十一話 魔王
ヒイラと私は教会の中で小さなベンチに隣り合って座っていた。ヒイラが魔王となったこと、そのあらすじや勇者の死まですべてを話したヒイラは大陸教の神をかたどった像へ祈りをささげる。
「こう何度も祈りを捧げたんだがな、神様ってんのはなかなか叶えてくれねぇもんだな」
「・・・」
「ペル?」
「・・・ヒイラ、お前この後もし計画通りに魔王の残滓を封印できたとしてどうするつもりだ」
「・・・」
「・・・」
「なんでも分かるなお前、本当に元馬かぁ。・・・俺は俺の意思じゃないにしても人を殺しすぎた。その償いはしなきゃならねぇ。なぁ教皇・・・父さん」
そうヒイラがいうと懺悔室から教皇が現れる。
「俺とシルヴィアの実の父親だ」
「貧しかったんじゃなかったのか?」
「私はね、息子と娘を捨てたんだよ。」
そういうと教皇は話し始める。
教皇を輩出することが出来る教国の七大貴族家、その子供は全員聖の魔法の適正をもって産まれてくる。しかし、ヒイラには聖の魔力が生まれつき存在しなかったのだ。顔つきや髪色はどうやったって教皇が父親であることを示している。それでも彼は
「私は息子を自分の子供と認知しなかったんだ」
「大陸教において、不倫はどうなるか知っているか?」
「いや、知らないが」
「そうか・・大陸教では不倫はすべての財産の没収及び、首都からの追放だ。」
「彼女、ヒイラの母親は当時娘を妊娠していたが、私は彼女を不倫として追放したのさ・・・そこからは彼から聞いたかな?彼らが才能があると分かっても母親は首都に入ることは出来なかった。だから施設のやつらに・・・」
そういうと教皇は顔をヒイラに向ける。
「息子の封印は私の命をもって行う。それが私に出来る最後の贖罪だからね」
ヒイラは彼の話を聞いても顔色一つ変えなかった。いくら彼が幻術を使える狐や猫の魔人を従えてるとはいえ教国の実印など用意は難しかった。それに狐の魔人に暗殺用意完了とされていたにも関わらず教皇がここにいるということ、すべて知ったうえで協力していたのだろう。
「ペル、聖女の杖に聖女の魔力を流してくれ、教皇は封印の魔術の用意を」
そういうとヒイラは羽織っていた服を脱ぐ、腕には紫の文様が刻まれ体中に封印の刻印を刻んでいた。私が聖女の魔力を消費すればきっと私の命も尽きることになるだろう。それでも勇者たちが倒そうとした魔王を封印する。その一助になれるなら本望だ。私も勇者一行の古参メンバーなのだ。
「それではいくよ、息子よ」
「あぁ・・・頼む」
「封印魔法・獄固」
「封印が効けば魔王の残滓は逃げ出そうとするだろう、そこをペルが止めをさしてくれ!」
事前にヒイラに聞かされていた作戦通りの用意をする。しばらくするとヒイラの体から紫のオーラがあふれ出す。
「そんなことだろうと思ってました・・・」
そこに現れたのは胸から血を流す狐の魔人であった。
「来なさい・・・聖女」
魔法陣から現れた胸をナイフで突き刺された死体、シルヴィアが聖の魔法で教皇の封印魔法を打ち消そうとする。
本来死霊魔術に対して耐性を持っていた聖女であったが死の間際の絶望の感情が大きすぎ、彼女は意識を保てず死霊魔術の傀儡となってしまったのだ。
中途半端に魔王の残滓を出してしまったヒイラも額に脂汗をにじませる。
「俺が意識を保っているうちに、妹を止めろ!ペル」
私は直観で馬の姿へ戻り、聖女の前に姿を現す。私の体にも聖の魔法が染みついているためシルヴィアの魔法は私には効果がないのだ。
私がシルヴィアに触れるとそこは真っ黒な空間であった。
『そこにいるんだね・・・主人」
「まったく賢い子だと思っていましたがしゃべれるようになるなんて思ってもいませんでしたよ」
「久しぶりね、ペルプフェ」
あの日森で寝かせてきた彼女のまま、すべてに絶望したような彼女がそこにはいた。




