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第75話:水圧の深淵に沈む黄金の箱(と、制制権を一方的に蹂躙・殲滅する深海特攻潜水要塞アビス)

「……アリス、聞こえる? 私たちの胃袋、前回の極上おでん(第72話)と、不帰の氷穴(第74話)で手に入れた永久氷によって、この冬のQOL(生活の質)が完全勝利したはずなのに、何かが、何か決定的なスパイスが足りないと脳内QOLメーターが限界突破のブザーを鳴らし続けているわ……」

「聞こえるわエレン。というか、共有されている私の大脳新皮質も、から揚げ(第67話)やたこ焼き(第60話)を貪り食うたびに、あの前世のグルメ番組で観た『深海に眠る、古代の塩漬け沈没船から引き揚げられた至高のスパイス塩』への渇望に身悶えしているわ。場所は分かっているの。狂暴な魔獣がうごめき、鉄の船すら紙切れのように潰すという魔海――『深水(しんすい)の魔淵』の底よ!」


シルバーストーンQOL巨大観光特区のリビング。

ふかふかのコタツ(ドライ除湿モード・第65話)でぬくぬくとハチミツコーラ(第42話)を啜りながら、銀髪の双子は脳内の専用回線(テレパシー)を新たな「深海資源ハック」に向けて完全同期させていた。


「深水の魔淵」の底は、光が一切届かず、鉄をも拉ぐ圧倒的な水圧がすべてを支配する死の世界。しかし、お気軽極楽なグルメライフを愛する双子にとって、そこはただの「ちょっと深めにある高級スパイスの特設陳列棚」に過ぎない。


「いい、エレン? 深海の攻略はね、流体静力学における『静水圧』との戦いよ。密度をρ、重力加速度をg、水深をhとした場合、水圧Pの公式はこうよ」


 P = ρgh


「目標とする水深500mにおいて、かかる圧力は実に約50気圧。普通の構造じゃ一瞬でペシャンコよ。だから、外部の圧力を完璧に等方的に分散させる、継ぎ目のないチタン製の球形『ポータブル潜水球(シルバー・バチスカーフ)』をDIYするわよ!」

「最高ねアリス! 大地の圧力(第51話)の次は、海の圧力を物理法則で踏みつぶすのね! 私の『超精密魔力クラフト(120,000 rpm)』、出力最大でいくよ!」


二人の『二心同体(デュアル・コア)』が、海洋工学と生物化学の極致へと同期した。


アリス(理論・設計担当)が、球殻(スフィア)に加わる等方圧力を完全に分散するための構造力学的な極限シミュレーションを脳内で実行し、共有視界にAR(拡張現実)の設計図を投影する。

エレン(実技・精密加工担当)は、金貨タワー(第24話)で調達した超高純度チタンプレートを前に両手をかざした。


キィィィィィィィン!!!!!


大気を鋭く引き裂く、エレンの魔力放電カッター。

エレンは、アリスが投影した青い3Dグリッドに完全に同調し、チタンをコンマ数ミクロンの精度でドーム状にプレスし、溶接の継ぎ目(構造的欠陥)を一切作らない「真球の球体」を瞬時に物質化していった。


さらに、アリスは密閉された球体内で窒息を防ぐための「クローズド・サーキット・リブリーザー(循環式呼吸器)」を化学設計する。


「エレン、人間が排出する二酸化炭素( CO₂ )は、蓄積すると脳に深刻なダメージを与えるわ。だから、コンビナート(第24話)で精製した水酸化カリウム( KOH )をフィルターに仕込み、二酸化炭素を化学反応で強制吸収・中和するのよ!」


 2KOH + CO₂ → K₂CO₃ + H₂O


「さらに、魔力で植物の光合成プロセスを再現し、水分から酸素( O₂ )を無限に自己生成する再生回路を組み込みなさい。これで、空気の残量を一切気にせず、何時間でも深海でお買い物(スパイス回収)ができるわ!」

「オッケーアリス! 循環呼吸装置のバルブと真鍮のバラストタンク(浮力制御用・アルメデスの原理F = ρVg 応用)の組み込み、完了!」


一人が「流体力学&化学平衡シミュレーター(ソフト)」、一人が「ナノ精度放電カッター&高圧密閉アッセンブル(ハード)」。

双子の超絶連携により、わずか数時間で、不気味に青白く光るLED魔石のサーチライトを備え、鈍い金属光沢を放つ、直径1.5mのチタン製潜水球『シルバー・バチスカーフ』が爆誕した。


◇


数時間後。

狂暴な魔獣がうごめき、白泡が渦巻く「深水の魔淵」の海面。


ポコポコポコポコ……。


不気味な黒いステルス耐熱タイツ(第51話仕様)に身をまとった双子が、チタンの球体へと潜り込み、ハッチをガチャンと閉鎖。真鍮製のバラストタンクに水を注ぎ込み、ゆっくりと深海へと沈降(デリバリー)していった。


球体の中は、アリスが設計した自動給温エアコンと、エレンの作った「循環呼吸器」のおかげで、常に摂氏24℃の極めて快適なドライ空間(第65話仕様)が保たれている。


「エレン、ソナー(第52話仕様)に反応あり。前方10m、沈没した古代船の残骸の中に、完璧に密閉された黄金(真鍮)のスパイス箱を発見したわ!」

「よっしゃ! からくりアタッチメント(マジックハンド)射出! 掴み取るよ!」


カチャカチャカチャ! と木製お掃除ロボ(第36話)の技術を応用した、水圧50気圧に耐えるチタン製マニピュレーターが伸び、深海の泥の中から「古代の極上スパイス塩」がギッシリ詰まった黄金の箱を優しく、かつホクホク顔で回収した。


