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4.初夏に出会った雪だるま(3)

 雪だるまは、世界の接触を、雪玉を例にあげて説明した。


 曰く、世界は斜面を転がる雪玉のようなもので、雪玉は無数に存在し、雪玉が接触すると、その衝撃によって発生するエネルギーのため、雪玉はまるでぶつかったビリヤードの玉のように、全く別の方へと向かって転がり始めるのだと。


 そのふたつの世界が再び接触するためには、どちらか、もしくは双方の世界が別の世界にぶつかるなどして転がる方向を変える必要があるのだと。


 そしてトモキのいる世界とわたしの世界――雪だるまたち【世界境管理人】はそれぞれの世界を色の名前で呼んでいて、わたしの住む世界は青世界、今トモキがいる世界は紺世界というらしい――が次に接触するのは、1980年後なのだとも。


 1980年後なんて、この世界が存在しているかどうかも怪しい。

 ――というか、そんな先のことなんて、正直どうでもよかった。


 わたしもトモキもいない世界のことは、その世界に生きる人に任せようと思う。


 わたしにとって大事なのは、やっぱり今わたしが生きているあいだのことだ。


 とにもかくにも、わたしはどうにかしてトモキをこちらの世界へと連れ戻したかった。


 触れられないとはいえ、目の前には確かにトモキの姿があって、声だって聞こえるのだから、諦めろというほうが無理な話だった。


『すぐそこにいるように見えて、ふたりのあいだには如何ともしがたい隔たりがある。それはおまえらにどうにかできるものじゃない。まあ、【世界境管理人】であるおれさま程になれば、公的に世界間を移動する権利を有しているから、困ることはないがな』


 腹(いや、もしかしたら胸かも)をそらして、おれさま雪だるまが得意そうに言う。


「じゃあ、トモキも【世界境管理人】になれば元の世界に戻れるってこと?」


『なんだと? 無理無理。そんなのは不可能だ。【世界境管理人】ってのは、そんじょそこらの連中にやれる仕事じゃないんだ。【世界監視政府】が十年に一度行う認定試験に合格し、尚且つ厳しい研修をクリアした者だけが――』 


 10年!! 


 気が遠くなりそうになったものの、まだ大事なことを確認していない。


「つっ、次の試験はいつなの!?」


 数ヵ月後とか、せめて一年後とかなら、まだ希望があるかもしれない。

 そのくらいなら、待ってもいい。


『前回が二ヶ月前にあったばかりだから……まあ、だいたい十年後だな』


「そ、そんなぁ……」 


 雪だるまの答えに、わたしはショックのあまり体から力が抜けて、へなへなと座り込む。


「つまり、おれはこのままこっちの紺世界で生きていくしかないってこと?」

『だからそう言ってるだろ』


「次に紺世界が青世界と接触する頃には、おれはもう死んでる、みたいな?」

『だな』


 雪だるまが、無情に頷いた。

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