7.家出するわたし(2)
トモキがあちらに行ってしまったあと、トモキのお母さんには
「トモキはちょっとわけあってしばらく帰って来られなくなっちゃって」
とものすごく怪しくてかなり曖昧な伝え方をしてしまったんだけど、
「男の子だもの。きっと自分探しの旅にでも出かけたのね」
などと驚くほどあっさりとした言葉が返ってきた。
ある意味予想どおりだったとはいえ、あまりにも簡単に受け入れられすぎて拍子抜けしてしまったわたしは、やっぱり本当のことを伝えたほうがいいんじゃないかって、すごくすごく悩んだ。
だって、もう二度と会えなくなるかもしれないのに、少しも悲しんでもらえないなんてなんだかおかしい。
少しも心配してもらえないなんて、寂しいよ。
別に、トモキのお母さんがトモキのお兄さんだけひいきしているとかそういうわけじゃなくて、ただ単純に放任主義で楽観主義なだけなんだけど。
悪い人じゃない――むしろ、すごくいい人だっていうのはわかってるんだけど。
それは、小さい頃からめちゃくちゃお世話になってて、可愛がってもらってるって自覚のあるわたしにとっては自明のことだ。
わたしだって、トモキのお母さんは大好きだもん。
でも、それとこれとは話が別で、このままトモキの件を流してしまうっていうのは、わたしはやっぱり納得できなかった。
だからトモキにも相談してみたんだけど、トモキは本当のことを伝えても無意味だよ、と言って取り合わない。
いつもにこにこと笑顔で優しくておおらかなトモキのお母さんと、いつもなにを考えているのかわからないぼーっとした顔でぽつぽつとしゃべるトモキはあんまり似ていないように見えるけれど、この動じないところというか、淡白なところというか、突拍子もない出来事を受け入れたり受け流したり(?)できる微妙な胆の据わり方というか、よくわからないキャパシティの大きさというか、そういうところが似ていることに、わたしは今回のことで気づいてしまった。
トモキは、ほんとうにこのままでいいと思ってるの? それとも、余計な心配をかけさせたくないだけ?
トモキの心の内はわからない。
本当のことを知らせても無駄だ、と言い切ってしまうトモキは、わたしがトモキと離れ離れになることをこんなに悲しんでいるって事実をいったいどう思っているんだろう。
一ヶ月前に会って以来ちっとも姿を見せないおれさま雪だるまにチョーカーを返す日まで、あと三日。
わからないことばかりだけど、こんなところでひとりもやもやしててもなにも変わらないだろうことだけはわかる。
トモキは今、どうしてるだろう?
考えると、会いたくなる。
よっ、と勢いをつけてベッドから飛び降りると、わたしは部屋のドアを開けて、リビングにいるであろう母親に声をかけた。
「お母さん、わたし、三日くらい家を出るから!」




