↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
116/141

第116話:氷穴の結晶と光の迷宮

「……アリス、聞こえる? 私たちのQOL(生活の質)メーター(夏の終わり部門)が、お化け屋敷(第114話)やおでん(第72話)を乗り越えた今、喉の奥深くから、脳髄をクリスタルのように凍りつかせる『キーンとした冷たさと炭酸の暴力』を求めて、かつてない強烈なSOSパルスを送信しているわ……!」

「聞こえるわエレン。というか、共有されている私の大脳皮質も、スパイラル・チュロス(第115話)の濃厚なハチミツの甘みの後に、あの前世の夏の縁日で愛した、お洒落な『フローズン・メロンソーダ(スラッシュ)』をストローで一気にがぶ飲みさせろと暴動を起こしているわ。ただの冷たいジュースじゃ、夏のテーマパークQOL(シルバーストーン・ランド)の頂点には届かない。科学の力を無駄遣いして、飲む瞬間に一瞬でフローズン化する、究極の瞬間相転移ソーダをDIYするわよ!」


シルバーストーンQOL巨大観光特区のリビング。

完璧に除湿されたドライコタツ(第65話仕様・冷風送風モード)でハチミツレモネードを啜り、ツルツルお肌(第76話仕様)をファンにさらしていた銀髪の双子は、脳内の専用回線(テレパシー)を新たな「瞬間冷却熱」で同期させていた。


前世は三十代の理科教師、成瀬健一。

その知識とチート能力を駆使し、お気軽極楽な「涼」の極みを再現するため、双子の超絶同調(デュアル・コア)が再び火を噴いた。


「いい、エレン? 常温の炭酸飲料を一瞬で極上のシャリシャリ食感(フローズン)にするにはね、高圧ガスが膨張するときに熱を奪う『ジュール=トムソン効果』と、液体が凍る一歩手前で踏みとどまる『過冷却(スーパーコーリング)』の熱力学的コントロールが絶対条件よ! 高圧二酸化炭素の断熱膨張による温度降下ΔTJ の公式はこれよ!」


 ΔTJ = μJTΔP


「(ここでジュール=トムソン係数をμJT、圧力降下をΔPとするわ! 炭酸ガスの急激な気圧解放を利用して、メロンソーダが入った二重ガラス瓶(第35話仕様)の周囲を、一瞬で『マイナス10℃』まで急冷する冷却ジャケットを設計して。さらに、ヘンリーの法則 C = k・Pgas に基づき、メロン果汁(第30話仕様)を配合した強炭酸水を、凍る寸前のデリケートな過冷却状態でピタリと維持するの。瓶をテーブルにトントンと叩きつけて『物理的衝撃』を加えた瞬間――過冷却のエントロピー障壁が崩壊し、一瞬にして氷晶が析出して、滑らかなフローズン(スラッシュ)へと瞬間相転移するわ!)」

「最高よアリス! 衝撃で一瞬で凍る魔法のフローズンね! だったら、私の『超精密魔力クラフト・3次元切削(120,000 rpm)』で、チタン製の急速断熱膨張冷却ジャケットを物質化してあげる!」


エレン(実技・精密加工・物理演算担当)の指先から、バチバチと精密な魔力放電が散る。

アリスが脳内CADで算出した「ヘンリーの法則溶解度シミュレーション」の3D設計図に沿って、エレンはガラクタのチタンプレートを一瞬で高圧シリンダーへと削り出し、二重耐圧ガラス瓶の周囲に完璧にセットした。

一人が「熱力学相転移&気体溶解平衡解析(ソフト)」、一人が「ナノ精度放電カッター&精密気密シールアッセンブル(ハード)」。

双子の超絶連携により、台所のテーブルの上に、シュワシュワと妖しく緑色に発光する炭酸水が満たされ、底部の真鍮バルブから白い冷気をうっすらと吐き出す、お洒落な『瞬間相転移メロンフローズン・アビス』が爆誕した。


◇


「よし、エレン! プレ冷却完了、メロン炭酸液、完璧な過冷却(摂氏マイナス4℃)状態をキープよ。衝撃相転移、起動(ローンチ)!」

「いっくよーーー! トントンッ!」


エレンが、お洒落な真鍮のコップの底を、庭のテーブルの上に「トントンッ」と軽く叩きつけた。

その瞬間、物理法則のメルトダウンが起きた。


シュワァァァァァァァッ!!!

パキパキパキパキパキッ!!!


