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マギカ・バディ ―魔術とカバディが融合した、究極のノベルスポーツー   作者: 宇枝一夫
第一部 第三章 VS 大凶魔學院 前半戦
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鉄火巻き

「おい! 戻れ脳筋! シフトを崩したら会長が【対魔防壁】を唱えにくくなる!」  

 鳥居が目黒の背中に向かって叫ぶも、目黒の体は止まらなかった。


「あらあら、早速お猿さんが飛び出してきましたか。最初の生け贄をと言いたいところですが、あいにく貴方達の猿芝居には付き合っていられません」

 美月は攻撃のペースを乱すことなく、四人に向かって【風の刃】を放ち続ける。


「うおぉ!」

「【対魔防壁】!」

 目黒の眼前に迫った【風の刃】に向けて、甲斐が【対魔防壁】の盾を展開する。

”パキィー!”

 【風の刃】と【対魔防壁】が目黒の直前でぶつかり合い、破壊の光と音を奏でながら消滅した。


「すまねぇ会長!」

 結局、目黒はその場で足止めされる。


「残念ですね。強引な突撃によって私の攻撃ペースを乱すおつもりが、かえってお宅のディフェンダーに負担をいる結果になって……」

 もはや美月は裏切り者の甲斐に向かっては名前ではなく、マギカ・バディにおける一ポジションとして呼んでいた。


 そんな美月の耳に届けられる、ある呪文。

『……タツアタタツアタ、シガヒシガ~!』

「またあのカミナリ女か!?」

 しかし、美月が稲津に目を向けると、他のメンバーと同じように甲斐の【対魔防壁】で守られながら一歩動くどころか、術を唱える為の腕の振りや体の動き、詠唱すらままならなかった。


「なに! では誰が!?」

 いつの間にかデッドエンドラインから美月に近づいていた金剛。

 手持ちの魔術杖を両手で振りまわしながら詠唱が唱え終わると、美月に向かって杖の先端を向ける。


「金剛珠洲! ここに推参!」

(しまっ! 【風の刃】が唱え終わった今、ここで術を放たれたら……)

 緊張の汗が美月の白い体をなめ回す……が、


「へっへ! 一度やってみたかったんだぁ~!」

 緊張感のない声と舌を出す金剛に、美月を始め大凶魔學院のメンバー、そして観客はあっけにとられる。

 命のやりとりと言ってもおかしくないこのマギカ・バディにおいて、どうしてこんなふざけたことができるのか! と……。


 倉の激昂(げきこう)が今やっとわかった美月は、目を見開き全身の毛を逆立てる。

「てんめぇ~! ざっけんじゃねぇ~!」

 激昂ゆえか、これが本性なのか、美月はその容姿にもっともふさわしくない言葉を唾液とともに吐き出しながら、四肢に纏った【風の刃】を金剛に向けて放つ。


 金剛もほぼ同時に

「こりゃまた失礼いたしました!」

 と“シルクハット”を脱ぎながら美月に向かってお辞儀をする。

 そこへ金剛の体を”X”字に切り刻もうと、金剛の左右斜め上下に迫る四つの【風の刃】。


『さぁ我が愛しき炎の鳥よ。うるわしき美月様へご挨拶をなさい!』


 美月の左耳に聞こえる妖しい声。

 ”魔女帽子”をかぶっている白いタキシード姿の男の口から、術の詠唱がつむぎ出されると


”ポ~~ン!”


と、金剛が手に持つ白いシルクハットから白い煙とともに一羽の炎の鳥が飛び立つ!

