第135話:大地を温める無のストーブ(と、ゴミ出しの義務から人類を解放して街を世界一美しくする究極のニート天国インフラ)
「……エレン、聞こえる? 私たちのコタツBar(第105話仕様)が、おでん(第72話)やすき焼き(第128話)、そして前回のスモークローストポーク(第133話)という、冬のQOL(生活の質)の極致を制覇した代償として、今まさに『大量に蓄積される生ゴミ、骨、空きボトル』という名の、非生産的で邪悪な廃棄物テロに直面しているわ……!」
「聞こえるわアリス! というか、共有されている私の大腿四頭筋も、せっかくコタツでだらだらしているのに、毎朝『ゴミ捨て』という名の物理的重力負荷(家事)のために、布団の温かさ(第47話)を振り切って外に出なければならない不条理に、怒りの乳酸を沸騰させているわよ! QOLを極めた私たちが、なぜこんな『原始的な雑務』に追われなきゃいけないの!」
シルバーストーン巨大観光特区のリビング。
完璧に除湿されたドライコタツ(第65話仕様)の中でハチミツコーラ(第42話仕様)を啜りながら、銀髪の双子は、脳内の専用回線をかつてない「ゴミ出し撲滅熱」で同期させていた。
前世は三十代の理科教師、成瀬健一。
その知識をこれでもかと無駄遣いし、お気軽極楽な「究極のだらだらライフ」を完成させるためには、生活の中の「地味だが無視できないストレス(家事)」を完全に自動化・消滅させる必要がある。
「いい、エレン? ゴミ捨てをこの世界から完全に駆逐する究極のソリューション、それは『プラズマ超高熱分解』よ! 前回の火山大冒険(第134話)で持ち帰った、融点4,500℃を超え、熱エネルギーをロスなしで100%電力と魔力に変換できる『超伝導マグマチタン』を炉心に使用するの。ゴミを放り込むだけで、分子の結合を完全に引きちぎってプラズマ分解し、さらにその熱量を100%回収して特区全体の『無制限床暖房エネルギー』に変える、全自動ゴミ消滅エコ暖炉『マテリアル・ループ・ストーブ』をDIYするわよ!」
アリス(理論・設計・分子化学担当)が脳内の黒板に、化学動力学におけるアレニウスの式を書き殴る。
k = A e⁻Ea/RT
「(プラズマ温度Tを約4,000℃の極限に維持することで、活性化エネルギーEaの障壁を一瞬で突破し、反応速度定数kを無限大にしてあらゆる分子(デンプン、炭素、ガラス)を原子レベルに熱分解するわ! さらに、分解した炭素や珪素(無機物)の原子配列を、第22話の3Dプリント技術を応用して再構成し、お隣の排出口から『新品の綺麗なチタングラス』や『お庭のイチゴ用の完全無臭有機肥料』としてコロンと再生させるのよ!)」
「最高よアリス! ゴミが新品のコップやイチゴの肥料になって戻ってくるのね! 私の『超精密魔力クラフト・3次元チタン切削(120,000 rpm)』、出力最大で最高のエコ暖炉を物質化してあげる!」
エレン(実技・精密加工・物理演算担当)の指先から、バチバチと精密な魔力放電が散る。
アリスが脳内スパコンで計算した「超伝導熱電変換グリッド」の3D設計図に重ねるようにして、エレンは超伝導マグマチタンのインゴットを一瞬で極厚の多層炉心へと削り出し、真鍮製のプラズマ点火電極と、サイフォン式(第103話仕様)の無音吸気バルブを完璧な精度で組み上げていった。
一人が「プラズマ分子解離&アレニウス化学動力学シミュレーター(ソフト)」、一人が「耐熱マグマチタン成形&3Dナノ分子再構成グリッド(ハード)」。
双子の超絶同調により、リビングの壁面(コタツのすぐ横)には、漆黒に輝く超伝導マグマチタンのボディを誇り、内部に不気味なほど青白く輝くプラズマを湛えつつ、周囲には1ミリの廃熱も漏らさない完璧な断熱構造の、お洒落な『全自動ゴミ消滅エコ暖炉』が爆誕した。
◇
「よし、エレン。システム、オールグリーンよ! からくり吸気バルブ、アクティブ! プラズマ炉心、チャージ!」
「スイッチ、オォォォン!!!」
ガチャン!
