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9.これまでのわたしたち(2)

 中学の頃は……トモキはPC部に入ってて学校では部室、家では自室に引きこもりがちで、わたしが入った吹奏楽部は文科系なのにばりばり体育会系のノリで朝練休日練当たり前で毎日そっちが忙しかったから小学生までと比べたら一緒にいる時間はかなり減った。


 でもそれはつまり用があるときは部室かトモキの部屋に行けばトモキには会えるってことなわけで、テスト前だとか、困った時だとか、わたしは事あるごとにトモキに会いに行っていたような気がする。


 そういえばこの頃になると、トモキはあんまり泣いたり笑ったりしなくなっていたかもしれない。


 昔は背なんてわたしより小さかったのに、生意気にもわたしに追いつきそうになってたし、声もなんだか少し変わってたかも。


 それでも、わたしが会いに行けば普通に相手をしてくれたし、わたしが困ってたら助けてくれたし、なんだかんだいって、やっぱり一緒にいると安心するっていうか、気を使わなくていいから気が緩むというか、落ち着けた。


 学校って面白いし友だちと一緒にいるのは楽しいけど、でもそれだけじゃなくてやっぱり勉強はイヤだし、友だちと一緒にいてもどこまで本音を出していいものなのか見極めっていうか雰囲気を読む能力って言うか、その都度その都度の状況判断っていうか、そういうのって結構大変だし、たまに疲れるなって思っちゃうことだってあるし、部活内でもパートとかなんかの関係でどうしても派閥みたいなのができちゃってて、誰とでも気軽に話をしてもいいってわけじゃなくてちょっと話しただけのことがあとでとんでもない問題みたいになってて厳重注意とかくらっちゃったりするとやっぱりわたしだって凹むし。


 ……ああ、今思い返しただけでもかなりこう、ずーんと気分が重くなってくる。


 そんな時でも、トモキは相変わらずのトモキでいてくれて、正直、わたしはかなりトモキに助けられてたと思う。


 中学の頃、トモキはわたしにとって唯一気を張らなくてもいい避難所みたいな存在だった。


 駆け込んだわたしを、トモキはいつも、いつもと変わらず迎え入れてくれたし(絶賛歓迎ってわけじゃなかったけど、邪魔だと思われてるわけでもないって感じ)、いつもわたしの話を聞いてくれた。


 その結果アドバイスをくれたりとか、そういうことは一切なくて、へえ、とかふぅん、とか適当な合いの手を入れるだけではあったんだけど、それでもわたしは随分救われた。

 救われたんだ。


 トモキがいつも、いつもの場所でいつものようにしていてくれているだけで、わたしは学校へ行くことができた。


 トモキがいなかったら、きっと今のわたしはいないと思う。

 トモキがいてくれたから、今もこうしていられるんだと思う。


 高校は、ふたりとも部活には入らなかった。


 トモキはもうPC関連のことなら自分の部屋で自分の興味のあることを自力で調べていろいろできるようになっていたし、わたしは……わたしはもう、ちょっと、中学の時みたいな人間関係に疲れてしまったっていうか、またああいう状況に陥るのが怖いっていうか、それだけの覚悟をもてなかったっていうのが正直なところだと思う。


 どうしても、やっぱり人の集まる場所にはいろいろ起きる。


 それはもう、誰のせいとかじゃなくてどうしようもないことで、誰もがどうにかしたいと思ってるのかもしれなくて、実際にそれらの問題をどうにかして解決してやっている人もたくさんいるとは思うけど、今のわたしにはそれをやるだけの自信も気力もまだなかったから。


 クラスで当り障りのない人間関係を構築するだけで、今のわたしのキャパはいっぱいいっぱいだった。


 放課後は、それぞれの部活に行く友だちと笑顔で「またね」と挨拶を交わして、わたしは早々に教室を出る。


 そして、ぼーっと昇降口で待っていてくれるトモキと合流して、一緒に帰途につくのだ。

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