8.これまでのわたしたち(1)
うちが今の家に引っ越してきたのは、わたしが三歳の時だった。
わたしが生まれるちょっと前くらいに、うちの一家は転勤でこの町にやってきたらしい。
最初はマンションを借りていたけれど、子どもをのびのび育てたいってことで一念発起、今の家を買ってしまった。
うちは、トモキの家とは、ちょうど背中合わせで建っている。
わたしの部屋とトモキの部屋はちょうど二階の奥の角部屋というところが一致していて、漫画とかにあるみたいに窓からひょいと飛び移れる距離――というわけにはいかなかったけど、それでもお互いにカーテンを開ければ相手がなにをしているのかわかっちゃうくらいの距離で毎日暮らしてた。
どちらの家も南側が庭になっていて、わたしたちは今日はうち、明日はあんたんとこ、といった具合に互いの家を行き来して遊んでいた。
小さい頃のトモキは、今よりもいくらか考えていることがわかりやすかった。
わたしが少々強引な手に出るとしゅんとしてみたり、ちょっとこづいただけでわんわん泣いてみたり、そのあとごめんねって謝って仲直りを申し出るとぱあっとひまわりみたいな笑顔になっていいよって言ってくれた。
本当に、本当に可愛かった。
わたしがなにをしても結局は許してくれたし、本気で怒ったことなんて、あんまり見た記憶がない。
トモキはわたしに泣かされたって少々ひどい目にあわされたって、いつも次の瞬間にはなんでもなかったようにひょこひょこわたしのあとをついてきてた。
わたしだって、別にいつもトモキにひどいことをしてたわけじゃなくて、普通に一緒に楽しく遊んでたんだよ。
幼稚園の頃はうちの庭には買ってもらったばかりのブランコがあって、ふたりで飽きもせずにずっと漕いでたし、夏にはトモキの家の庭で、トモキのお兄ちゃんも一緒にビニールプールで遊んだりもした。
小学生になってからも、夏休みの宿題の縄跳びだってどちらかの庭で毎日一緒にやってたし、天体観測はお互い部屋の外のベランダに出て、小学校でもらった星座早見版盤とか星座シートとかを使って、どこだあそこだって言いながら一緒に星空を見上げてた。
トモキが異様に詳しくて、いろいろ教えてくれたような覚えがある。
――残念なことに、その大半は忘れてしまったけど。




