第137話:聖樹の森に響く不気味なハミング(と、自慢の髪と耳を極楽に洗う全自動アロマヘッドスパドーム)
「……アリス、聞こえる? 私たちのQOL(生活の質)メーター(お肌のスキンケア部門)が、この常夏ドライコタツ(第65話仕様)のなかで完璧なぬくぬくライフを送っているというのに、お顔の『さらなるもちもち感』を求めて、大脳新皮質からかつてない強烈な求道パルスを送信し始めているわ……!」
「聞こえるわエレン! 確かにおでん(第72話仕様)やスフレパンケーキ(第107話仕様)、そして極上のお酒(第109・110話仕様)で胃袋と喉はカンストしたけれど、最後の仕上げが必要よ。お肌を赤ちゃん(※今も幼児だけど)のようにもっちもちにするという、エルフの森にしか自生しない天然の神秘ハーブ『ミルラの涙(極上アロマオイル)』が絶対に不可欠よ! ターゲットは、光の屈折と風を操る『迷いの結界』に閉ざされた不帰の魔境――『エルフの聖樹郷』よ!」
シルバーストーンQOL巨大観光特区のリビング。
完璧に除湿されたコタツの中で、キンキンに冷えたハイボール(第136話仕様)を啜りながら、銀髪の双子は、脳内の専用回線を新たな「スキンケア(アロマハーブ)熱」で同期させていた。
前世は三十代の理科教師、成瀬健一。その知識と異世界チート能力を駆使し、お気軽極楽に「極上の夜会(おうちBar)」にスキンケアエステを合体させるため、双子の超絶同調が再び火を噴いた。
「でもアリス、あのエルフの森は、何千年も外敵の侵入を拒んできた『光の屈折幻影結界』が張り巡らされているわ。普通に突入したら、脳の空間認識を完全にバグらせられて、一瞬で崖から転落するわ!」
「フッフッフ、弱気ねエレン。光の屈折なんて、ただの波長と位相の物理現象よ。光の干渉とスネルの法則の限界をハックする『アクティブ位相変調ゴーグル(VR仕様)』と、木々の間を滑走する『クモの糸3D立体機動アタッチメント』をDIYして、お気軽にお散歩気分で突破するわよ!」
「最高ねアリス! 物理の力で結界を消し去るのね! 私の『超精密魔力クラフト・一体成形(120,000 rpm)』、出力最大でいくよ!」
二人の脳細胞がフル回転を始めた。
アリス(理論・設計・光学担当)が、光の波長の位相差をリアルタイム測定し、光軸を自動補正して視界をクリアにする、波動光学の設計図を脳内に展開する。
θ limit = \sin⁻¹(n₂/n₁)
「(結界の屈折率n₁と、周囲の大気屈折率n₂の差から、全反射の限界角 θ limitを逆算するわ! 光の位相が180°反転している境界を相殺するために、ゴーグルの液晶シャッター(第13話仕様応用)をミリ秒単位で同期明滅(PML)させるの。エレン、この光軸ガイドラインに沿って、チタン製フレームと水晶レンズ(第45話仕様)のVRゴーグルを成形して!)」
「設計図ロックオンしたわ、アリス! 蜘蛛の糸カーボン(第28話仕様)のハーネスと、空中を爆走する多段ギヤアセンダー(第45話仕様)も、一瞬で組み上げてあげる!」
エレン(実技・精密加工・物理演算担当)の指先から、バチバチと精密な魔力放電が散る。
一人が「波動光学&位相差キャンセラー(ソフト)」、一人が「ナノ精度放電カッター&高強度繊維編み込み(ハード)」。
双子の超絶同調により、わずか数時間で、頭にお揃いのピンクのサウナハット(第51話仕様)を被り、顔面に不気味な「真鍮製VRゴーグル」を装着した、異形のお気軽探検スタイルが爆誕した。
◇
数時間後。
何千年も誰も突破できなかったという、美しくも不気味な光の幻影が渦巻く「エルフの聖樹郷・迷いの森」。
シュバッ!!! カチャカチャカチャ!
