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オークキング

 俺と猫の精霊様が先へ進むと、違和感が生まれた。


「なんでしょう? この圧迫感は」


 俺が猫の精霊様に呟いた。


 そこには身の丈3メートルは超える一匹のオークキングがいた。


「オークキングですね」


「ええ。そうですね」


「知っておられたのですか?」


「はい。申し訳ありません、黙っていて」


「事情を聴いても?」


「私がここへ押し込めていたのです。あれは、確か二百年前の話です。突如として現れたあのオークキングは村人達を喰い荒らし、今猫獣人達の住む村を占拠してしまいました。私は、村を守る為に毒ガスの出るこの洞窟へ奴を閉じ込めました。ですが、奴はどういうわけか、毒ガスが効きませんでした。困った私は結界を張って奴をこの洞窟に留めました。アナタにこのオークキングが倒せますか?」


「大丈夫です。オークキングなら俺でも倒せます」


「自信があるのですね。それなら、お願いしてもいいですか?」


「はい。任せて下さい」


「結界を解きます。『リリース』」


 オークキングが咆哮してくる。普通の冒険者なら怯えて動けなくなるだろう。


「『シールド』」


 咆哮の後、オークキングに一瞬の隙が生まれた。俺はオークキングの拳を防ぐ為に盾を作った。


「『アイシクル』×300」


 地中から伸びた氷の柱達がオークキングを囲むように突き刺し伸びていく。オークキングの瞳から光が消えた。


「倒しました」


「あっという間でしたね」


「二百年も食事せず閉じ込められていて弱っていたのでしょうね。精霊様のおかげです」


「そうでしょうか?」


「そうですよ」


「ありがとうございます。おかげで、長年の課題が解決しました」


「ミスリル鉱石の採掘にはどちらにしても倒す必要があったのですから。お礼を言われることではありませんよ」


「いいえ、これで助けてあげられなかった二百年前の猫獣人達を供養することができます。本当に感謝しかありません」


 涙ぐむ猫の精霊様が深々とお辞儀をした。俺は困ってお辞儀を返す。客観的に見れば猫と五歳児がお辞儀をしあう姿はシュールなものに見えたことだろう。


 ※※※


 洞窟を出て村へと帰ってくる。猫の精霊様も一緒だ。


 村長が慌てて村の門へとやって来る。


「どこにおられたのです? 探しましたぞ!」


「ミスリルの取れる洞窟を確認に行って来たんだ」


「何の確認ですかな?」


「毒ガスの有無だよ」


 村長が驚愕している。


「毒ガスですか? 結果は?」


「猫の精霊様が毒ガスを抑えてくれていた」


「なんと、精霊様が」


 猫の精霊様が頷く。


「うん。だから、明日からでも採掘は始められるよ」


「おお、それは……」


「そこで、スラムの民をこの村に連れて来ても構わないかな」


 長老が眉を顰める。


「スラムの人間? 人間をここに連れて来るのですかな?」


「半数ほどは獣人達だよ」


「しかし、スラムですか……」


「心配かな? もし心配なら俺もしばらくここに住むけど」


「で、殿下が一緒に住んでくださるのですか?」


「うん、どうだろうか?」


「それは……正直助かります」


「じゃあ、それで話を進めよう」


「はい。ですが、殿下はこちらに来て大丈夫なのですか? その色々と……」


「大丈夫。俺に国王の座が回ってくることなんてないから」


「では……その、お願いしても構わないでしょうか?」


 俺は半信半疑の村長に向かって、笑顔で答えた。


「うん、任せて。まずはスラムの人達の住居を確保したいんだけど、この村を拡張するか、洞窟の前に新しく作るかどっちがいいかな」


「住民との摩擦を避けたいので、出来れば洞窟の前にお願いしたいのですが……」


「うん、わかった。じゃあ、洞窟の周りを切り拓くのも兼ねて建材を切っていこう」


 俺と村長とミケ、他に興味を持った村長家族や村人達が、俺に付いて来て洞窟の周りに集まった。


 俺はウインドカッターで木を切り倒し、切り株と切断した木をサイコキネシスで持ち上げる。木にはドライの魔法をかけた。切り株は端にまとめて、木を組み上げてログハウスを作っていく。


 まずは家族で住める一軒家から作り、次に独身の人達が住める長屋型のログハウスを作っていった。全て組み上げるのに一日では足りなかった為に、三日を費やした。三日間村人達は目を丸くしてその光景を見ていた。


 村長や村人達が、立派な村を見て声を上げた。


「俺達にも、作ってくれ!」


 村人の男が叫んだ。


「俺達にも、同じような家を建ててください」


「同じログハウスを?」


「はい!」


「分かった。いいよ」


「じゃ、じゃあ俺達の家もお願いします」


「私達にも!」


「落ち着いて。ちゃんと皆の分新しい家を建てるから」


「「「は、はい!」」」


 俺は洞窟の周辺で切り倒した丸太をサイコキネシスで運び、猫獣人の村にログハウスを作っていく。


 村長の家は立派だったので、作らなくてもいいか尋ねたら、村長宅も作って欲しいということになった。村長の家を潰すのはもったいなかったので、残したまま隣に大きなログハウスを建てた。


 他の村人の家は同じ大きさで、同じ形で建てることにした。


「よし、こんなもんでどうかな」


 村のバラックのような家がすべて均一のログハウスになった。村人は涙を流して喜んでいる。


 俺はその日のうちに、森から大きなムース(ヘラジカ)を十頭狩ってくる。


「じゃあ、スラムの人達を連れて来るから。歓迎の準備をしててくれるかな」


「はい。立派な歓迎会を開きましょう!」


 村長が感極まって泣きながら叫んだ。


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