大凶魔學院メンバー 前編
――昨年の初夏。台貴知高校戦を辛勝した龍堂学園メンバーは対大凶魔戦に向けて、生徒会室でミーティングを行う――。
甲斐は中等部時代、かつての戦友であった大凶魔學院の一年メンバーについて、一回戦の試合のビデオを見せながら皆に説明をする。
モニターの画面には、ゲートから入場する大凶魔學院のメンバーが映し出された。
「おや? スタメンは最大七人、交代メンバーもあわせれば最大十四人まで入場できるのに、たった六人しかいないとは? 大凶魔學院のマギカ・バディ部は、選ばれし魔や術の者が一学年で数十人はいると聞きましたが、会長これは?」
台貴知高校戦において、メンバー数を間違えて自爆した白鳥が、今度は間違えないようにと甲斐に確認する。
「私の推測だけど……」
言葉が詰まった甲斐だが、意を決して皆に告げた。
「おそらく、六人しかいない私たち龍堂学園をターゲットにしているわ。だって、”裏切り者”の私がいるから……。だからあえて六人で試合を挑むとみているわ」
「へっ! 俺達と同じ土俵で戦うってのか!? よく言えば正々堂々だが、悪く言えばなめられているってことじゃねぇか! そんな思い上がりなんざ、この俺様がぶっつぶしてやるぜ!」
甲斐の重い告白を吹き飛ばすかのように、目黒の威勢の良さは皆の心を軽くした。
大凶魔學院チーム先頭を歩くのは、甲斐とは対照的に右の腰までスリットの入った、黒のナイトドレスと長い黒髪に身を包んだ、キャプテンである一年女子、《夜長》。
「夜長さんは代々、闇の魔術を使う名門夜長家の令嬢。大凶魔派とは古くからつきあいがあるわ。その力は一年の中でもトップクラスね」
「へっ! お嬢様って訳か。確かにお高くとまってそうなツラだぜ!」
目黒が鼻で笑うが、それを稲津がたしなめる。
「武雄! 口を慎みなさい! 今は敵味方に分かれているけど、中等部時代は会長と背中合わせに戦った戦友よ。それがわからないあんたではないでしょう!」
「あ、そうか……。すまねぇな会長。あやまるわ』
目黒という暴れ馬。その手綱を握る稲津という想像図に、あとの四人は心の中で苦笑した。
「大丈夫よ稲津さん。夜長さんはどうか知らないけど、私も一度は夜長さんと全力でぶつかりたいと思っていたから……」
甲斐は微笑むが、その顔にはわずかながらの影が落ちていた。
気を取り直し、甲斐は説明を続ける。
夜長の後ろを歩くのはメンバーの中で一番背の低い、ゴシックメイド姿で身を包み、頭にカチューシャを付けた、副キャプテンで一年女子の《美月》。
「美月さんは風の魔術を操り、代々夜長家に仕えている美月家の娘さん。小さい頃から夜長家のメイドとして身の回りのお世話をしているわ」
「なるほど。つまり二人は阿吽、ツーカー、息はぴったりってことですか。レイダーの時はともかく、アンティ時に組まれて攻撃されてはやっかいですね」
「ええ、そうよ。レイダーはいかに二人を攪乱させるかが勝負になるわね」
白鳥の意見に補足をする甲斐であったが、その心中は……
(こういうときは冷静に分析するのに、なんで白鳥君は練習や試合の時はああやって”おちゃらける”のかしら?)
美月の後ろに続くのは、黒の胴着に白帯を締めた一年男子、《倉》。
「へっ! ストライカーか。みてな! 五秒で沈めてやるぜ!」
目黒が己の手のひらに拳をたたきつけて、これ見よがしに格好つけるが誰も相手にせず、甲斐もまた、かまわず説明する。
「っておい! スルーかよ!」
「武雄、威勢のいい言葉は試合で存分に叫んでね。失礼しました会長、続きをどうぞ」
再び目黒の手綱を取る稲津の姿に、あとの四人の顔には笑いが込み上げる。
「く、倉君は魔術の家系ではないの。大凶魔學院はマギカ・バディだけではなく、あらゆるスポーツ、武道の頂点に立っているわ。それにあこがれて一般入試で中等部に入学したんだけど、毎日のように道場破りみたいな形で武道系の部活に殴り込みをかけていたのよ」
「へっへっ! ストライカーたる者、それくらいは”たしなみ”だぜ!」
「もちろん勝てるわけないけど、噂が広がったのね。それを夜長さんがマギカ・バディ部にスカウトしたの。
『所詮武道は肉体のみの戦いよ。マギカ・バディ部に入れば魔術と格闘を兼ね備えた、最強の敵と戦わせてあげるわ』
とね。魔因子も持っていたから、すぐさま頭角を表したわ」
倉の姿に疑問を感じた鳥居が、甲斐に質問する。
「会長、黒の胴着に何で白帯なんだ? 普通、白の胴着に黒帯だろ? 格闘で厄魔を祓う術師でも、あんな格好の流派は思い当たらないが?」
「黒の胴着なのは夜長さんに忠誠を誓っているからよ。夜長さんが闇の魔術を使う魔術遣いなら、自分は闇の格闘家だってね。白帯なのは他の武道に対する牽制ね。
『いくら黒帯や段を持っていようとも、白帯の自分に負ければその帯や段はただの飾りだ!』
が口癖だったわ」
”ヒュ~ゥ!”と目黒が口笛を吹く。
倉の後ろを歩くのは白地に青の紋様が描かれた魔術ローブを着た一年男子、《火室》。
「火室君は姓は”火”だけども、氷の魔術を使うわ。元々火室家は名前の通り火の魔術の家系なんだけれども、お兄さんが火室家の跡目を継いだから氷の魔術に転身したって聞いたわね」
「……なるほど、先の三人と比べて一見普通のマギカに見えますが、属性の違う魔術を新たに習得するなんて、並大抵の《魔体》、そして才能ではありませんね」
甲斐の説明を聞いた白鳥の顔が険しくなる。
――《魔体》とは魔術を構成する為に形成された肉体のことである。
魔術遣い、そして術遣いは魔因子があるからすぐさま術が遣えるわけではない。
スポーツアスリートが競技や記録の為に己の肉体を鍛えるのと同じように、魔術遣い、術遣いは己が習得する術の為に、魔や術の体を鍛錬する必要がある。
最も中には生まれながらにして恵まれた魔体を持つ魔術遣い、術遣いも存在しており、彼らの多くは後世に名を残す魔法師、術師となるのである――。




