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第24話:ようこそ、シルバーストーン・コンビナートへ!

「いい? エレン。需要が10倍になったからといって、労働時間を10倍にしてはダメよ。それはブラック企業のすることだわ! 優れた教育者にして経営者たるもの、大人たちの『労働力』を適切な時給インセンティブで買い取り、生産ライン(工程)を徹底的に細分化して『大自動化コンビナート』を構築するのよ!」

「アリス、言ってることはホワイト企業のかがみみたいだけど、出来上がろうとしている木造の巨大工場群、どう見ても異世界ののどかな農村に突如出現した『産業革命の要塞』だよ!?」


シルバーストーン領の小川沿い。そこには、これまでのどかだった田園風景を完全に塗り替える、木造の巨大なコンビナート(大工場群)がそびえ立っていた。


王都の令嬢たちをステマグラビアで狂わせた結果、注文が激増したビール、アイス、そして最新ドレスの生地。

胃に穴を空けそうにしている父様を救い、かつ自分たちの「最高級チタンボルトや特注ベアリング」の購入資金を天文学的に増やすため、双子はついに領地の大人たちを巻き込んだ『産業・インフラ改革』へ打って出たのだ。


「さあみんな! 今日からここは『シルバーストーン第一製造コンビナート』よ! 時速……じゃなくて、時給はなんと隣街の炭鉱の1.5倍! 残業なし、3時のおやつには試作型のアイスクリーム付きよ!」

アリスが拡声魔導具を片手に高らかに宣言すると、集まった領民の大人たち(農夫や主婦層)から「おおおっ!」「双子様、一生ついていきます!」と割れんばかりの歓声が上がる。


ここからの双子の特殊能力『二心同体デュアル・コア』の処理能力は、完全に国家規模のシンクタンク並みだった。


アリス(理論・工程管理担当)が、前世のフォード社が確立した「ベルトコンベア式移動組み立てライン」の概念を脳内で再現。大人たちの適性(体力、器用さ、集中力)を瞬時にデータ化し、無駄のない「最適配置シフト」と「コンベアの搬送速度」を秒単位で計算していく。

そして、その莫大な設計データを、相方であるエレン(実技・施工担当)の視界へ、色分けされた3D配管図面としてダイレクトに爆射(同期)する。


(エレン、中央のラインは『ビール醸造・ボトリング部門』よ! 水車の動力を引き込んで、木製ローラーのコンベアを右から左へ秒速50センチで回して! 右奥のラインは『蜘蛛糸精製・テキスタイル部門』! 蒸気(湯気)を使った乾燥ギヤを直結させて!)

(オーライアリス! 『広域・精密魔力クラフト』、最大出力でいくよ!)


エレンが両手を地面に突き、魔力を解放する。

ズズズ、ガガガガガッ! と地鳴りを立てて、魔の森の極硬木で組まれた巨大な「木製ベルトコンベア」や、真鍮のギヤが噛み合う「自動瓶詰め(ボトリング)装置」、さらには蜘蛛の糸を均一に織り上げる「全自動織機」が、まるで生き物のように連結され、コンビナートの内部を埋め尽くしていく。


通常なら国家が数年かけて進める産業革命のインフラ整備だが、アリスの「超近代的な工場レイアウト」とエレンの「一瞬でプラモを組み立てるような神速の工作力」の前には、わずか数日で「異世界初の全自動大工場」が稼働準備を終えた。


「よし、生産ライン、起動ライン・オン!!」


アリスが中央のレバーを引くと、ガチャン!!! と爆音が響き、水車の濁流のようなパワーがギヤを通じてコンビナート全体へと行き渡った。


木製のコンベアが、カタカタカタと滑らかに回り出す。

「さあ、第一ラインの麦踏み担当のおじさんたち! 流れてくる樽に、計算通りの比率でホップを投入して!」

「第二ラインのお姉様方! 織機から自動で出てくるドレス生地の検品、糸くずのカットをお願い!」


大人たちは最初、「機械が勝手に動いてる……」と腰を抜かしていたが、アリスが徹底的に細分化した「一つの作業だけを繰り返せばいい」という超シンプルな工程管理のおかげで、数分後には完璧にラインに適応していた。