「やったわエレン! 採取率100%! これで今夜は……!」

「ええ、アリス! 浮力タンク、パージ! 急浮上(ローンチ)よ!」


◇


その頃。

海を見下ろす高台の砦。

隣領の無償割譲と、アストレア公爵領のコタツ一体化(第69話仕様)により、すっかり双子のQOLインフラの「専属テスター兼お庭番」として定着した元隠密アルド、そして堅物令嬢イゾルデは、

今回の「領地沿岸の防衛線実態調査」として、防衛隊の隊長と共に海面を望遠鏡で監視していた。


その瞬間、荒れ狂う海面から、信じられない光景が浮かび上がってきた。


ポコポコポコポコポコポコポコポコッ……!!!!!


「な、なんだあの泡は……! 海の底から、とんでもない不穏なエネルギーが湧き上がってきているぞ……!」

防衛隊長が、恐怖で顔を引きつらせて叫んだ。

アルドは、のんきにポップコーン(第39話仕様)を頬張りながら微笑む。

「ああ、あれですか。双子様が『カレーに使う特別な塩が欲しい』と仰って、今朝パパッと作った、乗り心地最高のチタン製の深海お買い物カプセルですよ。コタツと同じくらい温かくて快適なんですよね、あれ」


「嘘を言うなあああ!!!」

イゾルデが白目を剥いて叫んだ。

「水圧50気圧だぞ!? 鉄の船すら一瞬で鉄くずにされる深海に、お買い物だと!? そんなふざけた乗り物があるわけがない! ……あ、見ろ! 浮上してくるぞ!」


ボガァァァァァン!!!


海面を激しく突き破り、

不気味な泡を周囲に「ポコポコポコポコ!」と激しく吐き出しながら、

一切の動力音もなく、青白く陽炎のような魔力の光(※ただのLEDサーチライトです)を放つ、

継ぎ目が一切存在しない漆黒のチタンの球体(シルバー・バチスカーフ)が、海面にプカプカと浮かび上がってきた。


「ひ、ひぃぃぃっっっ!!!」

防衛隊長は、その圧倒的な「異形」の光景に、持っていた愛剣を砂浜に落として腰を抜かした。


「ま、間違いない……! あの水圧を完全に無効化し、海の底から失われた超古代の終末破壊兵器を無傷で回収して浮上してきた……! あれは、世界の全制海権を一方的に蹂躙・殲滅するための、深海特攻潜水要塞――『アビス』だ……!!!!! あの周囲にポコポコ吐き出されている不気味な泡は、海の生命エネルギーを強制吸引して排出した『デス・バブル』に違いない……!!!」


ただの「お寿司やカレー、から揚げに使うための、冷たくて美味しいお塩の採取カプセル」なのだが、王都のエリート騎士たちにとっては、ペダルを踏むだけで海防を完全に消滅させ、魔獣の力をハックして浮上してくる、最悪の深海超兵器にしか見えなかった。

あの不気味に青白く光る球体のハッチが、今まさにこちらに向けて開かれようとしている。


「お、お赦しください、深海の魔王様……! 我が海軍を……防衛線をどうか『デス・バブル』で溶かさないでくださいぃぃぃ!!!」


防衛隊長とイゾルデ、そして同行していた沿岸防衛隊50名は、戦う意志を1ミリも残さず、

全員がその場で「黒い目隠し(第70話仕様)」を両目にガチガチに巻き付け、

砂浜の上で、涙を流しながら地面に頭を擦り付け、ひれ伏し続けるのだった。


◇


数分後。

ハッチがプシューッと開き、お肌ツルツル(第40話仕様)の黒タイツ姿で、黄金のスパイス箱を抱えて出てきたアリスとエレン。


「ぷはぁー! やっぱり、水圧50気圧の深海を完全攻略した後に、コタツの中で食べるこのスパイス塩をふりかけたアツアツのから揚げ(第67話)は、五臓六腑のQOLを極限突破させるわね、アリス!」

「ええ、エレン。静水圧 P = ρgh と、二酸化炭素中和リブリーザーの数理モデルの完全勝利よ。これで私たちの調味料QOLは、電気も魔力も消費しない『天然のスパイス・フリーザー』によって、いつでも無限供給体制よ!」


「「ふふふふ……」」


お互いのツルツルキューティクルの髪を揺らしながら、大はしゃぎでハイタッチを交わす小さな双子。


窓の外では、月明かりの下、新たに雇用されたアルドが、ガシャガシャと走る木製お掃除ロボ(第36話)と肩を並べ、

「あのバチスカーフ、実に乗り心地が良くてQOLが高い……」

と、幸せそうな笑顔で、砂浜に残された防衛隊たちの目隠し布を静かに回収して掃き清めていた。

新章を迎えたシルバーストーン巨大観光特区には、目に見えない「極限の流体静力学・二酸化炭素中和技術」と、隣領の貴族や王都の騎士たちを国家崩壊レベルの絶望に陥れる「海を一瞬で死滅させる、恐るべき深海特攻潜水要塞アビスの噂」が、優しく、そして最高にお気楽に広がり続けるのだった。

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