晩餐会②
晩餐会の始めは緊張した雰囲気だったのが、徐々に会話が増えてきていた。
「紗蘭さんは外界では何してたの?」
子の国の王、春が質問する。
「私は高校生で、大学入学目前でした。」
「それは……大事な時期にこっちにきちゃったね。でもしっかりしてるから、学生とは思わなかったよ。凄く上品だよね。」
「ありがとうございます。子の国の王は何をされていたのですか?」
「春で良いよ」
春はそういうと、一瞬表情が曇ったようにも見えたが直ぐに笑顔に戻った。
(春さんは芸能人みたいな端正な顔立ちをしている……白蓮は美って感じだけど、春さんは可愛らしい……どこかで見たことある気がする)
「僕は…芸能人だったんだ。『|L'Oasis』っていうグループのメンバー」
「あ!友人が好きでした!」
思わず、大きな声が出た紗蘭は口元を手で隠した。
(そうだ!人気絶頂のときに、1人行方不明になったって聞いたことある!)
「俺は全然知らなかったけどなー、やっぱり女には人気だったのか。藍は学校とかで知ってたか?」
光は口にもの入れながら話したため、後ろから焔に「お下品ですよ」と注意を受ける。
(お母さんと子供みたい、見た目では光さんのほうが絶対年上だろうに)
「しっ……てました。みんなダンス踊ったり、歌ったりしてましたから。」
藍はまだ緊張しているのか、少し恥ずかしそうにしていた。
「僕の話はいいよ、今日の主役は紗蘭さんなんだから」
春は少し困ったような顔をして笑ったので、紗蘭もどういう経緯でこの世界にやってきたのか追求はできなかった。
「でも、皆さんのことを知りたいです」
「俺は前は農業してたぜ。米作ってた。」
光はにっと笑ってみせた。
「米の収穫時期に、いつも通り出かけようとしてたんだよ。そしたら強盗が入ってきてな。うち金なんかねえのに。そこでやりやってぐさっとな。気づいたらこの世界に来てた。今は太刀打ちするために鍛えてるぜ」
光は力こぶを作って笑いながら話す。
「頼もしいですね」
紗蘭がふふっと笑った。最初の険悪ムードが嘘のようだ。
「ただな、嫁と子供がどうなったのかは気がかりだなー。強盗はいったときは俺しかいなかったから無事だと良いんだけどな。」
「奥様とお子さんがいらっしゃったんですね……」
「俺はそのために、帰る方法がないかを探してんだよ」
光は悔しそうな表情で拳をぐっと握った。
「僕は……こっちの世界にずっといたいです」
藍が俯きながら声を発した。
「なんでだ?」
「磊も含めて、皆さんも、民も、皆が優しいから。前は楽しいと思ったことはなかったんです、でも今は楽しい」
藍は振り返って磊を見るとにっこり笑った。
「まぁ皆、多かれ少なかれ事情はあるよね。」
春はまた優しい笑顔で返した。
「春はどうなんだよ、帰りたいか?」
光は真っ直ぐ春を見た。
「うーん、どうだろう。帰るのは怖いかな。でも待っててくれる人も少なからずいるのかなぁとはたまに考えたりはするよ。紗蘭さんは?」
「私は――まだ昨日来たばっかりでよく分からないです。でも何故かこの国を良くしていきたい、守っていきたいとは思うんです。縁もゆかりも無かったはずなのに」
春は少し驚いたように見えたが直ぐににこりと微笑むと白蓮の方を見た。
「白蓮、良い王が来たね」
「はい」
2人の会話を聞いて紗蘭は静かに耳まで真っ赤にしていた。
(本当に何故か分からないけど、国を良くしたいと思う……)
春が真剣な表情になると、皆が一瞬で静まり返った。
「じゃ、ここからは国の王同士として話をしようか。」
紗蘭はごくりと息を呑んだ。




