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第70話:蜘蛛の糸が紡ぐ世界通信網(と、全人類の精神を同期させて奴隷化する広域意識支配システム・WEB)

シルバーストーンQOL巨大観光特区の朝。

地熱温泉床暖房とデシカント除湿(第65話)が完璧に効いた常夏サラサラ空間のリビングで、銀髪の双子、アリスとエレンはコタツに下半身を突っ込みながら、山積みの紙切れを前にして同時に盛大なため息をついた。


「……ねえアリス。私、もうハンスたちの配送シフト表と、ビールの在庫数の数字を見るだけで、大腿四頭筋がストレスによるカタボリック(筋肉分解)を起こしそうだわ」

「聞こえるわエレン。というか、共有されている私の大脳皮質も、合併した3つの領地(シルバーストーン、旧伯爵領、アストレア公爵領)から送られてくる大量のFAX(第41話)用紙を、いちいち手作業でファイリングして在庫管理する非効率さに、限界値(しきい値)を超えた怒りのパルスを送信しているわ。領地が広くなりすぎたせいで、情報伝達が完全にボトルネックになっているのよ!」


これまでのQOLハックのせいで、シルバーストーン特区の物流と商業規模は爆発的に拡大していた。

だが、そのすべての在庫報告や配送シフト、さらには『週刊シルバーストーン』の読者投稿ハガキのやり取りを、一台ずつ手動でダイヤルを回すFAXで処理するのには物理的な限界があった。


「いい、エレン。情報とはね、明暗のデジタルパルス――すなわち『二進法(0と1)』に還元できるの。ならば、領地全体を光のパルスで常時接続し、データを一瞬でやり取りする異世界初の『情報ハイウェイ(LAN/WEB)』を敷設するわよ!」

「最高ねアリス! 世界を光の糸で繋ぐ……これぞ私たちの『二心同体デュアル・コア』の最大稼働の見せ所ね!」


双子の瞳に、かつてない「だらだら時間の確保(QOL)」への執念が宿り、通信工学と応用光学の極致へと完全同期した。


究極の「光導波路ファイバー」と「真鍮サーバー」のDIY


アリス(理論・設計担当)は、前世の理科教師としての膨大な知識ベースから、光の全反射を制御する「スネルの法則」と、通信容量を最大化する「シャノン=ハートレーの定理」を瞬時にスキャン。脳内の黒板に数式を書き殴った。


 n₁sinθ₁ = n₂sinθ₂


「光を漏らさずに遠くまで運ぶには、屈折率の高い『コア』を、屈折率の低い『クラッド』で包み込んで、光を完全に全反射トータル・リフレクションさせる必要があるわ。エレン、魔の森のアイアンスパイダーの極細クモ糸に、蛍光性魔石の粉末を極薄で蒸着(物理気相成長)して、直径わずか50μmの『光ファイバー風全反射魔導チューブ』を織り上げるのよ!」

「任せなさい、アリス! 蜘蛛の糸をガイドに、魔力でシリカ(ガラス成分)を均一に溶着して、コアとクラッドの二重構造を作るね! 私の指先、今から『ナノ精度光ファイバー延伸機』と同調したわ!」


エレン(実技・精密加工・フィジカル担当)の両手が、残像を置き去りにして動き出した。

エレンの指先から、大気を激しく引き裂くキィィィィンという高周波の魔力刃が放たれる。

アリスが共有視界に投影した「3次元光屈折率分布」の青いAR(拡張現実)ガイドラインに重ねるようにして、エレンは髪の毛より細い蜘蛛の糸の表面に、魔石の酸化皮膜をナノメートル単位の均一さでコーティングし、それを束ねて強靭なケーブルへと成形していく。


さらにアリスは、届いた光の明暗パルス(PCM:パルス符号変調)を一時的に保存するための「真鍮製多層レコード(ハードディスク)」を設計。


「受信した0と1のパルス信号を、第38話の磁気テープ技術を応用して、真鍮レコードの超微細な残留磁化パターンとして書き込むの。これで、人間の手を通さずに、領地全体の在庫データを自動で蓄積・更新する『データサーバー(データベース)』が完成するわ!」

「よし! サーバーの超高速カッティング用真鍮ギヤ、私の指先超硬旋盤でバックラッシュ(隙間)ゼロで削り出して組み立てるよ!」


一人が「光線力学&データ通信プロトコル解析ソフト」、一人が「ナノ精度ファイバー延伸&高速真鍮サーバー構築ハード」。

二人の超絶連携により、わずか数日のうちに、屋敷の地下室には、チカチカと怪しい青いインジケーター(LED魔石)が点滅し、真鍮の円盤が静かに「キィィィン……」と等速回転する、異様極まりない「魔導データサーバー」が爆誕した。


さらに、エレンは『魔導アセンダー(第45話)』を腰に巻き、ロープウェイ(第48話)の鉄塔を足がかりにして、空中へ一瞬にして「銀色に光る魔導光ケーブル」を敷設していった。そのフットワークは、もはや重力を完全に置き去りにしていた。


深夜の領地に蠢く、青い光の死線


数日後の夜。

敷設されたばかりの世界通信網(WEB)のテスト送信が開始された。


「エレン、サーバー起動よ。各地の光通信タワー(第45話の幾何光学レンズ応用)から、二進法コードのパルス信号を送信しなさい!」

「スイッチ、オォォォン!!!」


ガチャン、とエレンが真鍮のレバーを倒す。

次の瞬間、静まり返った合併領地(3大領地)の夜空を渡るロープウェイのワイヤーに沿って――。


チカチカチカチカチカチカッ!!!

