から競技場すべての人間に向かって説明が始まる。


『ただいまのプレーについて説明します。『ダウン』とは足の裏、つま先、そして、それらを包み込む履き物以外の体の部位がコート上に接触した場合を指します。アンティの攻撃によってレイダーの衣服が先に地面へと接触しました……』


『おお!』

 龍堂学園応援席から歓声が上がる……が。


『が、衣服のコートへの接触はダウンと認めず、その内側の肉体も衣服越しにコートへと接触して初めてダウンとみなします。また、アンティがブリッジした時に、レイダーの衣服より先に頭髪がコート上へと接触しました……』


『おおおぉぉぉ!』

 今度は大凶魔學院、そして一般席の大凶魔派の観客から歓声が上がる……が。


『が、術、技を掛ける時において、頭髪、体毛、爪、そして魔具がコート上に接触するのはダウンとはみなしません』


「ふう~。なんかこっちの方が心臓に悪いぜ」

 目黒が胸に手を当て、安堵のため息を思いっきり吐き出した。

「そういえば向こうの副キャプテンが思いっきり宙返りしながら【風の刃】を放った時、髪の毛が地面についていたよな」

 レイダーだった美月の攻撃を思い出しながら鳥居が呟いた。


『……よって、レイダーの肉体とアンティの頭皮、どちらが先にコート上へ接触したかを、あらゆるセンサーで計測した結果……』


 静まりかえる観客席。


『アンティのダウンと判定いたします!』 


『ああ……』

 龍堂学園側から漏れるため息。

「あちゃ~~! でも、”人間相手”にいきなりぶっつけ本番だから仕方ねぇか……」

 一瞬、顔をゆがめた目黒であったが、すぐさま気を取り直した。 


『うおおおぉぉぉぉーー!』

 地鳴りのようにわき起こる大凶魔派の観客……だが。


『ですが!』


 再び《神の眼》の声が競技場に轟いた。

「ま、まだあるのかよ~」

 思わず転びそうになる目黒。


『レイダー行動不能により、ただいまよりカウントダウンを開始します。十……九……』


「おいおい会長、どうなっているんだこれはよ?」

 いつの間にか立ち上がって輪になっている龍堂学園メンバーに向かって、目黒は駆けていった。


『目黒君が先にダウンしたとみなされたから、その瞬間、龍堂学園は全滅扱いになって、大凶魔學院には私たちのダウンと目黒君のダウン、計6点が入るんだけど……』

「だけど?」


『例え相手を全滅させても、アンティの攻撃を受けたレイダーがコート内外でダウンや行動不能になった場合、《神の眼》からテンカウントダウンが始まって、もし終わるまでに立ち上がらなければ……』

「立ちあがらなければ?」


『それまで得た点数は、すべて消去されるのよ』


「つ、つまり、アイツが目を覚まさなければ……」

「ええ、2対3のままで、まだウチが1点リードよ」


『ひ! む! ろ!』『ひ! む! ろ!』

 今だ体が丸まって気を失っている火室に対して、大凶魔派の観客席からは一斉に火室コールがわき起こる。

 氷耶麻もまた、心の中で火室に向かって叫んでいた。

(火室! 立って! ここで立ち上がれば夜長様をはじめ大凶魔派のみんなは貴方を見直してくれるわ! もう中二病とか、痛いヤツって言われなくてすむのよ!)


『ひ! む! ろ!』『ひ! む! ろ!』

 氷耶麻の念はなおも続く。

(も、もしここで立ち上がれば……あ、あたしに向かって

”あ、あ~んなこと”や

”こ、こ~んなこと”

をしても……い、いきなりは、心の準備が出来てから……し、してもいいからぁ!!)


「ん……んん。これは……」

 氷耶麻の声が届いたかのように、火室の目はゆっくりと開かれる。

『六……五……』

「火室! 早く立て!」

「何やっている! 立てば6点入るんだぞ!」

 火室が眼を覚ますと、観客席から一斉に罵声(ばせい)にも似た声援が矢継ぎ早に放たれた。


『四……』

「カウントダウンか!」

 ようやく事態を飲み込めた火室は慌てて体を起こす。

「くそ! 立て! こ、こんなところで……」

『ひ! む! ろ!』『ひ! む! ろ!』 

 膝に手を置き、何とか体を持ち上げる火室の眼に入るは、裏切り者の甲斐率いる龍堂学園のメンバー。そして自分を翻弄(ほんろう)した目黒。


『三……二……』

『お、おれ、我は、すぐさまダウンする……異端の魔女共とは違うんだぁ~! ぬおぉぉ!』

 幸いにも長年(わずら)った中二病が、火室の体内から気力を噴出させ、自身を立ち上がらせた。


『一……。レイド成功! 大凶魔學院6点獲得! 大凶魔學院8 龍堂学園3』


『うおおぉぉぉーー!!』

「や、やったぁ! 火室! あ……失礼しました」

 思わずバンザイする氷耶麻だが、すぐさま冷静になり、”魔女”の顔へと戻った。


 まだ足取りがおぼつかない火室であったが、コートへ戻ると胸に手を当て、キャプテンである夜長に向かってうやうやしく礼をする。

「申し訳ありません夜長様。我の独断で皆様の貴重な魔力を……」

”パチパチパチパチ”

 火室の耳に入ったのは、意外にも夜長からの罵倒(ばとう)ではなく拍手であった。

「よくやってくれました火室君。6点という点数に比べれば皆の【マギディ】なぞ些細なこと。しばらくは体を休めて、アンティ時も無理はしないようにして下さい」

「ははっ! かしこまりました」


「火室。お疲れ様」 

 報告が終わった火室に氷耶麻がねぎらいの言葉を掛ける。

「ああ、氷耶麻か。気のせいか、ダウンしていた時におまえの声が聞こえたような……」

「え?」

「なんか……すごいエッチなことを言ってたような」

”パァーン!”

 頬を染めた氷耶麻の手の平と、ぽかんとした火室のほおがぶつかり合い、澄んだ音がコート上に波紋を広げる。

「な、なに言ってるの火室! い、今は試合中よ!」


 そんな二人のたわむれを好意的に受け止める、龍堂学園の脳筋ストライカー目黒。

「おお! 点を入れても気合いの平手か!? それともフラフラな体にかつを入れたか!? 中二病だかなんだと言っても、いっぱしの戦士じゃねぇか! 気に入ったぜ!」


 そして今度は倉に向き直ると、親指を立て、それを自分の顔に向ける。

「ま、ストライカーにとっちゃプロレス技なんぞ、”たしなみ”だからよ!」

 それはまるで

”自分に向かってプロレス技を掛けてみろ!”

と挑発しているようだった。


 しかし倉の顔は変化せず、アンティ準備の為、無言で目黒に背中を向けた。

「ちぇ! つまんね~の!」

 目黒は気がつかなかった。倉の体内に燃えるストライカーの闘志を! 

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