第50話:夜空に躍る無数の火の玉(と、大陸中の都市を一瞬で塵にする終末の雷撃魔導システム)
「……アリス、聞こえる? 私たちのQOL(生活の質)メーターが、この領地の平和と安定が極まりすぎて、逆に『退屈』という名の危険信号を点滅させ始めているわ。温泉に浸かり、炭酸コーラを飲み、フカフカのベッドで寝る……最高だけど、何か、お腹の底から湧き上がるお祭り騒ぎ(フェスティバル)が足りないのよ!」
「聞こえるわエレン。というか、共有されている私の大脳皮質も、これまでに培ったからくり技術(第36話)、蓄電技術(第35話)、光学技術(第45・46話)、そして音響技術(第38話)のすべてを一度にデフラグし、前代未聞の『超巨大エンターテインメント』として再構築しろと激しいデモを起こしているわ。節目となる今夜、シルバーストーン領を異世界初のエレクトロニカルパレードで包み込んで、領民たちと朝まで踊り明かしましょう!」
夏の終わりの穏やかな夜。
コタツ(送風モード)で冷たいハチミツコーラ(第42話)を飲んでいた銀髪の双子は、脳内の専用回線をかつてない周波数で同調させ、限界突破の創作意欲で同期していた。
前世は三十代の理科教師、成瀬健一。
お気楽極楽な隠居ライフを愛する俺たちだが、一度遊びに本気になれば、物理法則すらも玩具にする。
「いい、エレン。パレードの核となるのは、夜空を3次元の巨大スクリーンに変える『数百台の木製からくりドローン』。そして、空気を裂いて極上の重低音と稲妻を奏でる『テスラコイル・エレクトロハープ』よ。さらに、軟水ミストを巨大なスクリーンにして、私たちの3Dホログラムを天高くにプロジェクションマッピングするわ!」
「最高ねアリス! からくりドローンの空間同期制御、そしてテスラコイルの共振回路……これぞ私たちの『二心同体』の最大稼働にふさわしい大工事だわ!」
二人の脳細胞がフルスロットルで回転を始めた。
アリス(理論・設計・電磁気担当)は、テスラコイルの一次コイルと二次コイルの共振周波数fの完全同調計算を脳内黒板に書き殴る。
f = 1/2π√L C
(エレン、インダクタンスLと静電容量Cの共振ズレは0.001%以下に抑えて。さらに、数百台のドローンが夜空で衝突しないよう、ギヤ比とゼンマイの解放速度による空間同期シーケンスの3D経路をあなたの視界にAR(拡張現実)投影するわ!)
(ラジャー、アリス! 経路データ受信完了! ドローン用の超軽量アイアンウッドボディ数百台、私の『超精密・分子レベル多重削り出し(120,000 rpm)』で一瞬で量産してあげるわ!)
エレン(実技・精密工作担当)が、作業台の上に積まれた魔の森の木材や、ライデン瓶(第35話)の端材を前に両手をかざした。
キィィィィィィィン!!!!!
鼓膜を引きちぎるような超高周波の魔力刃。
エレンは、アリスが脳内で算出した3次元のギヤ・リンク機構の設計等高線に沿って、数ミリサイズのからくりギヤを、寸分の狂いもなく分子レベルで削り出していく。
一人が「空間経路&共振回路シミュレーター(ソフト)」、一人が「ナノ精度放電彫刻&超神速組み立て(ハード)」。
二人の神がかり的な調和により、わずか数時間で、ボディに魔石LED(第39話)を搭載した「からくりドローン」300台、そして真鍮の巨大な電極が飛び出た2基の「魔導テスラコイル」が爆誕した。
さらに、アリスは軟水タワー(第40話)のバルブをハックし、庭の広場に超微細なミスト(霧)を扇状に噴射する「ミストスクリーン・ジェネレーター」を敷設。そこに第45話で磨いた巨大非球面水晶レンズを搭載したカラーサーチライトを連結した。
「準備万端よエレン。……シルバーストーン・サマーフェスティバル、ローンチ!」
「スイッチ、オォォォン!!!」
ガチャン、とエレンが起動レバーを倒す。
次の瞬間、シルバーストーン領の夜空は、世界の理を完全に塗り替える「光と音の暴力」に支配された。
◇
同じ頃。
シルバーストーン領の境界付近、深い森の茂みの中。
「没落したはずの領地が世界を滅ぼす兵器を隠し持っている」というこれまでの凄まじい極秘報告(※ただのQOLハックです)を受け、
隣領の伯爵が「実力行使で双子を排除する!」と密かに派遣した、精鋭の重装騎士団50名、そして彼らを案内するボロボロの超一流隠密は、
夜襲を仕掛けようと領地へ一歩踏み込んだその瞬間、目の前の光景に全員が石のように凍りついた。
「な、なんだぁぁ!? 雷も、雨もない夏の夜空に……無数の『火の玉』が浮かび上がったぞ……!?」
騎士団長が、腰の剣をガタガタと震わせながら絶叫した。
彼らの頭上、静まり返った夜空に、
「キィィィィィィィン……」という、ベアリングの快音を響かせながら、
赤、青、緑、黄、五色に怪しく輝く「数百の謎の飛行物体」が一斉に飛び立ち、
夜空のキャンバスに、一糸乱れぬ等速幾何学フォーメーションで、巨大な「髑髏(※ただのハロウィン風アニメーション)」や「魔方陣」を描き出し始めたのだ。
さらに、地上の広場からは、鼓膜を直接引き裂くような、バチバチ、バリバリという凄まじい爆音が響き渡る。
バチバチバチバチバチッ!!!!
