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十三話 打開

そして魔王としての彼が勇者との闘いで消滅し、息子としての自我が復活したとき、私は最後に行おうとしていたこの計画の完遂をヒイラとたくらむようになった。




「・・・では誰にこの恨みをぶつければいいというのですか」


シルヴィアが呟く。兄も父も最善とは言えなくても自分の為すべきことをやったのだそう考えると自分のミスであるとより一層自分を責めることになる。シルヴィアの意識は無意識に他人を責める事で均衡を保とうとしていたのだ。


『いや俺が悪い。俺が魔王の残滓なんぞに乗っ取られなければ全て起きなかったことだ』


いつの間にか暗闇の世界に現れたヒイラがそうつぶやく。


『いや私が悪いんだよ・・・子供たちを、彼女を守れなかった私が』


教皇もさみしそうに呟く。


『だからこの問題は俺たち家族で片付けなきゃならねぇ、力を貸してくれないか?シルヴィア』


ヒイラが問いかけても彼女は首を縦にはふれない。彼女には幾重にも憎しみの声が圧し掛かっているのだ、再び前に進みたくても足が前に出ないのである。


『魔王を倒せなかった責任、シルヴィアだけのものじゃないはずだよ』


勇者がそうシルヴィアへと声をかける


『そうよ、私なんてそもそも決戦前に毒で死んじゃったし・・・』


『俺だって相手してたのはただの魔物だぜ』


『そう、なのに僕はさっき前向いちゃったんだよ・・・弟に託してきちゃったんだ。』


『僕たちだけひどい奴にするつもりかい?』


「そういうことを言っているんじゃないです!」


シルヴィアだってわかっている。それでも身内の不始末、自分の不始末が足かせとなっているのだ。


『それでも私はかっこいい主人でいてほしい』


私は言葉にならない言葉を繋げる


『シルヴィアいつも言ってたよ人助けしたいって・・・魔王の封印なんて一番の人助けだよ!』


『私にはその資格はないわ』


シルヴィアが悲しそうにつぶやく


『確かに、そうかもしれないな』


『俺なんて魔王としてどれだけの悪行を行ってきてたか分からねぇ、だからこそ俺は贖罪のつもりでやる。・・・この封印が上手くいってもいかなくても俺は二度と人前には出れないだろう。


『でもさ、ここで俺が何もしなけりゃもっと助けられた人が苦しむことになる。俺はこれ以上罪を重ねたくないな』


『手伝ってくれるなシルヴィア』




封印の魔術と拮抗していた聖の魔法が霧散する。


「聖女ぉてめぇのせいで人がいっぱい苦しんでんのにまだ英雄気取りかぁ」


もはや初めのころの温和な狐の少女の喋り方は見られる額に青筋と立てて捲し立てる。ロレーヌによって開けられた胸の風穴は今も血を流し続けており、その命が風前の灯であることを示している。


「もう黙れよ、タマモ」


「魔王様の体でなにしやがるぅッ」


ヒイラが刀タマモノ腹を一文字に裂く。怨念だけで動いて彼女は糸が切れたように崩れ落ちた。


「父さん、いまだ封印を」


「封印魔法・命封」


魔法陣の中で中途半端に出た紫のオーラが鎖のようなものに繋がれていく。


「今だ、ペル、シルヴィア」


『「聖魔法・破魔」』


私達が放った聖の魔法で魔王の残滓の抵抗が弱まっていくのを感じる。


『ぶッぶへッゴホッ』


「カハッ」


私とシルヴィアは激しく吐血する。私は毒から体を守る魔力が、シルヴィアは自分の生命を構築する魔力を消費しているからだ、教皇、彼らの父も凄まじく消耗している。

なによりヒイラはその体の封印の印を書いたところから内出血し、体の中で残滓が暴れまわって臓腑を食い荒らしているのであろう、こちらも血が滴れ落ちていた。


いったい何時間そうしていただろうか魔法陣が晴れた時、紫のオーラ、魔王の残滓はヒイラの体から離れて空中をふよふよと漂っていた。


「とどめだぁやれぇペル!シルヴィア!」


ヒイラが血を吐きながら私たちに叫ぶ。私達は最後の魔力を振り絞って紫のオーラに聖の魔法を浴びせる。聖女の杖を媒介にして聖の魔法を撃っていた私はついに杖がその魔法に耐え切れなくなり消失した。


そして


魔王の残滓はこの世から完全に消滅した。

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