エレンがコンロの真鍮レバーを倒すと、暖炉の内部で「ポッ……」と無音に近い、だが澄んだ青白いプラズマの光が静かに揺らめき始めた。
その時、リビングのドアがガラッと開き、
サウナハット(第51話仕様)を被ったお庭番アルドと、スウェット姿(第81話仕様)のイゾルデ、そして両親が、昨晩のホームパーティーの残骸(手羽先の骨が入ったバケツ、空き瓶)を両手に抱えて入ってきた。
「お嬢様方、おはよおごぜえますだべ。今日も特区のゴミ拾い(第36話お掃除ロボ点検)を終えたから、この大量のゴミをゴミ捨て場まで馬車で運んでくるべ……。ハァ、腰が痛いべさ」
アルドがよろよろとバケツを置く。イゾルデも、
「ええ……。アストレア公爵領(第69話仕様)の気品あるわたくしが、なぜ毎朝この生ゴミの重力(重量)に耐えねばならないのか……。ああ、QOLが……わたくしの朝のQOLが、生ゴミの重さで引きちぎれそうですわ……」
と、トロンとした涙目を浮かべてスウェットの袖を震わせていた。
「あら、みんな。ちょうどいいところに」アリスがコタツからにやりと不敵に笑う。
「そのバケツ、そこにある『マテリアル・ループ・ストーブ』のハッチの中に、そのままゴミを放り込んでごらんなさい」
「えっ? こ、この、不気味に青白く光っている黒いチタンの箱に、生ゴミを……ですか?」
イゾルデが怯えながら、手羽先の骨と、焦げた焼きそばの残りをハッチの投入口へ恐る恐る近付けた。
その瞬間。
シュポッ、フワッ……。
自動センサーが水分と生体を感知し、サイフォン吸引バルブが無音で作動。
イゾルデの持っていた手羽先の骨や、アルドの空き瓶、生ゴミが、まるで空気のクッションに吸い込まれるように、一瞬にしてハッチの奥へと吸い込まれて消え去った。
「「「「ひ、ひぃぃぃっっっ!!!」」」」
アルドもイゾルデも、お父様エドワードもお母様レイラも、全員が顔面を土気色にして、コタツの布団をギュッと抱きしめ、お揃いの目隠し(第70話仕様)を慌てて巻き直して、その場に崩れ落ちた。
「お、おい……アルド! 奴ら、ついにこのリビングのど真ん中に、近づく物質をすべて分子レベルで引きちぎって虚無の彼方へ消滅させる、超重力崩壊ブラックホール『デス・アビス』を開きおったぞォォォ!!」
イゾルデが失禁せんばかりの勢いで絶叫する。
「お、お赦しください、空間を支配する双子の魔王様……! 我々を……どうかブラックホールに吸い込まないでくださいぃぃぃ!!」
「いや、本当にただのゴミ箱(暖炉)ですってば……。ほら、横の排出口を見てごらんなさい」
エレンが呆れたように、ストーブの横を指差した。
カラン、コロン……。
チタン製の排出口から、不気味なほどツヤツヤと輝く「新品のガラスコップ(※空き瓶のガラス成分を再構成したものです)」と、
そして、袋に入った、全くの無臭でありながら、植物の成長を10倍に加速させる「最高級の有機栄養堆肥(※生ゴミの炭素と窒素をアミラーゼハックしたものです)」が、お気軽に転がり出てきた。
さらにその瞬間、超伝導マグマチタンの熱電変換により、
ゴミが消滅した熱エネルギーが100%床暖房の魔力へと変換され、
屋敷全体、ひいては特区全体の領民の家庭の床下までが、
「フワッ……」と、春のひだまりのような極上のぬくもり(摂氏24℃)で完璧に満たされていった。
