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九話 前哨戦 戦士

「・・・という訳でして貴方たち森の長寿種も私たちほどではなくとも虐げられてきたはず。どうです?私たちの仲間に?」


案内から戻ってきた狐の少女から自分の息子の遺体がこれから人を襲うかもしれないという事実を聞かされる。


「それでも・・・貴方たちの好きにはさせれないわ」


私が魔法を構えるとアルスも斧を、ランマルさんも刀を構える。


「残念です」


そういうと狐の少女は召喚陣らしい魔法陣を起動する。


「せめて、自分たちでケリつけれるといいですね」


中から出てきたのは無数の傷跡が痛々しく残り確実に命があるとは思えない戦士(むすこ)だった。


「あれ?なんでこんなにボロボロなんですかね?マインさんしくじったんですかね」


そう言って狐は戦士の体を足蹴にする


「狐の相手は私に、お二人は息子さんを頼みます」


ランマルさんがそう言って狐へと突っ込む。私たちも息子へと向き直る。


「大きく・・・なったな」


「本当ね・・・」


息子は何も言葉を発しない。それどころか体の何割かは魔法で作られた肉体なのだろう、ところどころに見える腐食が彼が死んでからの年月を嫌でも私たちに突き付けてくる。


「アルス!」


息子が斧を振るって襲い掛かってくる。とっさにアルスが防ぐと息子の腕が千切れる。肉体の強度までは戻せなかったようで今の腐食した肉体では斧など扱えなかったのだ。


「終わりにしてやる・・・今度は一緒に暮らそうな」


「炎魔法・火災旋風」


息子は何も表情を変えることも無く灰となって消えていく。




「・・・話が違うなぁあのクソ猫」


ランマルと戦っていた狐が吐き捨てる


「まぁ良いです。魔王様の復活さえ果たせばここでの勝ち負けなんてどーでも」


何か嫌な予感がするが、狐の少女から目が離せない。


「狐火」


狐の少女が炎を身にまとう


「まずはお前だよ、武士野郎」


そう言うとランマルさんに高速で突進する。しかし、さすがは帝国の皇子の親衛隊隊長だった男。一直線の突進などよけると同時に一刀を狐に浴びせていた。

しかし狐を斬った刀に炎が燃え移る


拙い!


そう思ってランマルが刀を離した時には遅く彼の手まで燃え広がっていた。即座に燃え始めた指を切り落とし後退する。延焼は防げたものの重症である。


「動けますか?」


「大丈夫です・・・がアルス殿も私も無効化されたと見るべきでしょうな」


そう言ってランマルが指さした刀と落としたゆびはいまだに燃え続けていた。


「狐野郎捨て身だな」


そこから先は防戦一方だった。アルスもランマルさんも受ければ炎が襲ってくる、狐側もどうやらかなり消耗しているように見えるが、このままでは押し切られるのが先だろう。


「私が動きを止めます」


「何か作戦でもあるんですかランマルさん」


頷くとランマルさんが狐に向かっていく。作戦があるというのならば私たちは彼を信じるのみである。私が魔法を用意しアルスが護衛を行う。


「よくも、帝国を・・・ヒデキヨ様をもて遊んだな!」


「知りませんよ・・・あの坊ちゃんが自分でお兄さん恨んだだけですよぉ」


狐がいけしゃあしゃあと言い切る。


ランマルが予備の刀を左で構え突っ込む、狐も同様に突っ込んでくる。触れれば炎が回るだろうがランマルは気にせず狐の足を切り落とす、物理法則に従って狐が勢いのままに転がるがランマルの左手にも炎がまわる。


「今です、あちらに魔法を!」


そう言ってランマルが指さしたのは狐の倒れている方向とは違う明後日の方向であった。しかし、一度彼を信じると決めた以上信じるのみである。


「水魔法・水砲」




「どうして・・・分かった」


明後日の方向には水に貫かれた狐がいた。燃えていたはずのランマルも燃えておらず無事であった。


「幻術だったんですよあの狐、最初からね」


「狐の魔人・・・猫の魔人もですが、彼らは戦闘力がほとんどないために魔王軍の前線部隊に行かなかったし、脅威じゃないとしてかつての虐殺で熱心に探されなかったんです・・・なのにあの狐、ロレーヌさんたちが息子さんと戦っている間私の攻撃を受けきっていたんです。」


「それに狐の魔人は臆病な性格です。こんな自爆攻撃できるはずがない」


「なぜ、お前がそのことを知っている・・・」


息も絶え絶えに狐の少女が問いかける。戦闘力の無い狐の魔人の胸を一直線に魔法が貫いている、致命傷であろう。


「私だって無駄にここまで来たわけじゃない。帝国を離れてペル殿の護衛となったその日からいつかヒイラ殿と戦うかもしれないその時、貴様を殺すために私は牙を研いできた」


敵は打ちましたよ兄上・・・狐の策略で戦となり次男の兄トキマルはその犠牲となったのだ。ヒデキヨ様もこれで少しは溜飲が下がるだろうか、私は故郷の帝国へ思いを寄せるのだった。


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