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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第一部 第三章 VS 大凶魔學院 前半戦
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魔術返し

 立ち止まった目黒は両膝の上に手を置き、呼吸を整える。

「ストライカー君どうしました? 犬のように舌を出しちゃって。いっそワンちゃんとお呼びしましょう。疲れたのなら四つん這いになった方が楽になりますよ」

「……く、くそったれめ!」

 疲れた眼で火室を睨みつける目黒だが、コート上を匍匐前進、そして転がっている味方の姿が眼に入ると、両の眼に光が戻ってきた。


「おやおや、まだ眼は死んでいないみたいですね」

「あ、あたりまえだろう。おまえと違ってな、俺は100%勝てる相手を目の前にして逃げるほど、女々しくはないんでね」

「……いいだろう。ならばその口! 二度ときけなくしてくれるわぁ!」

 火室がその指に【氷の槍】を展開した瞬間! 今まで氷室に向かってまっすぐ突進していた目黒は、右に大回りしながら火室へと駆けていった。


「ちょっとは知能がつきましたかぁ? だがそんな浅知恵、猿にも劣るわぁ!」

 再び後ろに滑りながら【氷の槍】の照準を目黒に向けるが……。

「な、なにぃ!」

 何か後ろに違和感を感じて振り向くと、白鳥がわざとらしく手足を折り曲げ、舌を出しながら”死んだふり”をしていた。

「くっ!」

 慌ててジャンプをし、白鳥を飛び越える火室。続けて

「あらよっと! わりいな白鳥!」

 目黒が白鳥のしかばねを軽快に飛び越える。


「な、なんだこれは!」

 慌ててコート上を見渡した氷室の目に映るのは、コートのあちこちで、さまざまなポーズで”死んだふり”をしている龍堂学園のメンバーであった。

「こ、こいつらデッドエンドラインのそばでダウンしていただろ!? なんでこんなところに!?」

「オラオラ! どうしたどうしたぁ! お犬様はこっちだぜ! ワンワン!」

 目黒が挑発しながら己の体を右へ左へと跳ばし、火室との距離を縮める。


「く! くそぉ……なにぃ!」

 再び後ろに気配を感じた火室は慌ててジャンプし、魔女帽子で頭を護りながらうつぶせになっている金剛を飛び越えた。

「こ、こいつら! 俺の行く先々でぇ! 《神の眼》よ! 龍堂学園の行いは明らかにレイダーである私を妨害しております! 警告を!」

 しかし、《神の眼》は沈黙を守ったままだった。

「なぁっ!」


 倉が再び心の中で火室に語りかける。

(火室と脳筋ストライカー。火室が船の先端なら、脳筋はかじ取りか? 脳筋が左右に舵を切ることによって、先端であるおまえが操られているのだぞ。もしおまえが一歩でも前に出て攻撃すれば容易にこの状況を打破できるものを。だから夜長様は【マギディ】を……)


「どうしたどうしたぁ! あんよが遅くなったぜ!」

 しかし火室は何かに気がつくと、再び強気になる。

「いいでしょう! 味方を助ける為の捨身の嫌がらせ。そんな策を労したおまえ達の浅はかさを呪うがいい!」

 火室は左人差し指を目黒に向けると【氷の槍】を一本放つ!


(どうしたんだ? 【氷の槍】は俺の心臓じゃねぇ……右脚にむかってやがる? 狙いがはずれたのか?)

 目黒は容易に避けようとするが、

(待て! 今、俺の後ろに寝転がっているのは……真理! こいつは真理を狙って!)


『ぬおおぉぉ!』


 目黒は勢いよく体をひねりながら、右腕をめいっぱい伸ばし、右横を通り過ぎる【氷の槍】をわしづかみにする!

「ぐああぁぁ!」

 目黒の両手には指出し革手袋をはめている為、冷気が指先から右手全体へ伝わり、さらに魔の冷気が右腕を氷で包み込もうとする。


「よくぞ止めた! 安心しろ! 今、楽にしてやるぞ!」

 火室は右人差し指を伸ばすと、半身になった目黒へ向けて【氷の槍】を放つ!

「目黒流! 魔術返しぃ! うおおぉぉぉ!」

 なんとか身体を踏ん張った目黒は、わしづかみにした【氷の槍】を氷室に向かって思いっきりぶん投げる。

「なぁ!」

 槍投げのように飛ばされた【氷の槍】は、火室が発射したばかりの【氷の槍】と激突する!


”バァキイィィン!”


「ぐあぁ!」

 慌てて両手で顔を護る火室。その顔は憤怒の表情を浮かべていた。

「お、おのれぇ~犬の分際でぇ! なに! いない? どこだ!?」

 辺りを見渡す火室の腰が、不意に背後から抱きしめられる。


「へっへぇ! よ~やく捕まえたぜぇ」

 【氷の槍】の破片で額から出血した目黒が、腰を落として火室の腰を背中から抱きしめていた。


「こ、この! 離しやがれ!」

「堅いこと言うなよ。友達じゃないか~」

「だ、だれがおまえなんか!」

「ああ、そうかい! 友達じゃねぇんなら、遠慮なくいかせてもらうぜぇ!」

 最初はゆっくりと、徐々に加速しながら目黒は火室の体を持ち上げ、背中を反らす。


「や、やめろぉ!」

『せえぇ~のおぉ!』


 体を前に折り曲げ、手足をジタバタさせている火室の後頭部を、目黒は思いっきりコートに叩きつけた!


”ズゥドオォォン!”


「ジャ……ジャーマン」

「……スープレックス」

「マギカ・バディでプロレス技なんて」

「は、初めて見たぜ……」  

 龍堂学園観客席の男子学生A、Bが目黒の所行を順番に口ずさんだ。 

 しかし、目黒のジャーマンスープレックスについて、《神の眼》からの審判がなかなか下らなかった。


「お、おい、どうなっているんだ? ジャーマンってことはどちらかの体が先に地面について、ダウンしたんだろ?」

「ひょっとして《神の眼》でも、どっちが先にダウンしたのか、容易に判定できなかったとか?」


『ただいまのプレイに対して、ビデオ判定を行います。しばらくお待ち下さい』


『おおおぉぉ~~!』


 どよめく観客席。それは両チームメイトも同様だった。

 6点か? 0点か? まさに試合の命運を左右する判定であった。

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