「……あれ? 骨と空き瓶を入れたら、新品のコップと、お庭のイチゴがもの凄く美味しく育ちそうな無臭の肥料になって戻ってきたべ……?」
アルドが目隠しをそっと外し、コップを手に取って驚愕する。
「な、何これぇぇぇ! 部屋が……部屋がお掃除ロボ(第36話)も動かしていないのに、一瞬でホコリ一つない世界一クリーンな空間になり、しかもゴミを捨てれば捨てるほど、特区全体のお家がポカポカに温まる(床暖房がブーストされる)なんて……!! 私たちの毎朝のゴミ出しの労働が、一瞬にして完全消滅してしまいましたわーーーっ!!」
イゾルデも、おでこにヘッドランプ(第45話仕様)を輝かせたまま、ツヤツヤのお肌(第76話仕様)を揺らして、コタツの上にべったりと突っ伏した。
「お嬢様、これ凄すぎるべ! ゴミを放り込むだけで街が世界一綺麗になって、勝手にお家が温まるなんて、俺たち、もう毎朝ゴミ捨てのために早起きして働く必要が1ミリもねえべ!!」
「ええ……! シルバーストーン特区、本日をもって、世界一綺麗な、誰も働かなくても街が美しく温かいまま保たれる『究極のニート天国』として、QOL完全降伏(永久スリープ)を宣言しますわぁぁ!!」
アルドとイゾルデ、そして150名の元騎士のバイトメンバーたちは、
ゴミ出しの義務から完全に解放された喜びと、コタツのぬくもりに抗うことができず、
「極楽じゃ……」「一生ここでだらだら暮らすべ……」と涙を流し、
白目を剥いて幸せそうな笑顔を浮かべ、コタツの底へドロドロに溶けるように沈み込み、爆睡してしまった。
「おやおや、アリス、エレン。この『マテリアル・ループ』、ゴミ問題を解決しつつ、僕たちのウイスキー用の新しい新品グラスまで自動で作ってしまうなんて、本当に素晴らしいインフラだねえ」
「本当にねえ、エドワード。お家の中が常に無菌・無臭でポカポカ温かくて、ビール(第6話仕様)とポテトチップス(第94話仕様)が無限に進んでしまうわねえ」
父エドワードと母レイラも、新しく吐き出された綺麗なコップにウイスキー(第110話仕様)を注ぎ、コタツの上で「極上のニートライフ」を満喫していた。
「「ふふふふ……」」
お互いのさらさらツヤツヤの髪(第40話仕様)を優しく撫で合いながら、大はしゃぎでハイタッチを交わす小さな双子。
「計画通り、超伝導マグマチタンのプラズマ熱分解で、特区全体のゴミストレスを完全駆逐したわね、アリス」
「ええ、エレン。アレニウスの式と3D再構成分子グリッドの完全勝利よ。これで私たちのQOLは、ゴミ出しの義務すら存在しない、宇宙一だらしなくて美しい『ニートの帝国』として維持されるわね。科学の完全勝利よ」
窓の外では、月明かりとネオンの光(第105話仕様)の下、ガシャガシャと走る木製のお掃除ロボ(第36話)が、もう拾うべきゴミが1粒も残っていない世界一クリーンな庭を、ただ静かに、そして最高にお気楽に掃き清めていた。
新章を迎えたシルバーストーン巨大観光特区には、目に見えない「極限のアレニウス熱化学・3D分子再構成技術」と、隣領の貴族や王都の役人たちを「近づいた人間を一瞬で分子レベルで吸い込んでチタングラスに変える、恐るべき無のストーブの噂」が、優しく、そして最高にお気楽にコタツを温めながら、広がり続けるのだった。