何しろ、難しい魔力制御や職人の勘は、全てエレンが削り出したギヤとカムの機構(物理)が勝手にやってくれるのだ。大人たちは流れてくるものを目で見て、手を動かすだけでいい。


「すご、凄すぎるぞ……! いつもなら丸一日かかるビールの瓶詰めが、コンベアの前に座っているだけで、一瞬で百本も終わっちまった!」

「この織機、勝手に蜘蛛の糸を最高級のドレス生地に変えていくわ! 私たち、ただ横で巻き取るだけ!?」


コンビナートの排出口からは、完璧な品質でパッキングされたビール瓶や、目の詰まった美しい生地のロールが、ガチャン、ガチャンと恐ろしい秒速のペースで次々と吐き出されていく。


アリスは寝椅子にふんぞり返り、脳内の「リアルタイム生産性グラフ」が右肩上がりに爆発していくのを見て、フハハハと邪悪に笑った。

「完璧だわエレン。これなら王都からの10倍の注文なんて、週に3日の稼働で余裕でクリアよ。労働生産性が前世のイギリス産業革命初期の約8倍をマークしているわ!」

「それは良かったけど、アリス。ほら、そこ、第三ラインのギヤの噛み合わせが摩擦熱でちょっとズレそうだよ」

エレンがストローでアイスを食べながら指をパチンと鳴らす。


『二心同体』の真骨頂は、アリスが経営管理に没頭していても、エレンの職人肌のセンサーが工場の「わずかな異音」や「金属疲労」を感知し、寝そべったまま遠隔で微小な魔力を送り込んでパーツのズレを『ポイント修復』できる点にある。まさに、世界で最も甘やかされた(?)工場長と総監督の姿がそこにあった。


夕方、定時退勤の鐘が鳴ると、大人たちは「もう終わり!?」「全然疲れてないのに、こんなにたくさんのビールが作れるなんて!」と大騒ぎ。

しかも、アリスから約束通りのピカピカの銀貨(時給)と、おやつの冷え冷えアイスを手渡されると、領民たちのテンションは限界を突破した。


「双子様は、没落領に現れた産業の神様だ!!」

「この工場で働けば、家が建つぞ!!」


大人たちが歓喜のステップを踏みながら市場へ走っていく。領内にお金が回り、一気に活気が満ち溢れていく。


その様子を、王都からの追加の金貨の袋を抱えて帰ってきた父様が、呆然と見上げていた。

「……妻よ。私が王都で胃を痛めている間に、我が家の裏庭の小川が……『煙突のない巨大工場地帯』になっているんだが……」

「あらあなた、お帰りなさい。あの子たちが作った工場のおかげで、我が家の財政はもう王都の侯爵家並みよ。さあ、冷えたビールを飲んで元気を出して?」

母様は、すでに領地の最高経営責任者(CEO)の夫人としての風格を漂わせ、優雅に微笑んでいた。


「ふふふ、父様、お疲れ様。王都から『チタンボルト』のサンプルは届いたかしら?」

アリスが悪い笑みで出迎える。

「届いたよ……ギルバートが『これで一体何を作る気だ』って不気味に笑ってたけど……」

父様がガタガタ震えながら差し出した箱の中には、超軽量・高強度の「チタン合金製ボルト」が鈍い輝きを放っていた。


(アリス! チタンキタコレ! これでボトムブラケットのスピンドルとフレームの接合部をフルチタン化できる!)

(ええ、エレン! 領地を大自動化して稼いだクソデカ資金で、ついに『重量6キロ台・宇宙決戦仕様の超軽量ロードバイク』をDIYするわよ!)


大人たちを幸せにし、領地を近代化し、その莫大な富を全て「自分たちの究極のチャリのネジ一本」に注ぎ込む。

銀髪の双子によるお気楽極楽な産業革命は、父様の胃痛を置き去りにしたまま、いよいよ人類未踏のハイテク自転車開発へとペダルを踏み込むのだった。

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