第74話:不帰の氷穴に舞う青きプリズム(と、脳の自由意志を一瞬で焼き切る広域魔光兵器クリスタル・ディザスター)
「……アリス、聞こえる? 私たちの胃袋、チャーハン(第71話)とおでん(第72話)と特製プリン(第73話)という『極上QOLマリアージュ』によって、かつてない多幸感(脳内エンドルフィン)の波に溺れているわ……」
「聞こえるわエレン。というか、同一の意識を共有している私の大脳皮質も、あのプリンのとろける甘さに完全にKOされているわ。……だが、だからこそ! 私たちの次のQOL(生活の質)ロードマップは、この極上スイーツたちを『魔力消費ゼロで永久に凍結保存する、天然の超極低温フリーザー』の確保を指し示しているわ。目指すは、領地とアストレア公爵領の境界に眠る、年中氷が溶けないという魔境――『不帰の永久氷穴』よ!」
シルバーストーン特区の爽やかな朝。
コタツ(冷風ドライモード)でぬくぬくとハチミツレモネードを啜りながら、銀髪の双子は脳内の専用回線を新たな「極低温資源ハック」に向けて完全同期させていた。
前世は三十代の理科教師、成瀬健一。
領地が王都並みに巨大化した今、エネルギー効率の最適化は至上命題だ。魔力を使って冷やすのではなく、年中凍りつく氷穴の「永久氷(極低温の氷晶)」を屋敷の地下に敷き詰め、天然の冷凍倉庫をDIYするのが今回の目的である。
「でもアリス、氷穴の内部は一寸先も見えない暗黒、しかも床も壁もカチカチの氷よ? 普通に歩いたら、私たちの可愛いお尻が滑って4回転半ジャンプの末に粉砕しちゃうわ!」
「フッフッフ、弱気ねエレン。暗闇には光学(全反射)の力、滑る氷壁には力学(モーメントと摩擦角)の力。元理科教師の物理ハックを舐めないで。いくわよ、大冒険用の新規ギアのDIY開始よ!」
「最高ねアリス! 物理法則をバグらせて、お空も氷壁も爆走してやるわ!」
二人の『二心同体』が、光学と力学の極致へと同期した。
1.3D全方位立体機動アタッチメントと幾何光学ランタンのDIY
アリス(理論・設計・数理担当)が、氷壁の摩擦角と体重移動の力学モーメントを脳内で高速シミュレートする。
「氷とチタンの間の最大静止摩擦係数をμs ≈ 0.05とするわ。普通に足を置けば一瞬で滑るけれど、アイアンスパイダーの超高張力クモ糸ワイヤー(第28話)を天井に射出し、自重による向心力F = m v²/ rとエッジの摩擦角を動的に同期させれば、重力を無視して氷壁を滑走する『3D全方位立体機動アタッチメント』が作れるわ!」
「アリス、脳内物理演算データはバッチリ受信したわ! だったら、私の『超精密魔力クラフト(120,000 rpm)』で、チタン製ハーネスと、ワイヤーを秒速で巻き取る多段からくりギヤ(第36話仕様)を一体成形してあげる!」
エレン(実技・精密加工・物理演算担当)の指先から、バチバチと繊細な魔力放電が散る。
さらにアリスは、暗黒の洞窟を一瞬で照らし出す「幾何光学屈折ランタン」の設計図を脳内に展開した。
「氷の屈折率をn ≈ 1.31とした場合、光が氷と空気の境界を抜ける際の臨界角θcの式はこうよ」
θc= arcsin(1/n) ≈ 49.8°
「エレン、魔石の放つ光が、氷壁の表面でスネルの法則( n₁sinθ₁ = n₂sinθ₂ )に従って『全反射』を繰り返すように、ランタンの照射角を正確に50度に制限する非球面水晶スリット(第45話仕様)を成形して! 光が氷の壁をレンズ代わりにして無限に拡散し、洞窟全体が一瞬にして太陽のように輝き出すわ!」
「オッケー! 暗闇を一瞬で昼間に変える、光の屈折爆弾ね! 削るわよ、アリス!」
一人が「3次元幾何光学&力学応力解析」、一人が「ナノ精度放電カッター&高分子カーボンアッセンブル(ハード)」。
双子の超絶同調により、わずか数時間で、腰に真鍮のワイヤードラムを備えた「立体機動ベルト」と、光を青白く収束して放つ「幾何光学屈折ランタン」が爆誕した。
◇
数時間後。
年中冷たい冷気を吐き出し、人跡未踏とされる不気味な「不帰の永久氷穴」の内部。
コタツから抜け出し、お揃いの特製防寒サロペット(母様デザイン・第37話の電熱インナー内蔵)を身にまとった双子が、氷穴の入り口に立っていた。
「アリス、ランタン、起動よ!」
「スイッチ、オン!」
ピガァァァァァァァァァン!!!!!
幾何光学ランタンから放たれた極小のスリット光が、氷穴の壁を直撃した。
その瞬間、スネルの法則に従って光がカチカチに凍りついた氷壁の内部で全反射を繰り返し、無数の青白いプリズム光となって洞窟の奥深くへと無限に拡散していった。
一瞬にして、何百年もの暗黒に閉ざされていた氷穴が、まるでクリスタルの宮殿のように、まばゆく、そして不気味なほど美しく青白く輝き出したのだ。
「うお、まぶしっ! 屈折率のシミュレーション通り、氷の壁全体が発光しているわ!」
「よし、エレン! 永久氷の採取よ! 立体機動アタッチメント、射出!」
シュバッ!!! カチャカチャカチャ!