「なにぃ!」

 一直線に美月の肉体へと向かう炎の鳥。


「え!? あれ!?」

「魔女コスプレの女の子、いつからシルクハットをかぶっていたんだ?」

「ちょ! なんでタキシードの奴が、魔女帽子をかぶっているんだ?」

 男子学生A&Bだけでなく、観客全員、そして美月さえも白鳥の頭の上には紫の魔女帽子、そして、金剛の頭の上には白いシルクハットが乗っていることに“今になって”気がついた。


 四つの【風の刃】と一羽の炎の鳥は美月と金剛の間、金剛よりの地点ですれ違う。

『【対魔防壁】!』

 甲斐の詠唱によって、金剛の体の前に四つの【対魔防壁】が展開され、互いに衝突した後、破壊と光と音がサラウンドとなって競技場内に響き渡る。


 しかし、術を放った一瞬、無防備になった美月に迫る炎の鳥。

(たとえよけたところで、こいつは私を追尾してくるだろう。ならば!)

 少しでもダメージを減らそうと、わずかに四肢に纏った【風の刃】を炎の鳥に向かって放つ美月。 

 向こう側が透けて見える薄い【風の刃】を難なく蹴散らす炎の鳥を、美月は顔の前で腕をクロスさせ、直撃に備える。


”ドグォォ~ン!”


「もらったあ~!」

 その瞬間! 煙の中から美月に向かって放たれる目黒の右拳。

 美月はそれを素早くかわし、左手で目黒の右手首をとると右腕で挟み込み、拳の勢いを乗せたまま、一気に一本背負いに持ち込みながら目黒の股間へ向けて右脚を蹴り上げる。


「やべぇ!」

 慌てて目黒も右脚を蹴り上げ、わざと自分の体をジャンプさせ体をエビぞりにさせるが


「無駄ですわ。めた右腕は簡単には外れません。このまま肩から引っこ抜いてさしあげますわ」

「いいぜ。右腕一本なら安いモンだぜ」

(なに!?)

 一瞬のうちに状況を確認する美月。

(倉の時も確かこんなことを……後ろかぁ!?)


『【鉄火(てっか)ぁ! 巻き】ぃー!』


 巫女装束姿の鳥居の詠唱と、まるでコマを回すような御幣の振りによって、赤く燃える炎の竜巻が現れ、黒の下着で包まれた美月の臀部(でんぶ)に向かってひた走る!


(こいつ台貴知戦では、あたしと同じ風の術を使っていたのに!?)

 目黒を地面に叩きつけると、その勢いでジャンプし、己に迫る【鉄火巻き】から距離をとる。

『【風の刃】!』

 四肢から放たれる【風の刃】が【鉄火巻き】を切り刻んだ瞬間!


”ドグオォォ~ン!”

 風船のように膨らんだ炎の暴風が龍堂学園コートを包み込む。


「くぅっ! あ、あたしの【鉄火巻き】がぁ!」

 爆風を切り裂くように現れた美月の回し蹴りが、鳥居を襲う。

 鳥居はすぐさま倒れないよう腰を落とし、美月の回し蹴りを両腕でガードするも、

「ぐはぁ!」

体と両足はコート上を滑っていく。


「こんのぉ! お返し……しまった! 場外!」

 足下を見ながら叫ぶ鳥居を尻目に、美月は悠々とサイドラインを超えていった。


『大凶魔學院、レイド成功! 大凶魔學院2 龍堂学園0』

  

『うおおぉぉぉーー!』

 大凶魔學院、そして一般観客席から歓声が上がる。

 汗もかかずゆっくりと味方コートへ戻る美月。

 メンバーが笑顔で出迎えるも、美月の顔は険しかった。


「夜長様、そして皆様。龍堂学園について一つ確信できたことがございます」

 夜長以外は軽く目を丸くし、美月の次の言葉を待つ。

「私たちが今戦っているチームを、台貴知高校に辛勝した龍堂学園と思わないでくださいませ。むしろあの試合は我らの目をあざむくために仕組まれた試合と見ていいでしょう」


 再び、夜長以外の眼がより丸くなる。

 いくら台貴知高校が弱小とはいえ、あらゆるスポーツ、そしてマギカ。バディにおいても、試合結果を自在に操れるのは不可能と断言しても、異を唱える者はいないだろう。


「結成されて日の浅いチームとはいえ、”あの”龍造先生の息がかかっています。“くせ者”具合は一癖や二癖で終わりではなく、まだ何か隠していると私は感じました」

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