「ひ、ひぃぃぃっっっ!!! 電撃だ! 空間そのものが青白い雷撃で引き裂かれているぞ!!!」
隠密は、耳を塞いで雪(のような泥)の中に狂い転げた。
庭に設置された2基の巨大なテスラコイルから、長さ5mを超える青白い強烈な稲妻が空間に放電され、
その放電のバリバリという凄まじい衝撃波の周波数が、前世の脳溶かしユーロビートのメロディとなって夜空に鳴り響いている。
まるで、大自然の稲妻そのものが、双子の奏でる「魔王のダンスミュージック(※ハガキ職人の深夜ラジオテーマソング)」となって世界を震わせているかのようだ。
極めつけは、空間に突如として立ち込めた白い霧のスクリーン。
そこに、サーチライトの極大ビームが投射された、その瞬間。
ピガァァァァァァァァァン!!!!!
天を覆い尽くさんばかりの、全高30mを超える、
赤と青に怪しく光り輝く「邪悪な笑みを浮かべてこちらをじっと見据える、超巨大な銀髪の双子の立体ホログラム(※ただの3Dアニメーションです)」が、
夜空の雲の上にどっしりとそびえ立った。
『――アリス、第50話の盛り上がりは最高潮ね!』
『ええ、エレン。私たちのエレクトロニカルパレードで、この世界の古臭い夜を、一瞬で私たちの『お気楽な帝国』にアップデート(塵に)してやりましょう!』
爆音のユーロビートと、稲妻のバリバリという放電音に載せて、天から降ってくる巨大な双子の声。
「ま、間違いない……!!!」
騎士団長は、あまりの圧倒的な終末の光景に、持っていた剣をその場に放り出し、涙を流して地面にひれ伏した。
「あれは……天空に浮かぶ数万の魔術子機を通信グリッドでリンクさせ、地上のすべての都市に、大自然の怒りを遥かに超える無制限の雷撃を叩き落として一瞬で焦土にする、終末の広域殲滅魔導システム――『アルマゲドン・グリッド』だ……!!!!! 天に……天に我々を嘲笑う、巨大な双子の魔王の幻影が浮かんでいる……! もう世界は終わりだあああああ!!!!」
「ひ、ひぃぃぃ! 脳が、脳髄が、あのバキバキ鳴り響く『魔王の歌(※ユーロビートです)』でハックされて、勝手に身体が踊り狂ってしまうぅぅぅ!!! 降伏だ! 全面降伏だべぇぇぇ!!!」
案内役の隠密も、かつてない規模の「宇宙・精神・物質すべてを支配する破壊兵器(※ただの野外フェスです)」を前に、脳のキャパシティが完全にメルトダウン。
重装騎士団50名は、戦う意志を1ミリも残さず、全員がその場に武器を投げ捨てて「お赦しください、双子の魔王様……!」と、ただの深夜の電子パレードに向かって、号泣しながら地面に頭を擦り付け、ひれ伏し続けるのだった。
◇
深夜。
パレードも無事に終わり、集まった領民の子供たちとポップコーン(第39話)を食べ、コーラ(第42話)を飲み干し、
地熱床暖房がぽかぽかと効いたリビングで、ぬくぬくとコタツ(送風モード)に潜り込む双子。
「ぷはぁー! やっぱり、領民みんなで踊り狂った後の、冷たいハチミツミルクは脳髄のQOLを極限突破させるわね、アリス」
「ええ、エレン。これまでのDIYの技術がすべて一つに繋がって、完璧な『お祭り(QOL)』が完成したわ。科学と、私たちの趣味の完全勝利ね」
「「ふふふふ……」」
窓の外では、月明かりの下、ガシャガシャと木製のお掃除ロボ(第36話)が、静かにパレードで散らかった紙吹雪を掃き清めていた。
領内には、目に見えない「極限の通信工学・電気・幾何光学」と、隣領の軍勢を一人残らず号泣・降伏させ、国家崩壊レベルの絶望に陥れる「天から数万の雷撃を落とし、脳を洗脳して世界を灰にする、恐るべき終末のアルマゲドン・グリッドの噂」が、優しく、そして最高にお気楽に広がり続けるのだった。