エレンが腰のアンカーを天井の氷柱に撃ち込み、ワイヤーを巻き取る。
エレンは驚異的な体幹ジャイロと大腿四頭筋のバネを活かし、摩擦角を完全にハックして、
「スササササササササササッ!!!」
と、重力を完全にバグらせたかのように、垂直の氷壁や天井を「カチャカチャ、シュバッ!」と不気味な金属音を響かせながら、三次元空間を自在に爆走して駆け上がり始めた。
「あったわ! 奥に極低温の永久氷晶を発見! チタンピッケルで削り取るよ!」
「エレン、エッジ角をあと3度寝かせて! 氷の割れ目のモーメントを考慮して打撃しなさい!」
「ラジャー! 『魔力超振動・カンカンカン削り取り』!」
カンカンカンカンカンカン!!!
暗闇の氷穴の中、頭上から降り注ぐ無数の青白い光のプリズムが激しく明滅し、
その光の嵐の中を、不気味な金属音を響かせながら、重力を無視して天井をカチャカチャと爆走し、超高速でピッケルを振るう双子の姿。
それは、ただのお気楽な「QOL用冷気資源の採取ピクニック」なのだが、周囲の光景は完全に神話の黙示録と化していた。
◇
その頃。
アストレア公爵領の割譲に怯え、双子の「魔王級インフラ(※ただのリニアとコタツ)」を監視し続けていた王都特務監察官の堅物令嬢イゾルデ、そして彼女の父親である「王都重装騎士団長」は、
氷穴の入り口の物陰に身を潜め、黒い遮光ガラス(第46話仕様のサングラス)を顔に当てて中を覗き見していた。
その瞬間、二人の脳髄に、凍りつくような絶望の衝撃波が走った。
「お、おい……嘘だろ……。あ、あいつら……ついに、人間の『精神』まで光で焼き切る兵器を……!」
騎士団長が、持っていた家宝の聖剣をその場に放り出し、ガタガタと膝の根を鳴らして絶叫した。
彼らの視界には、
何百年もの間、誰も生きて戻れなかった「不帰の永久氷穴」。
その深部が、直視不可能なほどの暴虐なる青白い光のプリズムで満たされ、壁や天井の氷の結晶が巨大なレンズとなって、光のエネルギーを不気味に増幅・明滅させている光景。
そして、その光の嵐の中を、重力を完全に無効化し、不気味な金属音を響かせながら「カチャカチャ、シュバッ!」と空中を縦横無尽に爆走し、
奇怪な儀式用の杖(※ピッケルです)で、大地の魔力を超高速で強奪している悪魔の双子の姿。
「ま、間違いない……!」
イゾルデは恐怖のあまり顔面を土気色にし、サウナハット(第51話仕様)を握りしめたまま、その場に崩れ落ちた。
「あれは……氷の結晶を巨大なプリズムにして光の破壊エネルギーを無限増幅し、一瞬にして標的の視覚と脳の自由意志を焼き切って、双子の魔王の従順な木製人形(第36話)に仕立て上げる、広域殲滅魔光兵器――『クリスタル・ディザスター』だ……!!!!! しかも、あの双子、重力すら完全に無視して三次元空間を無音で爆走する、おぞましい空中機動特殊部隊を訓練しているぞォォォ!!!」
ただの「お風呂上がりのプリンを冷やすための、快適な氷かき集め」なのだが、王都の騎士たちにとっては、一瞬で一国の戦士たちの脳を光で破壊する、最悪の広域兵器にしか見えなかった。
あの無数の青白い光のプリズムが明滅するたびに、自分たちの精神データがデリートされていくような(※ただの逆光の眩しさです)錯覚に陥る。
「お、お赦しください、双子の魔王様……! 我々の脳を……どうか光で焼き切らないでくださいぃぃぃ!!!」
騎士団長とイゾルデ、そして同行していた精鋭の聖騎士50名は、戦う意志を1ミクロンも残さず、
全員が持っていた盾や鎧を投げ捨て、
光を直視しないように全員で『黒い目隠し(第70話仕様)』を両目にガチガチに巻き付けた状態で、
ただのハチミツレモネードを片手にホクホク顔で永久氷をそりに積んでいる双子に向かって、涙を流しながら地面に頭を擦り付け、全力で土下座を繰り返すのだった。
◇
その夜。
屋敷の地下に新設された、永久氷を敷き詰めた「魔力消費ゼロ・超低温の天然冷凍倉庫」。
その中心に、カチカチに保存された特製カスタードプリン(第73話)と、出来立てのチョコレートアイス(第15話)が、極上の品質を維持したまま並んでいた。
「ふあぁぁぁ……! アリス、見て! プリンが、永久氷の冷気熱伝導(q = -k∇T)によって、一切のドリップ(水分分離)を起こさずに、完璧な弾力を維持したまま凍結保存されているわ!」
「完璧よエレン。幾何光学による氷穴攻略と、モーメント力学の完全勝利ね。これで私たちのスイーツQOLは、電気も魔力も消費しない『天然のエコ・フリーザー』によって、365日いつでもお気軽・無限供給体制よ!」
「「ふふふふ……」」
お互いのツルツルキューティクル(第40話)の髪を揺らしながら、大はしゃぎでハイタッチを交わす小さな双子。
窓の外では、月明かりの下、すっかり目隠しをしたまま庭の草むしりをしているアルドが、
「あの目隠し土下座、実に通気性が良くてQOLが高い……」
と、幸せそうな笑顔で、木製のお掃除ロボ(第36話)と並んで庭の片付けをしていた。
新章を迎えたシルバーストーン特区には、目に見えない「極限の幾何光学・モーメント力学技術」と、隣領の貴族たちを国家崩壊レベルの絶望に陥れる「直視した瞬間に脳の自由意志を焼き切り、重力無視で空中を爆走する、恐るべきクリスタル・ディザスターの噂」が、優しく、そして最高にお気楽に広がり続けるのだった。




