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異世界転移したこの世界で、私は「王」になった(仮)  作者: カレンナカレン


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5/9

準備

「…様」


(ん…?)


「紗蘭様、そろそろ晩餐会の準備をしないと…」


「えっ!?」


紗蘭は時計を探すもここには時計らしきものはなかった。

「もう未の刻でございます。」


「未の刻?何時くらいなんだろう…ここって時計ある?」


「時計…?時間は干支を使っております」


(子、牛、寅…未は7番目だから14時くらいってこと?)


「晩餐会はいつなの?」


「酉の刻からでございます」


紗蘭は聞きたいことを翡翠に聞いて、ようやくしっかり目が覚めた。


(多分寝たのは午前中だったから、かなり長い時間眠っていたのね)


「翡翠、起こしてくれてありがとう。晩餐会の用意をお願いできるかしら。」


「はい、かしこまりました」


翡翠はそう言うと、午前中の挨拶とはまた違った青い絹の正装を持ってきた。菊の華が大胆に描かれていて豪華なものだった。


紗蘭はキラキラとした目をしながら、そっと衣服を撫でた。


「青の絹も素敵ね」


「紗蘭様にきっと似合うと思います。寅の国では女性の王は260年以上いらっしゃらないので、衣服も大変喜んでいるはずです。」


260年という長い間に王は何代も変わってきたが、寅の国は何故か男性ばかりだったのだ。神の意図的なのか、偶然かは誰も知る由はなかった。


「ずっと着ていなかったのに、状態がとても良いわ。お手入れがしっかりされていたのね」


「はい。いつか来られるかもしれない、新たな王のために、仕立て職人たちが代々守り続けてきた宝物にございます。こうして紗蘭様にお召しいただけて、職人たちも報われます」


翡翠は嬉しそうに目を細めながら、手際よく紗蘭の体を青い絹で包んでいきました。


(……すごいわ。お洋服一つで、こんなに印象が変わるなんて。午前中は強い印象があったけど、青は落ち着いて綺麗な感じ…)


髪は美しく結い上げられ、青い絹に映える真珠の髪飾りがついた金色だけど控えめな鳳凰が頭の上に乗せられた。


「とってもお似合いです。」


翡翠が満面の笑みで紗蘭を見ながらいると、漆黒の官服を着こなした白蓮が部屋に入ってきた。


「失礼致します。晩餐会の前に、今日参加予定の王と宰相についてお話したく参りました」


「白蓮、私の姿見て何か言うことはないのかしら」


紗蘭は立ち上がってくるっと回ってみせたが、白蓮は首を傾げるだけで心底不思議そうにその姿を見つめる。


(白蓮って顔はかっこいいのにこういうことには疎いのかしら)


翡翠が困り顔をしていたが、白蓮は2人の態度も気にせず、淡々と話し始めた。


「王よ、あまり時間がないので手短に伝えます」


(全くだめね…)


紗蘭と翡翠はアイコンタクトをして、この状況に笑ったが、未だに白蓮は不思議そうにしていた。


「今宵の席には、我が国と同盟関係にある『(ウマ)の国』と『(イヌ)の国』の王と宰相が参加されます。あと同盟国ではないですが、中立として『()の国』。」


紗蘭は昨日の地図を広げながら、頷いていた。


「宰相は皆鋭く、王がどのような人物であるか、この晩餐会で評価するはずです。」


「やっぱり楽しい晩餐会ではないのね」


「特に、子の国の宰相は氷のように鋭く冷たいと言われております。子の国は情報を司る国、今回の晩餐会の様子も他国に広まるでしょう」


(なるほど、失敗も成功も全てが広まりそうね…)


「分かった、気をつけるわ。」


「午はわが国と同じく戦闘に長けています、戌は守りに長けております。どちらも王の人柄は良く、宰相も穏やかなものたちです。」


「…この国より情勢は落ち着いているの?」


「はい、午は王が100年ほど続いております。戌は最近王が変わりましたが、宰相の力もあり平和を保っております。」


翡翠が小さな声で「少し急がれたほうが良いかと」と耳打ちする。


「まぁ会ってみないと分からないわよね」


紗蘭はすうっと胸を張り、青い絹の袖を軽く整えまし

た。その姿に白蓮はふっと笑った。


「我が王は頼もしいですね。」


(宰相もね)


紗蘭もふっと笑って、3人は王室を後にした。


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