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正常だ

【☆★おしらせ★☆】




あとがきに、


とても大切なお知らせが書いてあります。




最後まで読んでくださると嬉しいです。


「言われた通りにするぞ、マジカ」


「ほ、本当に中に入るんですか……?」


 おっかなびっくり先導してくれる獣人に従いながら中に入っていくと、一時間ほど歩いていった先に確かに開拓されている村が存在している。


「本当に、ダート大森林を開拓したのか……」


 正直目にするまでは半信半疑ではあったが、こうして目の当たりにすれば疑いようはない。


 調査書に村の立地を書き付けると、新しくできたというダート大森林の中にある開拓村へ入っていく。

 彼らを出迎えてくれたのは、なんとヴァル・フォン・フレイム本人であった。


「初めまして査察官殿。ヴァル・フォン・フレイム男爵です」


「お初にお目にかかります、ヴァル閣下。一級査察官のバルクハイム・フォン・シュトラッセです。貴族といえど末席なので、敬称等は不要であります」


「査察官のマジカです、お会いできて後衛です、ヴァル閣下!」


 通常、こういった査察業務に本人がやってくる場合というのは、何かしらやましいところがあることが多い。

 バルクハイムはわずかに警戒心を引き上げながら、ヴァルと握手を交わす。


 失礼ながら、思っていたより普通だな……というのが、ヴァルを見た時のバルクハイムの正直な感想であった。


 てっきり全身からオーラが噴き出していたり、対峙しているだけで気圧されたり、カリスマ性に目が焼かれたりといった想像をしていた。


 巷の噂は当てにならんな……と思いつつ、早速職務に取りかかる。

 まずは開拓村の中を見せてもらうことにした。


「思っていたよりもずいぶん人の数が多いですな……」


「はい、人数制限をかけずに申し込みを受け入れていたら規模が一気に大きくなってしまいまして……彼ら用の家と農地を用意するのだけで、現状は手一杯といった感じですよ」


 彼の言葉を、バルクハイムは頭から信じることができなかった。

 開墾され木々を引っこ抜かれてできたであろう畑は立派なもので、そこには既に作物が実り始めていた。


 そして家もなかなかどうしてしっかりした作りをしている。

 木製の家の中には素人臭さの抜けていないようなものもあったが、石造りの家に関してはかなり立派なものに見える。


 今後更に領民が増えていくとなれば、この辺りは男爵領とフレイム伯爵領を繋ぐ中継地として栄えることになるだろう。


 今後のことを考えれば資産価値が上がるだろうな、などと考えながら空いている家を見学させてもらう。


「閣下、それでは次にこの領地の帳簿類の確認からお願いさせていただきたいのですが……」


「すみません、帳簿はまだないんですよ。ここ、出来てからまだ三ヶ月ほどしか経っておりませんので」


「……ははは、閣下もご冗談がお上手だ。これほど立派な村が、たった三ヶ月でできるわけが……え、本当に?」


 バルクハイムにはヴァルの語り草と表情から、彼が本気で言っていることが理解できてしまった。

 もう一度畑を、そして建ち並んでいる立派な石造りの家々を見る。


 先ほど畑の土を確認したが、素人目にも栄養がある土であるのは一目でわかる。


 木の根の類いも完璧に撤去されており、熟練の農家が作った畑のようにしか見えない。

 石造りの家も、一朝一夕にできるようなものではないだろう。


 これほどの規模の開墾を、たった三ヶ月で?

 そんなことができるのであれば、今頃王国中にある荒れ地が大穀倉地帯に生まれ変わるだろう。


「もちろん虚偽の開墾時期を申告して税金逃れをしているわけではないですよ。家屋の方は土魔法を使って建てて時間を圧縮したんです」


 いくつもの領地を見てきたバルクハイムからすれば、口にしている人間がヴァルでなければでたらめなことを言うなと一蹴したくなるところだ。


 土魔法による建築は、原理状可能とはされている。

 だが一定以上の強度を持つ家を建てるためには、一流の腕を持つ練達の土魔法使いが必要とされている。


 そんな魔法使いを雇い入れるのに果たしてどれだけの金がかかることか!

 わざわざ民家を建てるためにそんな人物を雇うなど普通ではあり得ない。


(だが……ヴァル閣下ならあり得ると思えてしまうのが怖い)


 彼の下には水魔法のスペシャリストや体術の達人などが集っていると聞く。


 もしその中に土魔法の使い手がいるとすれば、理論上あり得てしまうと言うのが恐ろしい。


 一体この領地はどれだけ魔法使いの層が厚いのだ……と戦慄せずにはいられなかった。


「ちなみに畑の開墾にはテイムしたシルバーウルフを使っています」


「……開墾に、魔物を使ったのですか!?」


 だが家よりも輪をかけてでたらめなのが、魔物を使った開墾作業である。

 人力に拠らない牛耕や馬耕といった技術は既に開発されている。


 家畜としては比較的高価であるため一般には普及していないが、富農の中には作業に家畜を使うという話はわりと有名な話である。

 だが開墾にテイムした魔物を使うという話は、当然ながら一度も聞いたことがない。


 テイムスキルを持っているテイマーにとって魔物とは、自らの武器そのもの。

 一体誰が持っている剣を使って鍬のように土を掘るというのか。


 バルクハイムは頭がくらくらとする思いで話を聞き……そして本当に狼型魔物に犂を引かせている現場を見て、誇張抜きでその場にひっくり返りそうになった。


「バルクハイムさん、大丈夫ですか?」


「あ、ああ、大丈夫だ、俺は正常だ……」


「全然大丈夫じゃなさそうなんですけど!?」


 ここに来てバルクハイムは、目の前にいる英雄には自分の常識は全て通用しないということを実感した。


 そしてこれを大真面目に報告書に書くのかと思うと、既にめちゃくちゃに憂鬱である。


(間違いなく上司から総ツッコミを受けるだろうな……)


 自分の目で見ているバルクハイムですら、現実の方を疑いたくなるほどなのだ。


 そもそもの領地経営をよく知らないマジカは大きな狼型魔物を見て目をキラキラと輝かせているが、自分は先のことを考えると既に胃が痛くなり始めていた。


「先ほどの作業スピードから考えるに、本当に開墾を始めてから三ヶ月しか経っていないんですね。むしろ少し長めに申告をしてくださっているようで」


「……凄いですね、今の一瞬で計算されたんですか?」


「ええ、まあそれくらいは。土地の面積の暗算程度はできないと査察官は務まりませんので」


 今後この事実を知った者達はどう動くだろうか。

 内憂派はヴァルにテイムした魔物や土魔法使いの派遣をするよう要請をかけるだろう。


 ヴァルが王国にとっての台風の目であることを改めて感じながら、バルクハイムは査察を再開するのであった……。

新作の短編を書きました!

めちゃくちゃ気合い入れて書きましたので、↓のリンクからそちらもぜひ応援よろしくお願いします!

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