番外8
注意:途中で視点が変わります。
「どうするんですか!」
「といわれましても・・・」
ティーナがベッドに潜って泣いている頃。
廊下では声を潜めてこんな会話が繰り広げられていた。
「そもそもこの話、私の発案ではありませんよ」
「違うんですか!?」
てっきり。
「発案は親馬鹿兄馬鹿コンビです」
「馬鹿って・・・」
「リオン様が考えそうなことっていうか・・・外堀から埋めるの好きなんでしょうか」
遠い目をするシュカ。心当たりがあるらしい。
「ティーナ様がせっかく男の子として生きようとしているので、リオン様は精一杯手助けをしようとしているのでしょう。キム様に振られてはまた女の子に戻ってしまうかもしれませんしね」
「ティーナ様は、本当に・・・?」
「えぇ。その気持ちは第三者から明かさないように、リオン様なりに気を遣ったんでしょう」
ティーナとの結婚話は、”女性に心を開くのは珍しいため、これを逃したくない”というリオン様のときと同じような話の持って行き方だ。
シュカにも心を開いているがすでにリオンの婚約者扱いだ。
「キム様も、ティーナ様のことお好きでしょう?」
にっこりというより、にやりだ。
「謀りましたね」
「そんな。意識してもらうためにほんのすこーし小細工はしましたが、謀るというほどでは」
幾分年齢が低すぎる。
小細工でもしなければ恋愛対象として見ることはありえない。
ショタコンなら話は別だが、キムは一応ノーマルな性癖である。
「もうこうなったら腹を括って告白して来てください」
「え!?」
「別に相手はあなたです、だけで告白のようなものでしょう」
「なんで・・・!」
「そうでもしないと、ティーナ様悲観して女の子に戻るかもしませんし」
「ううううう」
「うふふ、あとはよろしくお願いしますね?」
*************
いつの間にか眠ってたみたいだ。
ぼんやりと天蓋を見つめる。
「ティーナ様?」
「・・・・・キム?」
戻って来たのだろうか。
困った。
きっと瞼が腫れている。こんな顔見せられない。
「あの、結婚の話なんですが・・・」
「うん・・・」
「相手は、その・・・」
「・・・・・・」
聞きたいような、聞きたくないような。
聞いてしまったら最後、闇討ちでもしてしまいそうな自分がいる。
「嫌だったらもちろん結婚なんてしなくて良いんです、でももし嫌じゃなかったら・・・どっちにしろ6年後なわけですし・・・」
「私の結婚相手は、ティーナ様なんです」
「・・・・え?」
「リオン様や国王がお話を進めているようでして・・・ティーナ様が16になったとき、私と結婚させようという・・・その、そのころには私、26ですし、思いっきり適齢期逃してますし・・・あの・・・あぁ、違うんです、嫌だったら断って頂いて良いんです、ティーナ様が嫌がれば無理やり結婚なんて、させられないと・・・」
「僕が、キムと結婚するの?」
信じられなくて、キムを見る。
「・・・はい、ティーナ様がよろしければ」
「キムは、嫌じゃない?」
「・・・ありがたいお話だと思います」
ありがたい。
ありがたいって何?
「・・・僕が、王族、だから・・・?」
「え?」
「王族だから、ありがたい?王妃になれるからってこと?」
「あ、の・・・」
「・・・今はそれでも良いよ。でも、いつか、僕のこと好きになってくれる?」
僕は好きになってもらって、結婚したい。
だったらあと6年で、好きになってもらえば良いんだ!
「今でも、好き、ですが・・・これから、もっと好きに、なります」
「本当!?」
「はい」
「えへへ、うれしいな!」
僕はキムに抱きついた。
シュカより筋肉ついているから硬いけど、良い匂いがする。
僕も愛用中の薔薇のにおいだ。
「僕も好き。大好き。早く僕のことたくさん好きになってね!」
親愛の意を込めて、キムの唇にちゅっとキスした。