第104話:全領土を揺るがす白い玉座
「……アリス、聞こえる? 私たちの外耳道(第62話)とお肌(第76話)が完璧にツルツルもっちもちのQOL(生活の質)の極致に達した今、私の大腿四頭筋が、あの旧領地やコンビナート(第24話)に残る前近代的な『ただの穴(ボットン便所)』の不衛生極まりない環境に、お尻の尊厳をかけて深刻な抗議デモ(スクワット)を再開しようとしているわ……!」
「聞こえるわエレン。というか、共有されている私の大脳皮質も、どれだけビール(第6話)やラーメン(第57話)で胃袋を潤そうとも、お尻の衛生状態を放置するなんて美少女双子としてのアイデンティティが分子レベルで崩壊するわね。お屋敷の奥で大成功したあの『サイフォン・スプラッシュ(第103話)』の快適さを、特区内の全領民、そして観光客に届けるべく、全自動魔導温水洗浄トイレの『全領土一斉普及作戦(インフラ革命)』を執行するわよ!」
シルバーストーンQOL巨大観光特区のリビング。
完璧に除湿されたドライコタツ(第65話仕様)に入りながら、銀髪の双子は脳内の専用回線をかつてない「便座熱」で同期させていた。
前世は三十代の理科教師、成瀬健一。
お気楽極楽なだらだらライフの足元を支えるのは、やはりインフラの王様「水洗トイレ」である。
「いい、エレン? トイレの大量普及にはね、白い美を誇る便器(陶器)の工業生産、サイフォン管路の流体力学ハック、そしてお尻を温める温水スプレーのからくりアッセンブルが必要よ。まずは、陶器を焼き上げるための『粘土の結晶相相図ハック』からいくわよ!」
アリス(理論・設計・数理担当)が脳内の黒板に、シリカ・アルミナ・カリシア( SiO₂-Al₂O₃-K₂O )三元系状態図を書き殴る。
「カオリン、長石、石英の比率を完璧に調合し、摂氏1,200℃の定温熱対流でガラス相を形成させ、吸水率0.1%以下のツルツルに輝く磁器質便器を成形するの。エレン、私の3D-CAD投影に沿って、150台の便器を同時にプレス成形する『超精密チタン製多層金型』を物質化しなさい!」
「最高ねアリス! お尻を優しく受け止める白い彫刻ね! 私の『超精密魔力クラフト・一体成形(120,000 rpm)』で、コンマ数ミクロンの誤差もない完全流線型金型を削り出してあげる!」
エレン(実技・精密加工・物理演算担当)の指先から、バチバチと精密な魔力放電が散る。
アリスが算出した「お尻の接触面圧分散曲線」に完全同調し、エレンはチタンプレート(第28話仕様)を一瞬で美しいエルゴノミクス形状の金型へと成形。
さらに、1200℃の局所高熱魔力釜を起動し、粘土を流し込んで、驚くほどツヤツヤと純白に輝く「からくりサイクロン陶器(便器)」をものの数時間で150台同時に焼き上げていった。
「次は、お尻を温めて優しく洗うからくりノズルユニットの『流れ作業(ライン生産)』よ! アルド、イゾルデ、そして150名のバイトメンバー(元強盗・騎士たち)を全員、地下工房へ総動員しなさい!」
アリスがWEB同期回線(第70話仕様)を介して、お庭番アルドへ脳内パルスを送信した。
◇
「よし、野郎ども! 双子様のお尻の尊厳を守るため、ハサミとドライバーを持って組み立てラインに並ぶだべ! 遅れたら今日のプリン(第73話)抜きだべ!」
サウナハット(第51話仕様)を被ったアルドが、拡声器で叫ぶ。
「わ、わたくしが……公爵家の誇りにかけて、あの不気味に蠢くチタンノズル(温水スプレー)に極小の真鍮スプリングを組み込むなど……! でも、お尻が洗われるあの極楽のためなら、スウェット(第81話仕様)の袖をまくって、いくらでもピン留めを執行しますわ!」
イゾルデも完全にコタツの仲間として覚醒し、スウェット姿で真剣な面持ちでからくり油圧弁を組み立てていた。
150名のバイトメンバーたちは、全員が「WEB同期ヘルメット(第70話仕様)」を装着し、アリスが脳内から送信する「1工程5秒の組み立てパルス」に完全同調。
一切の言葉を発さず、
「カチャ、カチャ、ガチャン!」
と、人間離れした超高速・等速の流れ作業で、からくり油圧温水洗浄ノズルユニットを次々とチタン便器へとアッセンブルしていった。
そこに、男爵(特区プロデューサー)エドワードと、レイラ夫人がお洒落なデコレーションを抱えて突入してきた。
「アリス、エレン! この『白い陶器の玉座』、特区のラグジュアリー・インフラとして最高の名物になるよ! 『シルバーストーン・ラグジュアリー・スプラッシュ・レストルーム』として、全家庭に無償配給して観光アピールするよ!」
