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ミスリル鉱石

「良き隣人には愛を。悪しき隣人には制裁を」


「はッ!」


 俺は猫の精霊様と契約をした。


 ※※※


 俺とミケは村へと帰る。


 村長の家の一室で食事をする俺とミケと村長。村長が問う。


「私と殿下とミケと三人での食事を望まれた理由をお尋ねしても?」


「うん、俺がいたんじゃミケの家族達がまともにご飯も喉を通らないと思ったんだ」


「それはそれは。配慮して下さってありがとうございます」


「逆に気を使わせたかな?」


「いえいえ、殿下の前では緊張してしまって、皆ご飯の味も分からなかったでしょう。ハハハ」


「私まで一緒に食べていいのかにゃ」


「ミケは家族みたいなものだから」


「スピラル様……嬉しいですにゃ」


 村長は一瞬驚いた顔を見せた。


 テーブルを囲む三人。中央には地獄蒸しされた鶏肉や野菜や卵が置かれていた。


 ミケが皿に取り分けてくれる。


「して殿下、今回の用向きとは如何なものですかな?」


「この村の先の洞窟にある、ミスリル鉱石を採掘したい」


「ほう。青の洞窟の中にミスリル鉱石があると? どこで教わったのでしょう?」


「城の歴史書に書いてあった」


「なるほど。ですが、ミスリル鉱石は我が村の宝です」


「分かっている。利益は7:3でどうだ?」


 ホッとした顔の村長が声を低くして答える。


「3とはまた、魅力的な数字ですな」


「7が村の利益だ」


 驚愕した顔の村長。


「な……」


「採掘は猫の精霊様に許可して頂いた」


「いえ、7も頂けるのですか?」


「『7も』ではない、『7しか』渡せない。それを許可してくれるか?」


「いえいえ、充分過ぎるほどです」


「本来なら10の利益を求めてもいいんだぞ」


「どうせ我々だけでは採掘出来ません。それなのに、7も頂けるのなら村人も満足してくれるでしょう」


「そうか。それならありがたい」


 ミケが俺に尋ねてくる。


「スピラル様は本当にそれでいいですのかにゃ?」


「ああ。充分だ。0だった利益が3になるんだからな」


 俺は前世でミスリルがどれだけの利益をもたらすかを知っている。ミスリルがあれば財政再建をしても余りあるお金が得られる。


「じゃあ、食事の後に村長の家族や村の有力者を呼んで調印式をしよう」


「はッ!何卒宜しくお願い致します」


 俺は村長宅のリビングで村長家族と村の有力者立会いの下、調印式をした。文章は俺が書いた。


 拍手が起こる、俺は村長に握手を求める。俺の手を握り返す村長、みんな笑顔だ。


「精霊様、こんなところでどうですか?」


 俺が後ろを振り返ると、そこには猫の精霊様がいた。


 平伏する村長達。


 俺も膝をつこうとしたが、猫の精霊様に止められた。


「よいのです。人の子よ」


 頭を下げる猫の精霊様。


「この度は私の大切な子らに莫大な利益をもたらしてくれて、ありがとうございました。アナタと猫人達の関係が、この先も続きますよう」


「俺も強くそう願います」


「フフフ、不思議な子よ。私はアナタのことも見守っていきましょう」


 地に膝をつく俺。


「はッ!ありがとうございます」


「フフフ……」


 猫の精霊様はぼんやりとして消えていった。


 調印式が終わった。俺は寝室に案内され、そこで眠った。


 ※※※


 早朝、まだ夜が明ける前。


 俺は飛んでミスリル鉱石のある洞窟へと向かった。


「硫化水素は出ていないな」


 俺が奥へと進むと猫の精霊様がぼんやりと浮かび上がってくる。その姿がハッキリと見えるようになった。


 慌てて膝をつく俺。


「立ちなさい」


「はい」


 立ち上がる俺に、クスクスと笑う猫の精霊様。


「毒ガスは私が出ないようにしました。ですから、心配ありませんよ」


「精霊様が見守っていてくれたのですか?」


「はい。そうですね。アナタのことを見守っていましたよ」


「ありがとうございます」


「ですが、不用心な行動は感心しませんよ。もし毒ガスが出たままなら、アナタは死んでいたかもしれません」


「一応、クリーンの魔法で浄化しながら進んでいたので大丈夫だと思うのですが」


「聞いたことも無いような魔法を使えるのですね」


「ミスリル鉱石が温泉地の洞窟にあると知って、慌てて魔法を作りましたから」


「即席の魔法だったのですか?」


「はい」


「なるほど。大魔法使いというのは本当だったのですね」


「はい?」


「いえ、ミケから聞いたのです。アナタが大魔法使いと呼ばれていると」


「ミケが?」


 コクリと頷く猫の精霊様。


「確かに、自信があったとはいえ軽率でしたね。改めます」


「気をつけてくださいね。村の猫獣人達は、アナタ無しには庇護されないのですから」


「はい。気をつけます」


 猫の精霊様と更に奥に進んで行く。


 ニ十分くらい進むと、そこには銀灰色の石がゴロゴロと転がっていた。


 俺は銀灰色の石を手に取り、サーチの魔法でミスリルの密度を調べた。


「うん。銀のような美しさと輝きを持ちながら、鉄よりも遥かに軽量で頑丈。密度から見て間違いなくミスリル鉱石だ」


「どうですか? 高く売れそうですか?」


「はい。これなら間違いなく高く売れるでしょう」


「そうですか。それなら良かったです」


 俺と猫の精霊様は共に微笑んだ。


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