「「――ひょおおお! 完璧に凍りついたわ!!」」


ボトルに加えられた微小な振動がトリガー(引き金)となり、過冷却状態だった液体の分子が、一瞬にしてドミノ倒しのように整列(結晶化)を開始。

透明だった緑色の液体が、ボトルの底から「パキパキパキ!」と音を立てて白く凍りつき、

わずか0.5秒で、ストローでちゅーちゅーと美味しく啜れる、滑らかでキンキンに冷えた「メロンフローズンスラッシュ」へと瞬間相転移を完了した。

冷却用のドライアイス(※ただの演出)から、モウモウと不気味に白い冷気(霧)がテーブル一面へと噴き出し、怪しく緑色に光る液体を不気味に包み込んでいく。


双子はストローを深く刺し、目をトロンとさせて一気にがぶ飲みした。


ゴク、ゴク、ゴク……プハァー!!!

キィィィィィィィン!!!!!


「「――う、ひょおおお、頭痛い(アイスクリーム頭痛)! でも冷たくて最高にQOLが高いわ!!!」」


頭を押さえて「キーンとくる冷たさね! 脳髄のシナプスが直接凍りつくわ!」と大爆笑している銀髪の双子の姿。


◇


数時間後。リビングの一角。

コタツの周りで集まっていたイゾルデ、アルド、そして両親の目の前で、不気味に青白く光る「透明なチタンの箱(冷凍庫)」が、「シューーーーッ!」と静かな冷気を吐き出しながら、不気味なほどの「霜」を外壁にまとっていった。


「……あの、お二方。普通の人間は、氷を運んでくるのが精一杯ですわ……。なぜ、あのような『冷気を放つ銀の箱』を庭から召喚して、お料理を凍らせるのですか……?」

イゾルデは、震える手で温かいおでん(第72話仕様)を摘まみながら、ため息をついた。


「ただの冷凍庫よ、イゾルデ。これがあれば、プリンの結晶が1ミリも肥大化せず、買った時のままの『滑らかなとろけ』を維持できるの。QOLの高い暮らしには必要でしょう?」

アリスがにやりと笑う。


「あの……私、普通の冷暗所で充分です……」

アルドもコタツの底から顔を出し、呆れ顔で呟いた。だが、アリスが差し出した、この冷凍庫で「急冷保存」したばかりのアイス(第15話仕様)を一口スプーンで掬って差し出すと、その表情は一変した。


「……なっ! なんだこの喉越しは……!? 結晶が……結晶が1ミリも感じられなくて、口の中が、まるで雲のようにとろける……!!」


◇


その夜。

完成した「極上クライオフリーザー」の記念すべきテストを兼ねて、コタツBar・アイスクリームパーティーが始まった。


「さあ! 第一回『シルバーストーン・コタツBar・フレーバー・選手権』の開幕よ! このフリーザーで保存した最高のアイスを、誰が一番エレガントに、かつ折らずに最後まで食べきれるか!」

アリスがマイクを握りしめると、広場からは「おおおっ!!」「双子様万歳!!」と割れんばかりの歓声(※ただの居酒屋のノリです)が上がった。


イゾルデやアルド、エドワード、レイラも、みんなお揃いのサウナハット(第51話仕様)を被り、ノリノリで冷凍庫からアイスを取り出す。


「ふふ、わたくしの騎士のプライドにかけて、このキンキンに凍ったアイス……わたくしのエレガントな食べ方で最後まで貫いて差し上げますわ!」

「ヘヘッ、イゾルデ様、このアイスのシャリシャリ感、めちゃくちゃ香ばしいっすよ! さあ、勝負だべ!!」


「「「ーーーっっっっっっ!!!」」」


合図と共に、全員が一斉にスプーンでアイスを口へ放り込む。


「んんっ……!! 冷たい……!!」

あまりの冷たさと、中からあふれ出すバニラの甘みに、イゾルデやアルド、そして集まった面々も、大笑いしながらコタツの中にドロドロに沈んでいった。


終わった後の広場では、

「おい、このアイス、脳を直接ハッキングしてくるぞ……!」

「あははは、もう一個! もう一個おかわり!」

と、大興奮で絶叫する面々。


アツアツのから揚げ(第67話仕様)を頬張り、キンキンに冷えたアイスを喉に流し込み、みんなで大笑いしながらゲーム大会に熱狂する夜。


「アリス、成功ね。このクライオ・フリーザー、みんな脳がとろけてるわ」

「ええ、エレン。熱力学のジュール=トムソン効果と、過冷却結晶の完全勝利よ。これで私たちの領内QOLは、年中無休で完璧な『極上の氷の帝国』として維持されるわね」


窓の外では、月明かりの下、ガシャガシャと走る木製のお掃除ロボ(第36話)が、静かに庭に落ちたアイスのカップの屑を掃き清めていた。

領内には、目に見えない「極限の熱力学・分子物理学技術」と、隣領の貴族たちが「一口食べるだけで胃袋の理性を奪われてコタツの奴隷にされる、恐るべき完全自動冷凍庫の噂」が、優しく、そして最高にお気楽に広がり続けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。