エルフの里
エルフの里へと案内された。
人間がエルフの里に入るには、エルフの大人に案内される必要があるらしい。ちなみにエルフの大人達も金髪金眼だった。
俺は扉をくぐると、浮遊感を一瞬感じて中に入った。
「違和感はなかったか?」
エルフの大人が俺に聞く。
俺は感じたそのままを話した。
「浮遊感を感じました」
「我々抜きで人間が門をくぐれば、上空から落ちるようになっているからな」
「なるほど。それは恐ろしいですね」
そうだろうと笑うエルフの大人達。
里に入ると門番に何者だと誰何される。
エルフの大人達が恩人だと答えた。
里を歩いているとエルフ達が俺を警戒する。
俺はまずはイチゴ摘みをしていた二人のエルフの子ども達の家へと案内してもらった。
「何かしでかさないか確認する為に、私達も同行させてもらうぞ」
エルフの大人三人が同行した。
そこには衰弱したエルフの女性がベッドに横になっている。
「お母さん、イチゴを摘んできたよ。お父さんが帰ってきたら皆で食べようね」
子ども達のお母さんは涙を流す。
「ありがとうね、フォーコン、シュエット」
俺は子ども達のおかあさんに話しかけた。
「ちょっと容態を見せてもらっても良いですか?」
「に、人間の子?」
「私達を人間の盗賊から助けてくれたんだよ」
「そうなのかい……それは、ありがとうございます」
俺は子ども達のお母さんに魔法を使った。
「アナリーズ」
「おい勝手なことはするな」
エルフの大人三人が慌てて止めようとする。
「肺が悪いみたいですね」
俺は子ども達のお母さんの胸に手をかざした。
「ハイヒール」
子ども達のお母さんの呼吸が安定する。
「あ……苦しく……ない?」
ゆっくりと身体を起こす子ども達のお母さん。
子ども達はお母さんの顔色が良くなったのを見て抱きついた。
「おか~さん、お母さん!」
「お母さん、もう苦しくない?」
「うん……うん!苦しくないよ。もう苦しくない」
驚く大人のエルフ達。
「不治の病を……」
「治した……だと」
俺は不治の病と聞いてエルフの大人達に尋ねた。
「他に病気の方はいますか?」
「ああ……たくさんいる」
「案内してください。まずは病気を治療しましょう」
※※※
エルフのおばあさんが床に膝をついて俺の手を握り、お礼の言葉を繰り返す。
「ありがとうございます……ありがとうございます……」
娘さんの病気を治してからずっとこれだ。
エルフの大人達が俺に聞いた。
「君はハーフエルフかい?」
俺は答える。
「違います」
「それならなぜ、こんな魔法を?」
「簡単な回復魔法ですから。ピンポイントで病巣を見つけるのだけが難しいのです。病巣を見つける魔法は自分で作りました」
俺はエルフの里の病人全員の治療をした後、エルフの大人達に里長の家へと連れていかれた。
※※※
「ただいま帰りました」
「お邪魔します」
「おお、これはこれは。救世主様」
「救世主とは大袈裟ですね」
「いやいや、あなたは里人達の不治の病を治して下さった。救世主と呼んで差し支えなければ、呼ばせて頂きたい」
「俺の名前はスピラル・トレートル・アンビールと言います。出来たらスピラルとお呼びください」
里長はうんうんと頷く。
「分かりました。スピラル殿」
俺はお茶を勧められた。里長に尋ねることがあったので、これ幸いと席に着いた。
「いやーこの度は村の危機を回避して下さって助かりました」
「僕は大したことはしていません」
「一つだけ尋ねたいのですが、森で何をしていたのです?」
「俺はエルフの里を目指していました。灰燼の魔法使いのことについて尋ねる為に」
「灰燼の魔法使い様のことですか?」
「はい。なぜ灰燼の魔法使いは勇者召喚する国を滅ぼしていったのかを」
「なるほど。今は灰燼の魔法使い様がどこにいるのか分かりません故に、私の口から答えましょう」
里長はゆっくりとした口調で話し始めた。
「まずは灰燼の魔法使い様はハイエルフ様ですじゃ」
「ハイエルフ……様ですか?」
「そうとも。勇者召喚は大勢のマナを一つに集めて操り、大量のマナを消費する儀式ですじゃ。大気中のマナを異世界の勇者に与えることで、強力な勇者という存在をこの世界に顕現させるのですじゃ」
お茶を一口すする里長。
「大気中のマナは長い年月をかけてこの世界樹から大気中に染み出す。そして、雨と共にこの世界樹に戻って来るのじゃ。それを失ってしまうことを考えてみてくだされ」
俺の目をじっと見つめる里長。
「この世界樹が枯れてしまうんじゃ。世界樹が枯れたら大気に瘴気が溢れ出す。それだけは阻止せねばならん」
俺はうんうんと頷く。
「なるほど。ですが、灰燼の魔法使い様は一人で大気中のマナを操り、戦略級魔法を使って勇者召喚する大国を滅ぼしていったと聞きましたが」
「うむ、人間達の勇者召喚を妨害するには、大気のマナを使うことはやむを得なかったんじゃ。なにせ百人以上からなる人間の魔法使い達の魔力を無にしなければいけなかったんじゃからな。いくらハイエルフ様でも人間百人の魔力は持っとらんでな」
「それはそうですね」
「国を滅ぼしていったのは本当ですか?」
「いや、国を滅ぼすようなことはなかったと思うぞ。勇者召喚の儀さえ潰せればよかったんじゃからな」
「確かに……歴史的に国が滅んだという形跡はないですね」
「ああ、じゃから国を滅ぼしていったというのは迷信という奴じゃ」
俺は、その言葉を聞いた後、食事を勧められたので里長と食事をし、泊めてもらうこととなった。




