表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
向宇市アナムネーシス  作者: 金子ふみよ
第七章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/20

政福氏の高揚

 いくつものモニターが並び、キーボードやボタンやレバーや、つまりは操作管理するための部屋らしい。政福氏はその一席で足を組んでモニターを見ながらほくそ笑んでいた。暗くしている部屋でモニターの灯りだけが彼の愉快を照らしている。

「素晴らしい!」

 一度勢いよく立ち上がると、狂喜乱舞するくらいの絶叫は発狂の様子だった。

「日野明は固体に執着せずに液体を弾にし、アナムネに装填することができるようになった。それはすなわち多様性の広がり。畝摘文は医療術を精錬させた、すなわち緻密さ。清瀬阿弥はUMAとUFOと妖怪のアナムネを顕現させた、すなわち不可能性の可逆。そして、仮和の子供がやってくれたじゃないか! なんだ、あの絶叫は! 強い願望どころか、あれはもう切望じゃないか。それくらいだからこそ顕現したんだろうな。試行してみるものだな。それよか、ヒーローだとよ。現実に波及する惑うことなき非現実性。

それらが発現することの意義! この貴廂の天蓋の元にアナムネーシスが現わすこと! 不可避の可能態! これで現実になる! これまでの失敗もすべて可塑性を帯びることになる! すべての労苦が報われる! さあ、これからだ! そのためのプラグラムをこれからインストールするぞ」

 政福氏はとり憑かれたように、あるいは異常なほどの興奮状態となって歓喜したかと思うと、白衣のポケットから特殊なデバイスを取り出してモニターと接続しようとした。

その時である。ドアが開いた。その音がしても彼は振り返りもしなかった。誰が来たかくらい彼には分かっていたのかもしれない。

「なあ、ようやくだ。ようやくアナムネーシスがここから発動する。これでようやく私の願いが叶えられる」

 絞り出した感情の波が引いて政福氏は、席の後ろで止まった足音、その気配に、いや気配の無さに彼は不審げになり振り返った。

「な、なぜ、君がいる。君は……」

 言った瞬間、何かを悟ったかのような顔つきになった。が、もう政福氏が意図を遂げることはできなくなっていた。清瀬阿弥は平然とした様子で、いやそれは単に事実を客観的に傍観する視線となっていた。その眼は人の目ではなく、カメラのズームを合わせる動きがあった。指先から伸びていた細い針は収納され、爪がまさに蓋をして、人間の指そのものにしか見えない形状に戻った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