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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第一部 第三章 VS 大凶魔學院 前半戦
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交渉

 龍堂学園のコートでは、巫女装束姿の鳥居が甲斐に進言する

「会長。次のレイダーは私が行く。一番ダメージが少ないからな。ついでに二、三点かっさらってくるからよ!」

「お願いします鳥居さん。あと……」

「わかっている。前半終了まで約三分。何とか時間を使い切ってみせるさ。そうすればハーフタイムで十分間休養できる。勝負は後半だ!」

「ありがとうございます」

「あとみんな。私の魔力は十分にあるから【マギディ】は無用だ。別にサボっていた訳じゃないぞ」


『龍堂学園のレイダーは直ちに相手コートのアタックサークルへ。十……九……』


「なぁ会長。一つ聞いてもいいか?」

「何かしら? 目黒君」

「レイドの時って、残ったメンバーは立ってなけりゃいけないのか? 会長達はずっと寝っ転がっていたが、俺はずっと走っていたからな。……正直、座りたいんだ」

 何事もポジティブで、脳筋な目黒が吐く弱音に、他のメンバーは事の重大さを肌で感じた。

「大丈夫だと思うわ。仏教系の学校は座禅姿で【マギディ】を唱えるところもあるから」

「んじゃお言葉に甘えて。どうせならみんなも座っちまえよ!」


 コート上に腰を下ろすメンバーを振り返りながら眺め、大凶魔學院のコートへと駆けていく鳥居。その心中は……。

(お願いします、ありがとうございます……か。とても前年度中学覇者の《言霊(ことだま)》とは思えんな。覇気がなさ過ぎるし、いつ倒れてもおかしくない。それに勝負は後半と威勢よく言ったはいいが白鳥、目黒、稲津さんの消耗も……。あとは珠洲(すず)の使いどころか」


 アタックサークルの中へ入る鳥居だが、目の前に映る光景を疑った。

「なっ! なにいっ!」

 思わず叫ぶ鳥居。同時に観客席からもどよめきが起こる。

 鳥居の正面、アタックサークルから数メートル離れた所に、大凶魔學院キャプテンの夜長が腕を組んで仁王立ちしており、残りのメンバーはデッドエンドラインの手前で一列に並んでいた。


 龍堂学園観客席の男子学生A、Bも思わず息をのむ。

「どうなっているんだ大凶魔チーム? サドンデスでもないのに一騎打ちか?」

「前半の残り時間が少ないから、無駄な消耗を避けたとか?」

「いや、マギカ・バディはたとえタイムアップになっても、レイドが終了するまで試合は続行されるんだ」

「んじゃ、龍堂学園のレイダーを早く倒せば、次のレイドで前半過ぎてからも攻撃続行できるから、より龍堂学園、そしてキャプテンの甲斐を消耗させる事が出来るのにってか?」

「ああ。もっとも、俺たち素人には思いもつかない戦略があるかもな……」


 鳥居の眼は眼前の夜長を睨みつけ、

「……どういうつもりだい? 私も舐められたモンだね」

 鳥居の口が不敵な笑みを浮かべる。

 それは龍堂学園女生徒でも、マギカ・バディのレイダーでもない。厄魔(やくま)はらう祓い師の顔だった。


「そう、その顔よ。マギカ・バディでお仕着せのプレーだけで満足している人間にはない、殺るか殺られるか、日々実戦に明け暮れる素敵なお顔。私の最も欲しい人材よ」

「欲しい? 人材!? はっ! キャプテンのくせにこの期に及んで泣き言か!? いっそのことギブアップした方が楽になるぜ!」


「あら、こう見えても私は慈悲深いのよ。祓い師としてそれだけの力があれば、我が大凶魔學院の術者の中で、すぐさま頭角を表すでしょうね。そうすれば貴女のおいえも……」

「黙れ! おっと、思わず乗せられちまったな。私をスカウトする気だろうが、あいにく節穴の巣窟(そうくつ)である大凶魔のケツを舐める気はないんでね!」


「節穴……ですって?」

「そうさ! もしあと一年、いや、龍造先生が私に声を掛ける前にスカウトすれば、あんたら大凶魔にくみしていたかもな……。だが現実はどうだ? 私はどちらのコートに立っている!!」

「!」

 鳥居は声に覇気を込めながら、夜長に向けて一言一言叩きつける。


『しょせん! おまえ達大凶魔派は!』

『龍造先生の後追いしかできない!』

『無能の集団ってことさ!』 


『おおおおぉぉぉぉ!』

『!!』

 龍堂学園観客席からは歓声が、大凶魔派からは声にならないどよめきがわき起こる。


「鳥居さん! よく言った! さすが風紀委員総大将!」

 龍堂学園観客席から風紀委員の竹ノ内が竹刀を振り回しながら、鳥居の啖呵(たんか)たたえていた。 


「残念だわ。交渉決裂ね」

 夜長の体中から闇の闘気が勢いよく噴き出してくる。

「あれが大凶魔流の交渉術ってか? まだ厄魔の命乞いの方がマシだぜ!」

 鳥居は再び夜長に向かって吠えると、 


『四……』


 神の眼のカウントダウンの中、鳥居の両の袖の中から御幣(ごへい)が滑り落ち、くしをしっかりと握りしめる。

『【鉄火(てっか)巻き】!』

 詠唱とともに右手を振ると、轟音とともに、鳥居の右側に炎の竜巻が現れ!


『三……』


『【河童(かっぱ)巻き】!』

 今度は左手を振ると、水流渦巻く水の竜巻が現れた!

「なに!」

「火と水の術を同時に!」

 炎と水の竜巻を見た観客席から、どよめきがわき起こる。


『二……』


『まだまだぁ! 【干瓢(かんぴょう)巻き】!』

 再び右手を振ると、鳥居の背中に茶色の砂竜巻が現れた。

「今度は土属性!」


『一……』


『とどめはぁ!』

「と、とどめは?」

『ただの【竜巻】だぁ!』

 若干ずっこける観客達。しかし

「た、ただの術師風情が四精の術を!?」

「しかも、同時にだと!?」

 ”魔”に属する観客達からは術師に対する見下しと、鳥居の力を認めざるをえない複雑な想いが泥水のようにうごめいていた。


「すばらしいですわ。でも、それだけじゃ私には傷一つつけられませんわね」

「どうかな」


『……ゼロ!』


「いっけぇ~!」


 鳥居が両の手の御幣を振ると、四つの竜巻は一斉に夜長へ向けてコート上を駆けていった!


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