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5.初夏に出会った雪だるま(4)

「……そっか。じゃあ、仕方ないかぁ」


 あっさりと、あまりにもあっさりとトモキが口にした言葉に驚いて、わたしは顔を上げた。


 そこには見慣れた、なにを考えているのかいまいちわからない、飄々としたトモキが立っている。


 ――ん? なんだか、ちょっとトモの姿がさっきより薄くなってるような……。


『ああ、今、見えている互いの姿は離れゆく世界が見せている残像みたいなものだから、時間が経てばやがて消えるのだ』


「残像?」

「話ができるのもあと少しってことか」


「ちょっと、トモキ……」


 どうしてそんなに恐ろしいことを淡々と話すことができるんだろう。

 こちらの世界に、これっぽっちも未練なんかないみたいに見えてしまう。


 わたしに対する気持ちも、その程度ってことなの?


「なんか変なことになったみたいだけど、まあ、おれはこっちでがんばるよ。母さんたちには適当に説明しといてよ」


「いや。いやいやいや。ちょっと待ってよ、そんなのムリだよ。だいたい、適当にって、いったいなんて言えばいいのよ」 


「普通に失踪した、とかでいいよ」

「嫌だよ。そんなの引き止められなかったわたしが恨まれそうじゃない」


「恨まれんよ。うちは兄貴がいれば大丈夫だから、おれがいなくなったところで大して問題ないって。母さんもたぶん、まあそのうち帰ってくるかもね、くらいの反応しかしないだろうしさ」


 確かにトモキのところのお母さんは大雑把というか大らかというか楽天的というか、そんな感じの人ではあるけれど。


 でも、大事な子どもがいなくなるってのは、そんな簡単に済ませられるようなことじゃないでしょ、普通に考えて。


「本当の本当にもう会えないって知ったら、トモキのお母さん絶対悲しむよ」

「死んだわけでもないし、離れてたってお互い元気でやってれば、問題ない」

 

 そんな……。

 そんな風に割り切れるとは、とても思えない。


『納得が早くて助かる。面倒も起きなくて結構結構。じゃ、そういうことで』


 困惑するわたしを残して、雪だるまがさっさと話を切り上げようとする。


 わたしは、はっと気づいた。

 ここで雪だるまに逃げられたら、本当に、もうこれっきり、どうしようもなくなってしまう。

 

 とっさに伸ばしたわたしの手は、雪だるまを通り抜けたりしなかった。

 どうやら【世界境管理人】に触れることはできるらしい。


 わたしは、がっちりとその丸い体を捕まえることに成功したのだった。

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