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6.家出するわたし(1)

 紺世界でトモキを殴りつけたあと、自分の世界の自分の部屋に戻ってきたわたしは、ばたーんとベッドに倒れこんだ。


 わたしが倒れた反動で、ベッドの上に置いてあったぬいぐるみのくまとうさぎがびょんびょんと跳ねた。 


 おれさま雪だるまに無理を言って――というかちょっと脅迫まがいだったかもしれないのは否定できない感じだったけど、ともかくそんなわけで一ヶ月間だけ異なる世界を行き来できるというまる秘アイテムをひとつ貸してもらった。


 それは【世界境管理人】が特別に申請した時にだけ【世界境管理局】から貸与される極秘アイテムらしいのだけれど、見た目はごく普通のチョーカーで、シルバーっぽい金属でできた小さな雪だるまがひとつ、ついている。


 雪だるまの形は【世界境管理人】のシンボルらしい。世界と世界がぶつかる瞬間を象徴しているんだとか。驚いたのは、【世界管理人】はみんな雪だるまの姿をしているらしいということ。


 逆に言えば、【世界管理人】になる前はみんな人間だったり動物の姿をした異世界人だったりしたわけだ。


 偉そうなおれさま雪だるまの元の姿がどんな風だったのか、気になる。


 それにしても、ヘッドセットをつけた雪だるまたちが会議とかでわらわらと集まっているところを想像すると、ちょっとシュールだ。


 ともかく、このチョーカーのおかげで、わたしは虎族(虎の姿をした人たち)の住む紺世界へゆくことができるし、そこでなら相手に触れることが可能だ。


 トモキが紺世界で暮らすようになってもうすぐ一ヶ月。


 あちらの世界に順応し始めたからか、既に虎耳と虎のしっぽが生え始めている。

 このままだと、トモキが虎になってしまうのは時間の問題かもしれない。


 わたしが紺世界と青世界を行き来できるのはあと僅か。

 このアイテムを使えばトモキが元の世界へ戻って来るのは簡単だけど、もちろんそれは禁止事項だし、そんなことをしても【世界境管理人】によってトモキは紺世界へと強制送還されてしまうらしい。


【世界境管理人】は世界境で自然発生した諸々の事象のアフターフォローをするのが仕事であって、事象そのものをなかったことに(例えばトモキを元の世界へ戻したりとか)する権利はないのだという。


 まったく、使えない。


 トモキ自身もやる気がない以上わたしががんばるしかない、というわけで、なにかいい方法はないかとずっと考えてはいるんだけど、日本の地方都市に住む一女子高生には難しい問題だった。


 そもそも、トモキがこんなことにならなければ、異世界の存在なんて信じなかったはずなのに。


 本当に、もう、トモキとはお別れなのかな。


 そのことを考えると、悲しくて苦しくて胸をかきむしりたいほどもどかしくて、どうしようもなくなる。


 どうしようもないのなら、こんな風にぎすぎすした気持ちで会うんじゃなくて、残された時間をもっと大事に使ったほうがいいのかもしれない、とも思う。


 最後の思い出になるような、穏やかな時間を。

 恋人同士とかじゃ全然ないけれど、でも、小さな頃から一緒にいることがとても当たり前な、そんなわたしたちの関係を大切にしながら。

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