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分裂

「六人? 学校を救う? あの~、ますます意味わかんないんですけど……」

 鳥居の言葉に、龍一は今すぐにでも腰を浮かして退室しようと身構えていた。


「私の言葉が足らないのは申し訳ないと思っている。もっとも一気に話したところで、入学したての君の頭がパンクしそうになるからな。小出しにして話すことについては勘弁して欲しい。それにこれは君が庵堂龍造の後継者としてぜひ知って欲しいことなんだ」


 鳥居は今にも頭を下げそうな雰囲気を顔に表していた。

 それを感じ取った龍一は軽く腰を上げ、椅子に座り直した。


「さっき、救われるっておっしゃった六人って……もしかして生徒会長や稲津さん? そしてマジュツ部の方達? それに……」


「そうだ。私たちを含めて六人。まずはここから話そうか。君は昨日、生徒会室に連行された時、何か気がつかなかったか?」

「生徒会室ですか? 高校の生徒会室なんて初めてですから……」


「中学との生徒会と比べてもよい。生徒会室には”何人”いた?」

「え? 会長と、稲津さんだけ……って、え? もしかして?」


「そうだ。今現在、生徒会は”会長と会計”しかいないんだ」

 重大なことのように鳥居は話したが、龍一の耳にはそれがわからなかった。


「……もしかして六人って、皆さん生徒会だったとか?」

「理解が早くて助かる。私たちは去年まで生徒会の役員だったんだ。新設校だから選挙は行わず立候補……というか、ほとんど龍造先生が決めたことだがな」

 鳥居はまるで遠い過去の出来事を語るように、懐かしそうに語り始めた。


「会長は甲斐、学業、容姿はもとより性格や心配りは始業式の挨拶とか見ればわかるだろう。副会長は……信じられないかもしれないが白鳥だ」

 なぜか龍一の頭には全裸に近い白鳥の体が思い浮かんだが、慌てて、昨日見た甲斐の、制服の上からでもわかる女性の部分で妄想の上書きした。


「白鳥は、男子生徒とのバランスを考えて決まった。若干ルックスも考慮に入れたみたいだがな。女子って言うのは不思議な生き物でな、例え立場が上でも、同年代の女子からあれこれ言われれば反発するが、男子から言われれば、渋々ながらも言うことを聞くんだ。実際、いろいろと問題が起こった時、調停役として優秀だった」


「だから、どこかしら丁寧な言葉遣いだったんですね」

 鳥居は軽くうなずくと、横の金剛を一瞥してから再び龍一の方へと顔を向けた。


「書記は金剛。黙々と記録だけしていればいいと考えていたが、相談に着た生徒に占いと言う形で助言を与えたら当たると評判になり、一時は生徒会室の前に行列が出来てな」

 その金剛がつぎ足してくれたお茶を鳥居は口に含んだ。


「会計は稲津。これは秘書のような見た目そのものだな。冷静な判断、公平な予算配分と多少の融通は利いたから、各部からは特に文句も出なかった」

 龍一は冷徹な声と態度の稲津を思い出した。


「庶務は目黒と私だ。目黒は脳筋馬鹿だが、いわゆるムードメーカーでな。あいつが馬鹿騒ぎするとなぜか皆が安心できた。男子運動部にもすすんで助っ人に参加したし、女子運動部の部長や、あたし達にもズケズケ文句を言ったから、数が少なく立場が弱い男子生徒からは、同級生なのに兄貴分みたいに慕われていた」

 軽く息を吐き出し、少しテレと苦笑が混じった顔で自分のことを語った。


「そして私も正論を淡々と話す、いわば”憎まれ役”として生徒達から煙たがられた。風紀委員は生徒会の管轄だが、年齢が上の私が担当になり風紀委員をとりまとめ、バラバラな新設校の生徒の心を、校則を楯に正論を言う私に対する憎しみによって一致団結させた。……って自分で言うと何か恥ずかしいな。そしてある出来事が今の、空中分解的な状況を産んでしまったのだ」


「出来事? ……魔術になにか関係があるとか?」

「ああ、魔術で行う競技だ。我々生徒会は、その競技のチームだったんだ」


「競技……? 六人でする競技なんて……? なんて名前ですか?」

『その競技の名は……《マギカ・バディ》』


「マギカ? ……バディ?」

 初めて聞く名前に、龍一の顔が若干固まった。


「ああ、訳すると『悪の魔法使い』と言えばいいのかな? 略して《マギディ》とも呼ぶな。君はカバディという競技を知っているか?」


「インド発祥の鬼ごっこ? って、ひい爺ちゃんが言ってました。ひい爺ちゃんがカバディ連盟の役員をやっていたらしく、子供の頃、連れられて見に行った覚えがあります」

 龍一は鳥居の頭の上に目線をやり、遠い過去の記憶を掘り起こしていた。


「確か、ドッジボールのようなコートで敵、味方に分かれて、鬼である《レイダー》が、『カバディ! カバディ!』って叫びながら相手のコートに入って、敵にタッチして戻ってくれば味方チームに点が入るんですよね。息継ぎなしでカバディって叫ぶから、結構きつい競技みたいです」

 龍一は顔を鳥居の方へと戻し、記憶の糸をたぐり寄せていた。


「逆に、防御側の《アンティ》は、タッチした鬼をタックルとかして倒したり、相手コートに戻さなければ、例え鬼であるレイダーが何人タッチしたとしても点は入らないとか……。ルールは何となくでしかわかりません。そういえばマジュツ部の方も、魔術の知名度をカバディに例えていました」


「そうか、なら話が早い。細かいルールや歴史を説明すると長くなるが、いわば魔術とカバディを合体させた魔術競技と言ってもいい」

「そんな競技があったなんて……ひい爺ちゃんはなにも話してはくれませんでした」


「むろん、違う所はいろいろあるが、……例えば、カバディはレイダー一人がずっと『カバディ』と唱えるが、マギカ・バディではレイダー以外の味方が【マギディ】を唱える。あとコートの大きさも、そうだな……だいたいサッカーのフィールドぐらいの大きさだ。鬼であるレイダーは、タッチももちろんするが、代わりに術を敵にぶっ放してダウンさせてもいいんだ」


「え! そんなことしたら……。下手したら死んじゃうんじゃ?」

「例え高校野球でも、アマチュアのボクシングでも、当たり所が悪ければ取り返しのつかないことになる。それと同じだ」

「……そういうものですか」

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