ピガァァァァァァァァァン!!!


人間離れした超高速――秒速30万キロの伝送速度で、

ケーブルの内部を通り抜ける、鮮烈で不気味な「青い魔力の光パルス」が、領地を繋ぐ空中ラインの上を細かく、激しく明滅しながら走り始めた。

それは、暗闇の中に引かれた「チカチカと不気味に点滅する、青い光の死線」にしか見えなかった。


アリスの部屋のスキャナーが読み取った「ビールの在庫数:2万本」「ハンスたちの今週のシフト表」の二進法データが、光の速度で点滅し、各地の出張所の真鍮サーバーへと「チチチチチ!」と書き込まれていく。


「成功よ、アリス! 送信エラー率ゼロ! 3大領地全体のデータが、コタツから一歩も出ずに一瞬で同期されたわ!」

「素晴らしいわエレン! これで私たちのQOLは完全にデータ管理されたわ。もう面倒な集計作業に追われることもない、完全なるだらだらライフの完成ね!」


双子は、自動で在庫数が書き換わっていく真鍮モニターを見つめながら、お互いのキューティクルツヤツヤの髪(第40話)を揺らして、のんきにハチミツホットミルクを啜りながら「ふふふふ……」と手を叩いて高笑いしていた。


国家の終焉と、目隠しの土下座


その頃。

シルバーストーン領との境界にある深い山林の物陰。

新しく合併された旧隣領の様子と、「王都からの特務監察官イゾルデが洗脳された(※から揚げに胃袋をハックされただけです、第67話)」という大パニックの報告を受け、

王都から緊急派遣された、国家防衛の最高責任者である「騎士団の重鎮たち」と、

今やシルバーストーン家の庭師として幸せそうに暮らす元スパイ・アルドの不穏な動向(※ただのサウナ満喫)を監視していた、ボロボロの隠密スパイたちは、

頭上の夜空を走る「チカチカと激しく点滅する青い光の糸」を見上げて、全員が武器を投げ捨てて地面にひれ伏していた。


「お、おい……嘘だろ……。あ、あいつら……ついに、全人類の脳細胞ソウルまで、あの見えない『光の糸』で繋ぎおったぞ……!!!」


騎士団の最高顧問が、顔面を土気色に染めてガタガタと歯の根を鳴らした。

彼らの頭上、漆黒の夜空を貫く蜘蛛の糸のラインに沿って、

人間離れした超高速でチカチカと不気味に点滅し、青い火花のように走り続ける謎の光のライン。


さらに、近くにいたイゾルデ(※サウナ帰りで頭にサウナハットを被り、コタツに入りながらから揚げを食べている)が、

「ああ……あのチカチカする光のパルス……。見つめているだけで、脳の神経伝達物質(QOL)が完全に支配されて、抗う気力が消え失せていくわ……。アリス様、エレン様……、私、もう王都には戻りません……」

と、うっとりとした表情でコタツの中に沈み込んでいく光景が、窓越しに見えていた。


「ま、間違いない……!!!」

隠密は、恐怖で血の涙を流しながら叫んだ。


「あれは、全人類の脳細胞をあの見えない『光のネットワーク』で強制的に同期させ、個人の意志と記憶を奪い去って、一つの巨大な悪魔の頭脳(集合意識)へと書き換える、精神支配魔網――『ウェブ・オブ・デストロイヤー』です……!!!!! あのチカチカ点滅する死の光線を一瞬でも直視した者の脳は、一瞬で初期化フォーマットされ、双子の魔王の従順な奴隷オートマトンにされるのだァァァ!!!」


「ひ、ひぃぃぃっっっ!!! 目を見るな! あの光を直視するな! 脳が、脳のデータがデリートされるぞォォォ!!!」


騎士団の重鎮たちと重装騎士50名は、あまりの「世界の終焉」を感じさせる精神ハッキングの光景に、

全員が持っていた黒い目隠し用の布(※元々は夜襲用です)を慌てて両目に巻き付け、

視界を完全に遮断した状態で、

「お、お赦しください、双子の魔王様……! 脳の初期化フォーマットだけは、どうか勘弁してくださいぃぃぃ!!!」

と、ただの「ビールの在庫データとハンスたちの今週のシフト表」が流れる光ファイバーに向かって、涙を流しながら地面に頭を何度も何度も擦り付け、ひれ伏し、這いつくばって命乞いをするのだった。



その深夜。

王都の重臣たちが目隠しをして泥にまみれて土下座していることなど、1ミリも知らない双子は、

コタツの中で、ハチミツミルクを片手に、のんきに特製「ポータブルFMステーション(第31話)」のラジオブースで喋っていた。


『――ハガキ職人の皆さん、こんばんは。深夜2時、領地全体が超高速光回線(WEB)で繋がって、ハガキの仕分けが一瞬で終わったアリスとエレンがお送りする「シルバーストーン・ミッドナイト・グルーヴ」の時間です』

『エレンでーす! いやー、光の速度でデータが届くから、私たちはもう指一本動かさずにコタツでハチミツミルクを飲むだけ! QOL限界突破、インターネット最高だべ!』


窓の外では、月明かりの下、ガシャガシャと木製のお掃除ロボ(第36話)が、静かに庭の落ち葉を掃き清めていた。

領内には、目に見えない「極限の通信工学・幾何光学技術」と、隣領の貴族や王都の重臣たちを「直視した瞬間、脳の記憶をすべて初期化されて双子の奴隷にされる、恐るべきウェブ・オブ・デストロイヤーの噂」が、優しく、そして最高にお気楽に広がり続けるのだった。

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