11.家出先にて(2)
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「なんで本当に相手してくれないの!?」
トモキに放置され続けていたわたしは、とうとう業を煮やして苦情を口にした。
『最初にそう言ったはずだけど』
虎になってしまったトモキは肉球のついた前足の爪で、器用に黒い大きな箱型の機械をいじってなにかをしている。
たぶんわたしたちの世界でいうところのPCみたいなもの。
紺世界の文明レベルは青世界にとても近い。
虎族は人間のように家に住んで生活していて、通信機もあれば、映像受信機(テレビ?)もある。
仕事だって料理だってするらしい。
手も器用に使えるようだ。服は着てないけど。
「それはそうだけど! そうだけどね!」
もう、明日にはわたしは青世界へ戻らないといけないのに、昨日も今日も、トモキは本当にわたしに構ってくれなかった。
『寝てれば?』
「ひどい!」
わたしは抗議すべくトモキに突進した。
ところが、ちょっと床板の浮いていた個所に足をとられたようで、バランスを崩して体ごとトモキにぶつかってしまう。
ぼふん。
思ったよりもふかふかなトモキの毛皮のおかげで、衝撃が半減した。
『なにやってんの?』
呆れるトモキの声。
「なんでわかってくれないの!」
最後だからと思って、ずっと腹を立てないようにしてたのに!
わたしはばふばふと虎縞の毛皮を叩いた。
『相変わらず、すぐに手が出るなぁ』
毛皮のおかげでちっとも痛くないのか、トモキは呑気にそんなことを言う。
「誰のせいだと思ってるの! わたしの気持ちなんてちっともわかってくれないくせに!」
『わからんことも多いけど、わかってることもなくはない』
「……え?」
問い返したわたしの声が聞こえなかったのか、トモキはまた機械のほうを向いてなにやら始めてしまった。
怒っていた気持ちはなんだかうやむやになってしまい、尚且つトモキのあたたかい体に触れているからかだんだん眠くなってきて、不覚にもわたしはそのまま眠ってしまった。