「そうね、エドワード。それに、冬でもお尻が冷たくないように、あの子たちの電熱インナー(第37話)の技術を応用して、座る部分が摂氏38.5℃でホカホカに温まる『温水洗浄暖房便座カバー(デコレーション)』を、お洒落なアラベスク模様で150枚縫い上げたわ!」
一人が「流体力学サイフォン流&生産シミュレーター(ソフト)」、一人が「ナノ精度放電カッター&150名WEB同期ライン生産」。
両親のマーケティングとカバー装飾が加わり、夕暮れ時には、不気味なほどツヤツヤと輝き、フタがからくり自動でパカッと開閉し、座るとホカホカ温かい「全自動・魔導温水洗浄トイレ」が150台、完璧な量産体制で爆誕した。
◇
「よし、エレン。インフラ配管敷設プロセス、起動よ! アルド、150名の目隠し部隊(第70話仕様)を率いて、サイフォン排水路を一瞬で接続しなさい!」
「ラジャー! 皆、黒い目隠しをして、WEB回線にアクセスして一気にパイプを地底に叩き込むだべ!」
150名のバイトメンバーたちが、全員が不気味な黒い目隠しを両目にガチ巻きし、
一切の言葉を発さず、
「チチチチ、ゴボボボッ!」
と、サイフォンの原理(第103話)を最大化するトラップ配管を、領地の地底へと凄まじい阿吽の呼吸で一斉に敷設し、白い陶器の便器を全家庭の床下に直結していった。
数時間後、領地全体の家庭や案内所には、ピカピカに輝く白い玉座が配給された。
「お、おい……なんだこれ、めちゃくちゃお尻がホカホカするべ……。ボタンを押した瞬間、温水が噴き出して……お尻がととのい(第51話仕様)の向こう側へスライドしたべぇぇ!!」
「本当にねえ! あのサイフォンの原理で不浄が一瞬で無音で消え去るのも魔法のようだわ! QOL最高だべ!」
領民たちは、初めて体験する温水洗浄トイレのあまりの極楽さに、涙を流して大熱狂していた。
◇
その夜。
リビングのコタツ(除湿ドライモード)を囲む、シルバーストーン家の一同。
おでん(第71話仕様)を突き、おちょこで日本酒(第109話仕様)をグイッと煽る中、
スウェット姿のイゾルデが、目を血走らせてカードの束をコタツの上に叩きつけた。
「アリス様、エレン様! この最高のお尻の快適さを前にして、ただだらだらするだけなんて、QOLへの深刻な冒涜ですわ! これ(カードゲームSSC、第32話仕様)を出しなさい!」
イゾルデが冷たいビール(第6話仕様)をグイッと煽って宣言する。
「今夜は、アストレア公爵領の私の屋敷へ『サイフォン・スプラッシュ(温水洗浄トイレ)』を最優先で設置する権利、そして明日の『お掃除ロボのメンテナンスお休み権(第86話仕様)』を賭けて、アストレア公爵家の名誉をかけた『第一回シルバーストーン・コタツ・お尻ととのいデュエル大会』を開催しますわよ!!」
「望むところだべ、イゾルデ様! 俺の『ハンス・ビートダウン(第32話仕様)』デッキで、そのトイレ優先権とお休み権は全部俺がいただくべ!」
アルドがサウナハットを揺らしながら手札を広げる。
「お父さんも混ぜておくれ! 娘たちのチャリの最高級チタンボルト(第28話仕様)を賭けて、このお父さんが無敗のプロデューサーこその、至高のデッキ構築を見せてあげるよ!」
エドワードも、ウイスキー(第110話仕様)を握りしめて参戦。
「私のターン、ドロー! トラップカード発動よ!」「いや、それには『ピザ窯の烈火(第32話仕様)』でカウンターだべ!」
「ぎゃあああ! わたくしのトイレ優先使用権がぁぁぁ!!」
深夜のシルバーストーン特区の屋敷から、夜な夜な響き渡る、大爆笑とカードを叩きつける「バチバチ!」という楽しげな大歓声。
そこには、かつての没落の影など微塵もなく、ただ、美味しいお酒と極上の温水洗浄トイレ、およびゲームに熱狂する、異世界で最も賑やかで温かい「おうちコタツBar」の光景が広がっていた。
「「ふふふふ……」」
コタツの特等席で、お互いのさらさらツヤツヤの髪(第40話仕様)を優しく撫で合いながら、ハチミツレモネードを片手にその様子を眺める小さな双子。
「計画通り、お尻のハックとゲームで、今夜もみんなを完璧にコタツの底(だらだら仲間)に引きずり込めたわね、アリス」
「ええ、エレン。サイフォンの原理と温水洗浄ノズルの大量生産は完璧ね。明日からはお使い(第92・93話仕様)も、お掃除ロボのメンテナンス(第86話)も、みんなもっと楽しそうに(QOLの高い状態で)バイトをこなしてくれるわ。科学と、私たちの趣味の完全勝利ね」
窓の外では、月明かりの下、ガシャガシャと走る木製のお掃除ロボ(第36話)が、静かに庭の雪を掃き清めながら、コタツから漏れ出る香ばしいおでんの匂いと楽しげな笑い声を、優しく、そして最高にお気楽に、世界中に広げていくのだった。




