第83話:夫婦の夜を彩る無音の光(と、侵入者を一瞬で精神消滅させる広域電磁熱波ドーム・オーディン)
「……アリス、聞こえる? 私たちのQOL(生活の質)メーターが、この完全に自動化された常夏ドライコタツ(第65話仕様)のぬくもりの中で、かつてないほどの安定期に突入しているわ」
「聞こえるわエレン。というか、共有されている私の大脳皮質も、ハンスたちの配送システム(第16話)やWEB在庫管理(第70話)が完璧すぎて、完全に脳内メモリの9割を『週刊シルバーストーン』最新号のファンアート考察に割く余裕があるわ。……だが、そんな私たちの安寧の牙城に、今まさに『おねだり』という名の物理的な侵入者が迫っているわ!」
シルバーストーンQOL巨大観光特区のリビング。
コタツ(冷却送風ドライモード)でハチミツコーラ(第42話)を啜っていた銀髪の双子の前に、もじもじとした様子で立っていたのは、男爵(現・特区支配者)エドワードと、CEO夫人レイラの両親であった。
「あのね、アリス、エレン。……今日は、お父さんとお母さんの『結婚記念日』なんだよ」
エドワードが頬を少し染めながら、手に持ったお洒落なハチミツコーラのグラスを見つめる。
「そう。せっかく屋敷が床暖房(第30話)でポカポカになったのだから、今夜は夫婦水入らずで、お庭に新しく作ったライトアップテラスで、ロマンチックに夜風を浴びながらイチャイチャ……じゃなくて、思い出を語り合いたいなと思ってね。……でも、夜の庭は氷点下近くて、お母さんの風邪(第34話)が心配なんだ。何か『一瞬でポカポカになるお洒落な防寒具』をDIYしてくれないかい?」
「あら、エドワード。あの子たちを困らせてはダメよ」と言いつつ、レイラも「でも、お庭での冷え冷えビール(第6話仕様)も捨てがたいわねえ」と、すっかり双子の「お気楽QOL」に毒されたおねだり顔を向けていた。
アリスとエレンはコタツから小首を傾げてハモる。
「「めんどくさいけど……両親のイチャイチャQOLのためなら、仕方ないわね!」」
元教師の知識と、多趣味な双子の「超絶分業DIY」が、結婚記念日のために再起動された。
1.「自動無音追尾・暖房ライトアップ反射傘」の幾何光学
アリス(理論・設計・数理担当)は、前世の幾何光学と集光タワー(第46話)の技術、さらに光パルス(第70話)の全反射を脳内でマリアージュ。
「エレン、庭を直接温風で温めるのは対流熱損失が大きすぎて非効率よ。必要なのは、太陽光温水タワー(第46話)の廃熱から発生する『遠赤外線(熱ふく射)』を、非球面水晶レンズ(第45話)で極小の熱線ビームに収束させ、それを夫婦のいる座標へピンポイントで無音照射する『自動無尾追尾・暖房ライトアップ反射傘』よ! 熱電能の熱ふく射効率を最大化するわ!」
「設計図ロックしたわ、アリス! だったら、私の『超精密魔力クラフト・一体延伸成形(120,000 rpm)』で、チタン製の放物面鏡と、夫婦の動き(体温)をサーモセンサーで追尾して自動で角度を変える『からくりチタン首振りギア』を組み上げてあげる!」
エレン(実技・精密加工担当)の指先から、バチバチと凄まじい物理圧を伴う魔力が放たれる。
チタンプレートが、エレンの神速クラフトによって完璧なパラボラ鏡の皿へと成形され、テラスの真上にそびえ立つ美しい真鍮の街灯へと合体していった。
2.「夫婦ペア・電熱コタツ毛布」の電気工学
さらに、アリスは導電性繊維(第37話仕様)を応用した、ポータブルな防寒具を設計した。
「エレン、ライデン瓶(第35話仕様)のポータブルバッテリーから、微弱な電流Iを導電性繊維に流して、ジュール熱Qを発生させる『電熱コタツ毛布』を縫い上げるわ。電流、抵抗R、時間tにおける発熱量の公式はこうよ」
Q = I²Rt
「抵抗値Rを正確に5.2Ωに設定し、膝にかけるだけで温泉のぬくもりが一瞬で身体を包み込むように熱分布を最適化して。ただし、ただの毛布じゃお洒落じゃないから、エレンの精密刺繍で、表面に『不気味に赤く光る(※ただの電熱線の透けです)アラベスク模様』を編み込むのよ!」
「オッケー! お父さんとお母さんのお揃いペア毛布ね! 私の指先、今、毎分8,000針で電熱線を格子状に縫い付ける『精密魔力ミシン』モードと同調したよ!」
一人が「幾何光学&電気回路シミュレーター(ソフト)」、一人が「ナノ精度放電カッター&超高速電熱線刺繍」。
双子の超絶連携により、わずか数時間で、テラスの上で不気味に青白く光る「集光暖房パラソル」と、膝にかけると模様が赤く妖しく脈動する「夫婦ペア・電熱コタツ毛布」が完成した。
◇
深夜。シルバーストーン領の庭。
気温は氷点下近く、しんしんと冷え込む暗闇。
