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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第一部 第三章 VS 大凶魔學院 前半戦
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霧と雲

”ビシイィィィッッーー!”


 龍堂学園コート、いや、大凶魔学園コート”以外”の観客席にまで響き渡る、空間を切り裂く擬音!

 龍堂学園メンバーから観客まで、火室の”イタイ”中二病の言動や行動、レイダーとして”ちょっとどうかな~”って眉をひそめる姿を、これまで生暖かい目で見ていたが、全く空気の読めない甲斐は、とうとう火室を一刀両断してしまった。


 目黒が(言っちゃったよ会長ぉ~)

 白鳥が(ひょっとして会長は、台貴知戦での我々の”はっちゃけ”からずうぅぅっとストレスを溜めていたのでは?)

 鳥居が(白鳥、おまえの吸血鬼姿の悪ふざけ、会長、怒りを通り越してあきれてたぞ)

 金剛が(うん、まぁ、あれは仕方ないよね。羽斗君だもん)

 稲津が(会長は”私は”とおっしゃっていました。つまり未だ我々もふざけているとしか見なされていないのでは?)


「……」

 動きが止まり、わずかに顔を落とす火室。

 一瞬、攻撃に転じようかと目黒は思ったが、大凶魔のメンバーはまるで彫像のように顔も体も微動だにせず、火室を、そして龍堂学園のメンバーを見据えていた。

 そして目黒の皮膚を、毛を、魂を逆なでする危険な空気。

 目黒は爆発するように咆吼を奏でる。


『気をつけろぉー! こいつ何かおっぱじめるぞぉー!』 


 顔を上げた火室の、妖しく歪む顔と目と唇。

”ボンッ!”

 火室の足下が氷の破片とともに爆発し、その姿が一瞬消える。

はえぇー!」

 超高速でコート上を滑る火室。

 その顔は中二病をこじらせた高校生ではなく、獲物を狩る一匹の野獣であった。

 そして火室が通り過ぎた残像から放たれる【氷の槍】!

 それを【対魔防壁】で防ぐ甲斐。

 さらに火室は超高速で腕を、体をジャンプしながら何回も回転させ、時には前方、後方宙返りをしながら【氷の槍】を放つ!


「カーブ!? シュート!?」

 回転する腕や体、そして宙返りしながら放たれた【氷の槍】は、テニスのサーブ、野球のピッチャーが投げる変化球のようにの軌跡を描きながら龍堂学園メンバーを襲う。

 さらに腕、体の回転をともなって放たれた【氷の槍】は、より高速で空間を貫き、今まで五本の【氷の槍】を防いだ【対魔城壁】でさえも、四本、三本直撃しただけで破壊されるようになった。


