政福氏の高揚
いくつものモニターが並び、キーボードやボタンやレバーや、つまりは操作管理するための部屋らしい。政福氏はその一席で足を組んでモニターを見ながらほくそ笑んでいた。暗くしている部屋でモニターの灯りだけが彼の愉快を照らしている。
「素晴らしい!」
一度勢いよく立ち上がると、狂喜乱舞するくらいの絶叫は発狂の様子だった。
「日野明は固体に執着せずに液体を弾にし、アナムネに装填することができるようになった。それはすなわち多様性の広がり。畝摘文は医療術を精錬させた、すなわち緻密さ。清瀬阿弥はUMAとUFOと妖怪のアナムネを顕現させた、すなわち不可能性の可逆。そして、仮和の子供がやってくれたじゃないか! なんだ、あの絶叫は! 強い願望どころか、あれはもう切望じゃないか。それくらいだからこそ顕現したんだろうな。試行してみるものだな。それよか、ヒーローだとよ。現実に波及する惑うことなき非現実性。
それらが発現することの意義! この貴廂の天蓋の元にアナムネーシスが現わすこと! 不可避の可能態! これで現実になる! これまでの失敗もすべて可塑性を帯びることになる! すべての労苦が報われる! さあ、これからだ! そのためのプラグラムをこれからインストールするぞ」
政福氏はとり憑かれたように、あるいは異常なほどの興奮状態となって歓喜したかと思うと、白衣のポケットから特殊なデバイスを取り出してモニターと接続しようとした。
その時である。ドアが開いた。その音がしても彼は振り返りもしなかった。誰が来たかくらい彼には分かっていたのかもしれない。
「なあ、ようやくだ。ようやくアナムネーシスがここから発動する。これでようやく私の願いが叶えられる」
絞り出した感情の波が引いて政福氏は、席の後ろで止まった足音、その気配に、いや気配の無さに彼は不審げになり振り返った。
「な、なぜ、君がいる。君は……」
言った瞬間、何かを悟ったかのような顔つきになった。が、もう政福氏が意図を遂げることはできなくなっていた。清瀬阿弥は平然とした様子で、いやそれは単に事実を客観的に傍観する視線となっていた。その眼は人の目ではなく、カメラのズームを合わせる動きがあった。指先から伸びていた細い針は収納され、爪がまさに蓋をして、人間の指そのものにしか見えない形状に戻った。