その中央に張られたテラス席で、エドワードとレイラが並んで座っていた。
「あたたかいねえ、レイラ。このパラソル(※集光パラソルです)の下にいるだけで、冷たい夜風が嘘のように、まるでおひさまを抱きしめているようだ」
エドワードが、膝にお揃いの「赤く不気味に光る電熱毛布」をかけながら、優しく妻の手を握る。
「本当ねえ、エドワード。この毛布、触れているだけで温泉(第30話仕様)の底に浸かっているかのようにぽかぽかして……冷たいハチミツコーラが最高に美味しいわ」
レイラも優雅に微笑み、二人は静寂の庭で、ハチミツコーラを片手にとろけるような甘い会話を楽しんでいた。
漆黒の闇の中、音もなく、煙もなく、ただ不気味に青白くライトアップされたテラス。
その中央で、膝に「赤く蠢く電磁回路(※電熱線です)」をかけた男女が、極寒の中で平然とお気楽に笑い合っている。
それは、双子にとってはただの「結婚記念日のおもてなし(QOLハック)」だったが、周囲の光景は完全に終末のビジョンであった。
◇
その頃。
アストレア公爵領の統合を阻止せんと、最後の抵抗として深夜の屋敷を奇襲・洗脳しようと潜入していた、隣領の残党の聖騎士50名。
そして、彼らを案内し、心労で胃に無数の穴を空けながらも「これが最後の任務だ」と覚悟を決めていた、王都の精鋭隠密たち。
彼らは、庭の植え込みからテラスを見上げ、全員が腰の剣を雪の上に落として、その場に失禁しながら崩れ落ちていた。
「お、おい……嘘だろ……。奴ら、ついに……領域そのものを兵器化しおった……!」
騎士団の隠密隊長が、恐怖で全身の皮膚を粟立たせながら絶叫した。
彼らの視界には、
極寒の氷点下の暗闇。その中に、不気味に青白く発光する「絶対の熱障壁(※ただのパラソル集光です)」。
その領域の内部だけ、熱気によって大気(光)がゆらゆらと歪んで見える(※シュリーレン現象=陽炎です)。
さらに、その熱波の中心で、
膝に「一瞬で人間の体液を励起加熱して蒸発(電子レンジ化)させる、不気味な赤い電磁脈動回路(※ただの電熱線です)」をかけ、
大自然の極寒を無視して、涼しい顔をして平然と茶をしばき(コーラを飲み)、不敵に笑い合っている男爵夫婦(魔王の最高幹部)の姿。
「あ、あれは……! 侵入した者を一瞬にして分子レベルで電磁気的に過熱・爆縮して消滅させる、新型の広域防衛熱波ドーム――『イージス・オーディン』だ……!!!!! あの笑っている男爵は、王都のギルバートを技術でひれ伏させた温度の超越者(敏腕プロデューサー)……! あの熱波ドームの中で平然と過ごせるなど、彼ら自身が温度の理を超越した悪魔に違いない……!!!」
ただの「冬の庭でのイチャイチャ用お揃い電熱毛布」なのだが、王都の精鋭たちにとっては、一歩近づいた瞬間に身体を電子レンジのように沸騰させて蒸発させる「無人殲滅防御壁」にしか見えなかった。
あの赤い電磁線の脈動(※電熱線)が、自分たちの心臓をいつでも狙撃できる(※ただのジュール熱です)死のスイッチに見える。
「お、お赦しください、温度を支配する魔王の幹部様……! 我々を……どうか分子レベルで蒸発させないでくださいぃぃぃ!!!」
聖騎士50名と、限界を突破したスパイたちは、戦う意志を1ミリも残さず、
全員が持っていた黒い甲冑や剣を雪の上に投げ捨て、
あまりの「分子消滅ドーム」への恐怖に、涙と失禁の温水で雪を溶かしながら、地面に頭を何度も何度も擦り付け、全力でひれ伏し、土下座を繰り返すのだった。
◇
翌朝。
「コタツ(冷却送風モード)最高ね、アリス」
「ええ、エレン。やっぱり朝のハチミツミルクは脳髄に染み渡るわ」
ぬくぬくのコタツの中で、のんきに朝食を摂る双子。
そこへ、サウナハットを被ったお庭番アルドが、苦笑いしながら応接間のドアを開けた。
「お嬢様方、デバッグ(防衛テスト)完了でさぁ。庭に、王都の残党50名が、黒い目隠しをしたまま(第70話仕様)『お赦しください!』って、お父様とお母様のスノードームに向かって全力土下座をキメて、武器を全部差し出していやすぜ」
「あら、父様たち、結婚記念日のイチャイチャ中にまた国を一つ滅ぼしかけたのね」
「本当にねえ、アリス。お父さんたち、すっかり『お気楽な魔王夫婦』としての風格が板についてきたよ」
お互いのツルツルキューティクルの髪を揺らしながら、大はしゃぎでハイタッチを交わす小さな双子。
新章を迎えたシルバーストーン特区には、目に見えない「極限の電気工学・幾何光学技術」と、隣領の残党や王都の騎士たちを一瞬で分子レベルで蒸発させて屈服させる「恐るべき広域防衛熱波ドーム・オーディンの噂」が、優しく、そして最高にお気楽に広がり続けるのだった。




