5話 時限
次に目を覚ました時目指していたカザスの町は遥か後方にあった。私に代わって馬車を引いている馬は魔物にやられてしまった商人の馬をもらい受けたらしい。
フォスからもう馬にならないよう忠告を受ける。人化の魔法は常時使っていても疲れないほど馴染んできているため大丈夫ではあるが生まれてからずっと四足歩行であったので常に二足歩行でいることは違和感なのだ。
カザスが魔族に掌握された可能性があるからにはこれ以降の町に近寄るのは危険である。ロレーヌ夫妻が商国の安全だけでも確かめたいとのことであったため、商国へは向かうがその他の町には立ち寄らないことを決め先に進む。
カザスから離れたからであろうか、普段より魔獣は多いものの大したことはなく、そこからは順調な旅路であった。
「しかし助かったよフォス」
「いえいえ、私だけじゃなんとも。そもそもペルさんが頑張って逃げてくれたおかげですし・・・それであの毒一体どこで食らったんです?」
ランマルがコルベットにロレーヌ夫妻を連れてくるため私の正体を伝えていたため夫妻は私の正体を知っているが、ファルコとフォスは私の正体は知っておらず人化の魔法が使える馬という認識なのだ。
ここまで生死を共にした仲間だ私の正体を告げても大丈夫であると信じ、私の正体を告げる。
「・・・ということは俺たち聖女様の馬に馬車引かせてたってことですか」
「そうなるっスね」
ファルコとフォスは驚いた顔で謝る。私としてはただの馬とそう変わるものではないのだ、好きに乗ってほしいところではある。
「飯出来たんで休憩にしましょう」
オキマルとロレーヌが料理をもって現れる、私はそもそも馬なので料理はしないし、ランマル、サドマルは丸焼きオンリーでファルコとフォスは最低限食べれる程度、この旅路では必然的に二人が飯当番になっていた。
「それで?毒は・・・私はどれくらいモツのかな?」
「詳しいことは専門じゃないので言えませんけど・・・馬にならずキチンと治療すれば数年は大丈夫だと思いますよ」
どうしても気になっていたことをフォスに聞く。すでに戦士の装備はロレーヌ夫妻に旅の報酬として渡すことになっているため、あとは聖女の杖だけである。教国に行くだけなら余裕すぎるほどである。
自分の器に注がれたシチューを見てヒイラも料理上手であったことを思い出す。帝国での旅はもっぱらヒイラが作ってくれていた。教国へ行ってヒイラも救う。そこまで私に時間が残されていることを祈るばかりである。
カザスの町
住民は皆いずれくる儀式のために一か所に固められており、他の場所には人っ子一人見かけなかった。皆がいなくなったカザスの町その中で最も大きな建物から話し声が漏れ出ていた。
「・・・それでペルは、馬は無事だったか?」
「は、死んではないと思いますが」
完全に掌握したカザスの町の旧庁舎で俺たちは今後の予定を確認していた。俺に魔王として復活する意思がないとバレればすぐにでも彼女らは俺の意思を消して魔王を復活させようとするだろう。見せかけの計画としてカザスの町の住民は再度魔王として復活するのに必要となる贄として捕えたのだ。
ほかにも狐人の少女、タマモは教国で教皇を捉えるための侵入を行っている。時間はあまり残されていないのだ。
「しかし、あの馬。個別で殺してはなりませぬか?」
効率的に考えるのなら脅威になりえるペルと聖女の杖は直ぐにでも破壊した方が良い。それくらいのことが分からないロインではないのだ。誤魔化し続けるのにも限度がある。すでに何度もペルを殺そうと持ち掛けてきているが私直々に手を下すと言って止めてあるのだ、いずれ我慢の限界が来てもおかしくない。
限界が来るのは私も同じだ。時折魔王の残滓とでも言うべきか体の中に残った魔王としての自我がヒイラとしての自我を侵食してくる。小さな連邦の一町とはいえ一つの町の住民の絶望の感情は私の復活を予測より早めてしまいそうなのだ。タマモの準備が整い次第私も教国へ出発する手筈になっている。
急いでくれ
とどくことは無いだろうペルへ懸けるしかないのだ。
「馬は分かりましたがその周辺は殺してもいいですよね?」
「あぁ・・・かまわない」
ロインがそう言って旧庁舎から退出する。一行の無事をただ祈るだけであった。