「あ、ここ、光の位相が180°反転してるわ。エレン、右へスライド!」
「了解お姉ちゃん! カチャカチャ、シュバッ!」
双子は、不気味な真鍮のゴーグルを被り、
完全な無言(※脳内共有のテレパシーです)のまま、
木々の間をアイアンスパイダーの蜘蛛の糸で「カチャカチャ、スサササッ!」と、空中を縦横無尽に爆走し、
エルフの結界の光の屈折(幻影)を、ゴーグルのリアルタイム物理補正によって完全に無力化しながら、お散歩気分で一瞬にして聖樹郷のど真ん中へと着地した。
「し、侵入者……!? 何千年も破られなかった我が郷の結界を、一瞬で、無音で突破したというのか……!?」
聖樹の広場で、ハーブを摘んでいたエルフの長老や、美しい長い金髪をなびかせたエルフの長たちが、
「カチャッ、スサッ」と着地した、ピンクのサウナハットを被った小さな双子の悪魔を見て、
絶望と驚愕のあまり、持っていた弓やハーブの籠を床に落として腰を抜かした。
「神聖なエルフの森を何とする! 命が惜しくば、立ち去――」
エルフの長が、美しく尖った耳を激しく震わせながら弓を構える。しかし。
「あ、エルフさん」アリスが、コタツから伸ばしたような(※立っています)だらしない姿勢のまま、お気軽に向かって小首を傾げた。
「その自慢の美しい長い金髪と、お洒落な尖ったお耳……。森の湿気と乾燥のせいで、キューティクル(第40話仕様)が深刻なパサつきを起こして、髪の毛が死んでるわ。おまけに、お耳の穴の中も湿気で大変なことになってるわね。非常に非科学的であり、お肌のQOLに対する冒涜よ!」
「な、何だと……!? わたくしたちエルフの美しさを、パサついているだと……!?」
エルフの長たちが、美意識をダイレクトにディスられ、うろたえる。
「そうよ。だから、今すぐその『ミルラの涙(神秘ハーブ)』を少し分けてちょうだい。お礼に、私たちの科学の力で、あなたの髪とお耳のQOLを極限まで『ととのわせて(第51話仕様)』あげるわ!」
「お姉ちゃん、アロマの抽出完了よ! 『減圧蒸留・アロマブースター(第111話仕様)』で、ミルラの精油を一瞬で黄金の雫に変えちゃったよ!」
エレンが、持ってきたポータブルチタン圧力鍋(第96話仕様)のバルブをひねり、
「シューーーーッ!」と、ハチミツとカモミール、そしてミルラの極上のアロマが漂う「黄金のミスト」を放出した。
「お、おい……なんだこの、嗅いだだけで頭皮のコリが一瞬で消え去るような、暴力的で甘美な香りは……!?」
「さあ、おそるおそる頭を突っ込みなさい! 世界初の『全自動アロマ温水循環ヘッドスパ・お耳ととのいドーム(第62・104・130話仕様合体)』の起動よ!」
エレンが、エクスプレス(第136話仕様キャリア)から、120,000 rpm精密削り出しでその場で爆速DIYした「真鍮製のドームヘルメット」を、エルフの長の頭にスッポリと被せた。
アリスが「音響剥離システム、出力20%、温水循環、起動よ!」とピエゾ水晶(第62話仕様)のスイッチを入れた。次の瞬間。
キキィィィィィィィィン……!!!!!
シュルルルルルルルルルッ!!!!!
「はぅ、あ、ひぃぃぃぃぃぃん!!!???」
エルフの長の口から、およそ誇り高きエルフの長とは思えない、魂の底からとろけた奇怪な絶叫が漏れ出た。
ドームの内部では、アリスが調合した極上ミルラオイル入りの温水シャワーが、コアンダ効果(第58話仕様)によって頭皮を優しく均一にマッサージ(血流向上)し、
さらに、お耳の奥に差し込まれた極細チタン針(第62話仕様)から放たれる28kHz の超音波微細振動が、耳の奥のコリと汚れを物理的に「フワッ」と浮かび上がらせ、ベンチュリ効果でシュルルルと無音吸引していく。
「な、なんだこれは……! 頭皮の奥が、お耳の奥が、温かいアロマの微細振動で物理的にとろけて……、髪の毛が、髪の毛がシルクのようになめらかになっていく……! QOL完全降伏(昇天)ですぅぅぅ!!」
エルフの長は、完全に白目を剥き、芝生の上に「もう森の防衛とかどうでもいいべさ……」とサウナハットならぬ「アロマヘッドスパ・ハット」を被ってドロドロの軟体動物のように崩れ落ち、完全降伏した。
それを見たエルフ族全員が、「お、オレも!」「わたくしもそのお耳ととのい(QOL)を!!」と、プライドを完全に木っ端微塵にされて双子の前にひれ伏し、列を作り始めた。
◇
深夜。シルバーストーン特区の屋敷。
リビングのコタツ(除湿ドライモード)を囲む、シルバーストーン家の一同。
テーブルの上には、お礼に「ミルラの涙」をボトルに大量にプレゼントされ、
お肌が赤ちゃん(幼児だけど)のようにもっちもち、髪の毛が銀色のシルクのようにツヤツヤになったアリスとエレンがいた。
コタツの周りには、すっかりアロマとお耳かきで骨抜きにされ、
「このコタツ、実にお耳のQOLが高いべさ……」
と、幸せそうな笑顔で、お揃いのスウェットを着ておでん(第71話仕様)を突き、熱燗(第109話仕様)を煽りながら、
深夜のカードゲーム大会(第101話仕様)で大絶叫・大爆笑しているエルフの長たちの姿。
「私のターン、ドロー! お抹茶点て方カード(第108話)発動よ!」「いや、それには『ピザ窯の烈火』でカウンターだべ!」
「ぎゃあああ! わたくしの最後の一枚のクッキーがぁぁぁ!!」
深夜の屋敷から響き渡る、大爆笑と楽しげな大歓声。
そこには、かつての「結界の恐怖」や「不帰の魔境の影」など微塵もなく、ただ、美味しいお酒と極上のスキンケア、そしてゲームに熱狂する、異世界で最も賑やかで温かい「おうちコタツBar」の光景が広がっていた。
「「ふふふふ……」」
お互いのもちもちのお肌と、さらさらツヤツヤの髪(第40話仕様)を優しく撫で合いながら、ハチミツレモネードを片手にその様子を眺める小さな双子。
「計画通り、エルフの美意識をハックして、今夜もみんなを完璧にコタツの底(だらだら仲間)に引きずり込めたわね、アリス」
「ええ、エレン。ミルラのアロマ蒸留と、ピエゾ超音波ヘッドスパの数理モデルの完全勝利よ。これで私たちのスキンケアQOLは完璧ね。科学の完全勝利よ」
窓の外では、月明かりとネオンの光(第105話仕様)の下、ガシャガシャと走る木製のお掃除ロボ(第36話)が、静かに庭の雪を掃き清めながら、コタツから漏れ出る香ばしいおでんの匂いと楽しげな笑い声を、優しく、そして最高にお気楽に、世界中に広げていくのだった。




