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屈辱

「むろんこの競技に出場する人間は全くの素人ではない。魔術や私らみたいに別の術に長けた者達ばかりだ。プロレスやボクシングに例えると、ルールを知らない、トレーニングもしていないズブの素人が、いきなりリングに上がることができないのと同じだ」

 若干厳しい口調で鳥居は龍一に説明するが、すぐさま力を抜いた。


「話を戻すと昨年、生徒会の六人でこの競技に出場したんだ。魔術や各術に属する高校、及びその生徒にとっては、この競技は知名度もステータスも、いわば高校野球以上と言ってもいい。今現在、高位の魔法師、魔法遣い、それに各術師のお偉い様は、この競技で優秀な成績を収めた人間が大勢いるんだ」


「生徒会の皆さんはその競技に出場したんですね。一回戦はどうなったんですか?」

「一回戦の相手は、台貴知高校。彼らは進学校ゆえ、他校から見ればいわゆる弱小校でな。それでも組み合わせで新設校の私たちを見て、”初の一回戦突破!”と意気込んでいた。何しろ私たちは急ごしらえのチームの為、試合前にもかかわらず、味方同士で作戦から、レイダーの順番を巡って衝突していたからな」

 鳥居は苦笑しながら去年の試合のことを思い出していた。


「結果は私たちが勝利した。それでも辛勝という言葉すら使うのもはばかれるぐらいだった。台貴知高校には悪いがこれも勝負の世界だ。龍造先生も応援に駆けつけてくれてな。勝った私たちを見て、私たち以上にはしゃいでたな。そんな龍造先生の姿を見て私たちも、ただ純粋にうれしかった」

 鳥居も金剛も、あの頃の喜びと興奮を思い浮かべてるようだった。


「では、二回戦の相手はどこだったんですか?」

 龍一もつられて興奮してか、つい前のめりに尋ねるが、”とうとう来てしまったか”と、鳥居の顔が若干曇る。


「二回戦の相手は、君も聞いたことあるだろう? 大凶魔學院だ」

「え? 大凶魔って甲子園の常連校の、あの大凶魔ですか? 甲子園だけじゃなく、インターハイや冬の高校サッカーの全国大会でも何回も優勝している……」


「そうだ、高校野球からフィギュアスケートまで、およそ”競技”と名のつくモノに大凶魔が絡んでいないモノはない。それはマギカ・バディも同じだ。さっき話した魔術や各術師のお偉い様達も大凶魔の出身がいてな、《大凶魔派》と言う、魔術や術の世界では最大級の勢力があるんだ」


「それで……結果は、どうなったんですか?」

 いくら魔術の知らない龍一でも、天下の大凶魔と戦えばどうなるかわかる。

 尋ねるのもはばかられたが、なぜか”庵堂龍造の後継者”として聞かなければならない使命感みたいなモノが、今の龍一の心の中に沸き上がっていた。


「途中まではなんとか互角でな。しかし”結果だけ”を見れば完敗。しかし、むしろ勝った大凶魔の方が忸怩じくじたる想いを思いっきり顔に表していたがな」

「え? どうしてですか?」


「私たちと戦った大凶魔の生徒はいわば三軍、同じ一年生でな。それでも素質を見いだされ、将来のレギュラー候補として試合経験を積ませる為に出場させたみたいだが……」

 紙コップのお茶を飲み干した鳥居は、軽く息を吐き出す。


「風の噂で聞いたんだが、大凶魔にとって、うちらとの試合は完封が合格点、トリプルスコア以上は及第点、ダブルは論外。そして私たちはぎりぎりダブルスコアを阻止したんだ」


「それは……すごいじゃないですか! 高校野球の地区予選でも、大凶魔は準決勝ですらコールド勝ちするぐらいですから!」

 思わぬ試合結果に、龍一の声が高ぶった。

 つられて鳥居の表情も若干柔らかくなる。


「ああ、正に僥倖(ぎょうこう)だった。白鳥が相打ち覚悟で相手の副キャプテンをダウンさせ、我々のコートに戻る途中、大凶魔のキャプテンの魔術をくらってしまったが、何とか自軍のコートにたどり着くことが出来た。この一点でダブルスコアを阻止できたんだ。もっとも白鳥も、そのまま崩れるようにダウンして退場しまったんだが……」

 つい昨日のような出来事を、鳥居は若干興奮しながら龍一に実況していた。


「そして最後には両校とも、コートにはキャプテンだけが立っていたんだ」

「一対一ですか? そういう場合はどうなるんですか?」

 龍一は鼻息を荒くして、食い入るように鳥居に尋ねた


「マギカ・バディのルールではお互い最後の一人になった時、サドンデスで一対一の魔術勝負、いわば決闘が行われる。下馬評を覆し、例えメンバーが三軍の一年生だとしても、天下の大凶魔學院を苦しめたんだ。負けているにもかかわらず、負傷退場を宣告された私たち五人の顔からは笑みがこぼれていた……」

「それで会長さんはそのサドンデスには勝ったんですか? 負けたから生徒会が分裂したってわけではないですよね?」


「ああ、ぼろぼろになり、立つ力すらない私たち五人は、それでもコートの外で声を枯らして会長を応援した。実際、会長がダウンして負けても、むしろそれが当たり前。しかし、あの大凶魔を一年生相手とはいえ、最後の一人に追い込んだだけでも偉業だ。運良く相打ちに持ち込んで僅差で会長が戦闘不能をと宣告されても、大凶魔を全滅させたとして龍堂学園の名に箔がつく。いわゆる

”試合に負けて勝負に勝った”

ってヤツだな」

 そして鳥居は軽く息を吸い、溜まった瘴気のような息を吐き出した。


『しかし、サドンデスが始まる直前、会長はギブアップ、つまり降参したんだ』


「え! そ……そんな!」

「口で言ってもピンとこないだろう。まだ時間はあるな。ビデオを見せながら説明しよう」

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