 大凶魔學院副キャプテンの美月が自動人形(オートマタ)なら、今の火室は獲物に向かってひたすら【氷の槍】を撃つ狩人。

 そこには一切の情はなく、殺らなければ自分が殺られる、ただ相手を絶命させることを目的とした攻撃。

 それでも甲斐は神速で展開する【対魔防壁】、【対魔城壁】によって、縦横無尽に放たれる【氷の槍】をすべて防ぎきる。


 しかし、火室の攻撃はさらに龍堂学園を苦しめた。

 鳥居が目をこすりながら

「なんだこれは……きり?」

 白鳥が「そうか! 【氷の槍】が砕けることによってコート上に水蒸気が!」

 目黒が「これじゃあどこから飛んでくるかわからねえぜ! 大凶魔の連中が余裕(よゆう)綽々(しゃくしゃく)だったのはこれのせいか?」   

 霧の中から突然襲ってくる【氷の槍】。

 わずかに反応が遅れながらも、防壁を展開して、甲斐は何とか防ぎきる。


 目黒が「こうなったらコートのかどに移動しようぜ!」

 白鳥が「いけません! むしろ待ち伏せされて串刺しにされます」

 鳥居が「くそっ! こうも湿気(しけ)ってちゃ、白鳥の【炎の鳥】やあたしの【鉄火巻き】は効果が薄いし、他の術も……」

 このままやられるのは時間の問題かと、メンバーの中にあきらめの空気が流れる。

 それでもなお、甲斐は一人で【氷の槍】を防ぎきっていた。


 そこへ金剛が

「稲津さん、さっき……するって言っていたよね?」

「えっ!? えぇ、でもあれは半分冗談で……金剛さんまさか!?」

「うん、いい具合に”雲”が出来てきたし!」

「どうした真理! 何かいい手が浮かんだのか!?」

 【対魔防壁】、【対魔城壁】で護られながら、甲斐の背中で会議をする五人。


 白鳥が「そ、そんなことが! 理屈では可能ですが、いや、確かにそれしか手がないかも」

 鳥居が「でもこっちも動けなくなって、下手したら会長も」

 目黒が「でもやるしかねぇ! それに、この攻撃で唯一”動ける”のは俺だけだかんな」

 稲津が「武雄のその点”だけ”については、私が保証します。毎日のように浴びて”耐性”がついていますから。あと、会長には事後承諾ということで……」


 目黒が霧の中を注視し、稲津がスカートのすそに手を置き、目黒の合図を待つ。

 そして後の三人は己の体と魂を踏ん張らせ、来たる時に備える。

 霧の中を高速で動く火室と、その指先から形成される【氷の槍】のタイミング。

 突如吠える目黒!

「真理ぃ! いっけぇー!」

 目黒の咆吼に、稲津はすぐさまスカートをまくり上げ、ガーターベルトに刺さったペンライトをつかむと、高々と掲げ叫ぶ。


『【カミナリ雲(仮名)】!』


”なにぃ!”と大凶魔のメンバー、観客、そして甲斐さえも一瞬動きを止める。

 そしてペンライトから放たれる、と言うよりデタラメに飛び散る光の糸。

 霧という名の”雲”を通じて稲津を除く龍堂学園のメンバーに光の糸がまとわりつき、””くっ!””きゃっ!””あぁ!””うおぉ!”最後に甲斐が”えぇ!?”と悲鳴を上げる

 しかし、その光の糸は、新たな獲物を探すように、より水分が多く、より尖っているモノへと雲の中をいずりまわり、瞬時に火室の指先から生える十本の【氷の槍】へと収束していった!


『ぐああぁぁぁぁ!』

 【氷の槍】から指先、そして体全体が光の糸に包まれる火室。

 その姿はまるではりつけになったように、腕を、脚を大の字に伸ばしていた。

”バキン!”バッキン!””ビシッ!””パリーン!”

 指先に形成された十本の【氷の槍】はカミナリをまとい、一本、また一本と破壊され、そのすべてが破壊されると 

『うおおぉぉぉ!』

 目黒は足下を爆発させ、己の体ごと弾丸に見立て、一気に氷室に向かって突進していった。

「今度こそ逃がしゃしねぇぜ!」

 目黒は拳に力を溜め、火室の体を射程に収めようと一歩、一歩と体を跳ばす!


 しかし、光の糸が消えた火室の顔は、むしろ勝利を確信していた。

 それにいち早く気づいた白鳥。

(あの顔は? 何か奥の手でも? ……手!)

 火室の手がゆっくりと握られていくさまが、白鳥の目に映る。

 既視感を感じた、いや、自分もあの手の動きをする……いつ? どこで? なんの為に!


『【元素結合(げんそけつごう)】!』


 約一年後、龍一の目の前でタキシードを【元素解縛(かいばく)】で分解し、【元素結合】によって制服を形成した、あの手の動き。  

 むろん、この時の白鳥は一年後にそんなことをするとは全く思っていなかったが、目黒と出会った頃に【元素結合】と【元素解縛】を何回もやらされた事は覚えていた。


『【白銀の精霊よ! 我の元へと集え】!』


 ”がしっ!”と握られた二つの拳によって、龍堂学園のコート上を満たしていた霧は瞬時に晴れ渡り! 甲斐、白鳥、鳥居、金剛、そして稲津の頭上に、十本の【氷の槍】が形成される!  

「なにっ!」

 振り向いた目黒は、地を削るように脚を前に突き出し己の体を止め、

『よけろー!』

 叫びながら今度は味方へと体を跳ばした。


『【天から放たれる罰の槍よ! 愚かなる異端の俗物共を、貫けええぇぇぇ!】』


 勢いよく振り下ろされた二本の腕の動きに合わせ、十本の【氷の槍】は龍堂学園メンバーに降り注いだ。

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