↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/6

第3話 バッカーノ魔獣森林

 朝、ケミスト達は白い息を吐きながら大きなリュックサックを背負い、ある森林へと向かった。外はしんしんと雪が降り積もっている。サクサクと雪道を歩きながら、ケミストはこれから始まることに心躍らせていた。



「着いたよ」


 2時間ほど歩き、テレサが立ち止まる。つられて立ち止まり前を見ると、そこは大きな大木がいくつも並んだ、幻想的な森林が広がっていた。

 バッカーノ魔獣森林──魔獣が生息する、数少ない森林である。



「今日はそこのロープまでだ」


「資格者以外立ち入り禁止」と書かれた看板が指される。それより奥はロープが張り巡らされ、行けないことが分かった。


 ケミストははい!と返事をし、早速ノートと筆記用具を取り出す。テレサが岩の上に座り、ケミストも隣に並んで座った。


「息を潜め、耳をすませ」


 小さく息を吸いながら、自然の音に耳を傾ける。カサカサという葉の揺れる音、微かな虫の鳴き声──そして、魔獣の足音が聞こえた。


「まだ振り返るな」


 心臓をバクバクと鳴らすケミストに、テレサは至って冷静にそう言う。ケミストははいと小さく返事をし、目を瞑った。


 そのまま数分経ち、ゆっくりと目を開ける。すると目の前に、真っ白なおこじょ型の魔獣がいた。

 目と鼻の先に立っている初めての魔獣に、ケミストは思わず息をするのを忘れて見入ってしまった。なんて、美しいのだろう───白いからアルビノ種だろうか。それとも元々の種族がそうなのか。はたまた保護色か。

 一見普通の動物に見えるが、背中には小さな羽が生えていて、これが魔獣なのだとまざまざと見せつけられた気がした。


「アルビノ種だね、珍しい。しっかりと記録しておくんだよ」


 テレサは優しく微笑みながらそう言った。おそらく魔獣に微笑んだのだろうが、ケミストはなんだかそれが嬉しくて、思わずはにかむ。

 すぐさまノートに魔獣の姿を書き起こし、図解で特徴などの説明を付け加えた。

 それを見て、テレサはこくりと頷く。


「中々いい書き方だ。その調子で頑張りな」

「っはい!」


 ケミストは少し照れながら、ノートにどんどん説明を加えていったのだった。




 やがてケミストのノートが真っ黒に埋まった頃────ケミストは満足したように顔をあげ、ノートをリュックサックの中へと仕舞った。魔獣はもう居なくなっていて、テレサも他の魔獣を見に席を外している。


 ケミストはどうしようかと考えながら、キョロキョロと辺りを見渡した。

 そこで、ロープの少し先に、美しく咲く花を見つける。


(あれはなんでしょう……?)


 真っ白で、月下美人によく似ている美しい花。ケミストは周りに魔獣が居ないことを確認し、こっそりとロープの中へと入っていった。


 たたたっと花に走り寄り、その花を摘もうと手を出す。しかしその瞬間、足元の地面が呼吸するようにずるりと動き、ケミストは思わず体勢を崩し倒れ込んでしまった。


「────危ないッ!」


 そんな声が聞こえた時、何者かがケミストを飲み込もうとしていた地面を蹴り飛ばす。すると地面は耳を劈くような雄叫びをあげ、地面から這い出るとドコドコと逃げていった。そこで、ケミストはあれが魔獣だったことに気がついた。



「……危ないだろバカッ!なんでロープの中に入った!」

「そうか……あれは疑似餌……!?そんな魔獣もいたなんて!すっかり騙されちゃいました!」

「聞いてんのかい!?」


 顔を赤くしながら怒るテレサに、ケミストは流石に萎縮して頭を下げる。


「身勝手な行動をしてしまいすみませんでした!そして、死にそうなところを助けていただきありがとうございます!」

「……怖くなかったのかい?」

「怖かったですよ!」


「でも」もケミストは続ける。


「どうして助けてくれたんですか?私は無魔力なのに!」


 その言葉を聞いて、テレサは顔を歪めた。


「……あんたが、……あんたが死んだら、あたしが公爵家様に怒鳴られるからね」

「なるほど!そういう事でしたか!」


 納得!と言わんばかりのケミストに、テレサは眉を寄せる。雪が降りしきる中、カラスがカァカァと鳴いていた。

 無魔力というだけで差別されることは多々ある。それ故に、自分の命を軽く見る者も多くいた。


「あんたもかい……」


 テレサははぁ、と深く息をつき、ケミストの冷たい頬を手で包み込んで言った。


「いいかい、あんたは、あたしが育てるからね。あんたはいつまでもあたしの弟子だよ」

「??はい!」


 嬉しそうに頷くケミストに、テレサは複雑そうに表情を歪めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。