八話 前哨戦
マグナ 学園都市
「おい・・・これって」
「明らかヤバいですよね」
僕とレイオット様というか学園2学年はもともと魔王ヒイラが拠点にしていたインペウロ邸の調査に来ていた。本来学園ではバーンズ家と関わらないつもりだったのだが、二学年の担当がレイオット様になったことにより今回のような調査に同道することになったのだ。
屋敷の中は何者かが暴れまわったのだろう大きく散乱していた。ヒイラがバーンズ家に来ていた頃何度か遊びに行ったこともあったのだが、姿を消した門番さんや学園の教師、生徒によって幻術にかけられていたのであろう、きれいな屋敷だと記憶していた。
屋敷の中心部、丁寧に隠蔽の幻術がかけられていた地下への階段を下るとそこには大きな試験管に
「レ・・・レミー?」
勇者一行の・・・勇者と戦士、魔法使いの死体が謎の液体につけられていたのだ。
「見つかっちゃいましたね・・・」
「ロイン?」
「厳密には違うんですけど・・・まぁそうです。お久しゅうございますレイオット様、レイン」
「どうしてロインさんがこんな・・・勇者様達に何を!?」
「貴方なら理解してくれると思いますよ」
そう言うとロイン?は語り始めた。
先代魔王の生きていたころ、人類には今の人類のほかに2種類の種族が人類に含まれていた。まずのちに魔族として差別されることになるクレント族。もう一種類魔獣の力を持った獣人と呼ばれる人間が共存関係を結んでいた。
しかし、獣人は人類よりも繁殖力も高く魔力も身体能力も高かったのだ。魔王討伐の後、人類は下層市民の息抜きにクレント族を、共通の敵として獣人を魔人としたのだ。その時幻術、人に紛れる能力を持たなかった犬やその他多くの種類の獣人は絶滅したが唯一狐と猫の獣人は幻術を持っていたため生き残ったのだ。
そののち今の魔王ヒイラがその能力に目を付けて幹部として任命し各地で自分たちが活動しやすいように暗躍させていたのだ。
「で、魔王様が世界を征服した暁には私たちの国を作ってもらうっていう約束だったのよ」
「だがロイン!」
「あぁそれと私ロインではなく妹のメインと申します。これまでの何度か姉に代わって仕事しておりました」
「それでメインさん・・・勇者様たちに何するつもりです」
「これはですね・・・本来の魔王様を早く呼び出してあげようかなぁって。今の魔王様はもともとの人格、ヒイラとかゆう人間の人格が邪魔しているようなので、人間の英雄、勇者が襲ってきた絶望を糧として捧げようかと・・・あなたもこちら側に如何です?」
「クレント族の国、あれも結局は魔王様の御心で作られる予定のもの。そもそも教国の許可もないただの紙切れ、でも今なら本物の書類に出来ますよ」
この二年間、公式的には差別はなくなったとされたが幾度となく差別的な扱いは受けてきた。きっとクレント族の国が本当にできたとしても今のままの国際状況なら今度敵とされるのは獣人ではなく私たちになってしまうだろう。
「この勇者の遺体は、魔王様が捨てたつもりの絶望の感情。陰で私たちが回収してコイツに投与していたんですよ。もはや彼らは絶望だけで出来た殺戮兵器。負の感情の操り人形!私たちに負け、ありませんよ」
「れ・・・レイン」
僕は剣を抜きレイオット様とメインさんに近付く。
「ウッ・・・これがあなたの選択なのですね・・・後悔しますよ?」
メインさんの胸から刀を引き抜く。これまで差別的扱いは受けてきたが、ペルさんやヒイラ様、レイオット様それにロインさんに学園でも幾人かクレント族など関係なく接してくれる人もいるのだ。
僕はそれに懸けたかった。
「レイン君・・・」
「まずは勇者様たちをどうにかしましょう。こんなのあんまりです。」
「そうですよねぇ・・・あんまりですよね」
「でもね・・・もう、遅いです。タマモさん」
そう言って誰かにメインさんが合図した瞬間試験管が開き、中から勇者様達が出てくる。
「戦士さんの両親さんタマモさんと一緒にいるようなので送ってあげるとしましょう」
「やらせるな!レイン君」
培養液から出たばかりの勇者様たちにすでに体を刺されて万全ではないメインさん・・・僕に出来る選択肢は
「共鳴魔法・命分」
命分は本来回復魔法を使えない僕が回復させるために覚えた怪我を二人に分割し軽くするといった魔法である。僕の狙いを読み取ったレイオット様が号令を出す。
「ありったけの腐食魔法を戦士様に・・・使える奴はぶち込め!」
死体であった戦士様の体が急速に腐敗する。そしてその腐敗はマインさんに分割される、そしてマインさんの胸の刺し傷も戦士様に分割される。
「やらせま・・せぇん」
最後のあがきとばかりに残った魔力で崩壊していく戦士様の体を引っ付けたマインさんはその場で腐食にのまれて消滅した。しかし、魔法陣に勇者様、戦士様は飲まれて消えてしまった。
「レミー・・・」
「<L"%$ML<LP*PL<?」
レミー様はすでに死んでおり、何を言っているか分からない
「レミー!」
「,>!+#$う」
「あ"!#>と/:」
「ありがとう」
そう言い残してレミー様はその場に崩れ落ちた。しゃべれるはずもない、本人の記憶なんて残っていないはずであった。僕はレミー様の杖を彼女の遺体に捧げその場を後にした。
レイオット様のすすり泣く声だけが地下にこだましていた。




