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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第一部 第三章 VS 大凶魔學院 前半戦
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葛藤

 頭上を見上げる白鳥の目に、コートを満たす霧が一気に収束され、十本の【氷の槍】が形作られる。

 それは【カミナリ】の感電が終わった他のメンバーではまだ気がついていなかった。


(他のみなさんは稲津さんの【カミナリ】ですぐには動けない! 会長もおそらくしびれで【対魔防壁】の詠唱は……)

 白鳥の頭の中で最善の方法がいくつも思考、検討、シミュレーションされ、一つの結論に導き出した。


 火室の詠唱と勢いよく振り下ろされる両の腕。

 十本の【氷の槍】は、ピラミッド状に固まっている龍堂学園メンバーに向けて発射された。


「会長、皆さん、すいません!」

「えっ!?」

 とっさに白鳥は背中を向けている甲斐の肩の後ろを蹴り、その反動を利用して両腕を広げ

「白鳥!?」

「きゃっ!」

「ちょっとなに!?」

 鳥居、金剛、稲津三人まとめて抱きしめるように抱え込むと、そのまま体重と腕の力で押し倒した。


”ズドッ!””ドスッ!””ブズッ!”グスッ!”


 倒れた甲斐のすぐ足下、そして三人の女子の眼から白鳥の体越しに見える十本の【氷の槍】。


「白鳥ぃ!」

「羽斗君!」

「白鳥君! 貴方!」

 白鳥の体に【氷の槍】が突き刺さったように見える鳥居、金剛、そして稲津から悲痛な叫びが放たれる。

「ハハハ……大丈夫です生きていますよ。多少、タキシードが破れましたが」

 白鳥の開いた足をよけるように突き刺さった【氷の槍】。

 甲斐、そして他の女子も安堵の息を漏らすが……。


「クックック……ア~ハッハッハッハ!」

 蛍光色の魔方陣を見せつけるように火室は顔に手を当てると、その口から激笑(げきしょう)をコート上に満たすかのように吐き出した。

「串刺しはかなわなかったが、自爆のやり過ぎでもはや戦術と言うより癖になってしまったようだな。まぁいい、せっかく5点も手に入れたのだからな。我の仕事はこれで終わりだ」


”くっ!”っと唇をかみしめ火室を睨みつける目黒。

「ああ、ストライカー君がいたっけな。だが直線でしか動けない君に、我の【白銀の湖上を舞う妖精の調べ】の、蝶のように舞いと蜂のようなスピードについてこられるかな?」

 火室は目黒を見据えたままミッドラインへむけて、ゆっくりと後ろ向きに滑りだす。


 そんな氷室に向かって、目黒は顔を歪め、舌を出しながら神経を逆なでする声を吐き出した。

『ああ、さぞ気持ちいいだろうな……なにせ、てめぇは何もせず、俺たちが恵んでやった5点でこうを誇ればいいんだからなぁ~』

 目黒の挑発に一瞬、動きが止まる火室であったが


「安っぽい挑発だな。いや、負け犬の遠吠えと言ったところか。貴様もついでに四つん這いになればよかったモノを。勝負は勝てばいいのだ!」

「ああ、確かにその通りだぜ。ついでにな、偉大なる大凶魔學院の戦歴にこう刻まれるぜ。

『大凶魔學院の火室。夏大会二回戦、対龍堂学園戦において、”相手の自爆により”五点を奪取!』

……てな!」

「んなっ!」

 目を見開き、滑りをやめ固まる火室。


 そして目黒の後ろでは、コート上に倒れた龍堂学園メンバーによって女子四人+ホストの女子会が額を付き合わせて行われた。

 稲津が「申し訳ありませんキャプテン。事前に相談もせず」

 甲斐が「逆に助かったわ。実はね、大凶魔のメンバーから火室君に向かって、ほんの少しだけど【マギディ】が唱えられていたの。だから私も正直、このままいけばどうなっていたか……」


 金剛が「びっくりしたよ羽斗君。また倒れたのかと思っちゃった」

 鳥居が「まさかあいつがあんな技を隠していたとはな」

 白鳥が「申し訳ありません会長、そして鳥井さん、金剛さん、稲津さん。レディーの背中をいきなり足蹴(あしげ)にしたり、押し倒したりして……」

 甲斐が「気にしないで。火室君のあの技は私も知らなかったわ。火室君は中学時代、アンティーが主だったし、レイダーになっても【氷の槍】でほとんどの相手を倒していたから」


 稲津が「ところで会長、今回のようなアンティ側における自爆の場合、我々はどうしたら? まぁ台貴知戦での私は自爆したらすぐさまコート外へ出ていましたが、あの時のみんなは演技とはいえ、術や技を喰らって倒れていましたけど……」


 甲斐が「ルールでは

『アンティ側でダウンした者は、すぐさまコート外へ退場するのが望ましい』

ってあるわね。でもこれはあくまで動ける者だけで、術によって動けなかったり、気絶した人に関してはどうしようもないから、厳密には適用されないわ。その代わり倒れたままでいて、不可抗力でレイダーや生き残った味方のアンティーから放たれた術の流れ弾に当たっても、それは自己責任となるわね」


 そして白鳥は火室を挑発している目黒を見据えながら

「なにやらあちらはおもしろいことになりそうですね。挑発は私も多少自負しておりましたが、目黒君がああいう口喧嘩にけていたとは……」

 稲津が若干目を細めながら

「よく私と口喧嘩していますから。もっとも、最後は私の【カミナリ】で黙らせますけど」

(((ひでぇ……)))

と白鳥、鳥居、金剛は同時に心の中で唱える。


 目黒の挑発はなおも続いた。

「さぁどうした。とっととお味方のコートへ戻れよ。それともウチの会長、いや、”異端の魔女”を休ませてくれるのかい? まぁこっちが”自爆してやった”んだから、それぐらいしてもらっても罰はあたらねぇけどよ!」

「うぬぬぬ……」

 唇をかみしめ、火室は目黒を睨みつける。


 それを腕組みしながら心の中で呟く、大凶魔學院ストライカーの倉。

(火室、その迷いこそおまえがレイダーを任せられない一番の理由。敵陣に一人で乗り込むレイダーが最も信じるべきモノはキャプテンのめいでも他人の声でもなく、これまで鍛錬してきた己の力と最善の判断力! 俺がファーストレイダーで一人のダウンも一点も取れなくても、そのことについては夜長様はなにもとがめなかった)


 氷耶麻もまた祈るかのように、心の中で火室に語りかけていた。

(なにをしているの火室。そのままラインを超えれば五点入るのよ。そうすれば我が大凶魔學院の勝利は揺るぎないわ。小さいことに囚われず完全勝利をめざせって、夜長様もおっしゃっていたじゃない!)

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